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カシン・ロンに聞く、LABUBUの原点。「THE MONSTERS」の物語をたどる展覧会

  • 2026.6.19
Hearst Owned

LABUBU(ラブブ)を知っていても、その物語を知る人は意外と少ないのではないだろうか。

ギザギザの9本の歯と大きな目を持つLABUBU──妖精の一族として生まれ、いまや世界中で愛される存在となった。私自身、その世界はフィギュアやぬいぐるみから広がっていったものだと思っていた。実際、「THE MONSTERS」はアートトイブランドPOP MARTとの協業によって世界的な人気を獲得し、近年はラグジュアリーブランドとのコラボレーションも展開している。だがその原点は、香港生まれのアーティスト、カシン・ロン(Kasing Lung)が10年前に描いた3部作の絵本『THE MONSTERS TRILOGY』にある。

麻布台ヒルズギャラリーで7月5日まで開催されている「MONSTERS BY MONSTERS: NOW AND THEN」は、その物語が生まれてからの10年を振り返る展覧会だ。上海、台北、香港、パリを巡回したグローバルツアーが東京に上陸した本展では、原画や油彩画、立体作品、スケッチ、アートトイ、没入型映像などを通じて、ひとつの空想世界がどのように広がり続けてきたのかをたどることができる。

会場を歩いていて印象的なのは、本展が人気キャラクターの展示にとどまっていないことだ。『THE MONSTERS TRILOGY』の第1章を再構成した没入型映像シアターや、創作ノートのようなスケッチ群、近年力を入れている油彩作品などから見えてくるのは、彼が一貫して物語を描く人であり続けているということ。

「絵画&立体作品ゾーン」では、絵本やトイだけではないもうひとつの「THE MONSTERS」の世界が広がる。 Hearst Owned
スケッチブックから抜け出してきたような「THE MONSTERS」を描いた壁面のある「創作の軌跡とスケッチゾーン」にて、カシン・ロン。このゾーンでは、創作の源泉を示すスケッチや資料とともに、「THE MONSTERS」が歩んだ10年の軌跡をたどることができる。 Hearst Owned
「体験エリア」で妖精たちの小屋に並ぶ無数のLABUBU。「THE MONSTERS」の住処に迷い込んだような空間が広がる。絵本から生まれた「THE MONSTERS」は、POP MARTとの協働によってアートトイとしても展開され、世界中で愛される存在へと成長した。 Hearst Owned
麻布台ヒルズをジャックした「THE MONSTERS」。10周年を記念した特別仕様のKINGMONのほか、LABUBUやTYCOCO、PATOたちが街角やウィンドウを彩る。 Hearst Owned

世界的なキャラクターへと成長したLABUBU。その背後には、北欧の民話や童話に影響を受けながら育まれた、もうひとつの豊かな世界が存在する。実際、今回のインタビューでもロンは繰り返し「物語」について語った。トイや絵画といった表現の違いを超えて、彼が大切にしているのは「THE MONSTERS」の世界を語り続けることなのだ。

──10周年おめでとうございます。幼少期にオランダへ移住し、そこでヨーロッパの民話や童話に魅了された経験が、LABUBUをはじめとするキャラクターたちの源泉になっているとうかがいました。特に印象に残っている物語や、キャラクター創造に大きな影響を与えたエピソードはありますか?

カシン・ロン(KL):私は7歳のときにオランダへ移りました。学校の先生がオランダ語を教えてくれて、たくさんの本を読むよう勧めてくれたんです。特に北欧の童話を数多く読みました。その経験は間違いなく今の創作に影響を与えています。

──「THE MONSTERS」シリーズは国境や文化を超え、世界的なカルチャーアイコンへと成長しました。10年を振り返ってみて、今どのような思いがありますか。

KL:10年前はこんなにも多くの人に愛されることになるとは思っていなかったです。想像もしていませんでした。そもそも「THE MONSTERS」の世界をつくり始めたのは、私がずっとやりたいと思っていたことを形にしたかったからなんです。

──グローバルツアーがついに東京へやってきましたが、カシンさんにとって東京はどのような街ですか?

KL:東京は、さまざまなアートや文化、伝統が共存し、独自のカルチャーが息づく街です。これまでにも何度か東京で展覧会を開催してきましたが、いつも素晴らしい経験でした。だから今回の「MONSTERS BY MONSTERS」展も本当に楽しみにしていたんです。今回の展覧会では、本展のために描き下ろした新作の絵画も展示しています。東京という街から受けた印象や、私自身が感じてきたこの街の魅力を作品の中に込めました。

鏡の反射によって「THE MONSTERS」のコレクションが無限に増殖する。その世界に迷い込んだような感覚を味わえる「ミラールーム」。 Hearst Owned
「絵本エリア」の展示の一部。『THE MONSTERS TRILOGY』の第2章「Pato and the Girl」を通じて、「THE MONSTERS」の世界に流れる愛の物語に触れることができる。 Hearst Owned
モンスターたちの原点となった物語を、没入感あふれる映像空間で体験できるゾーンも。 Hearst Owned

──本展では、「The Story of Puca」をもとにした没入型アニメーションが初公開されています。この展示で特に注目してほしい点や、来場者にどのような体験をしてほしいと考えていますか。

KL:「The Story of Puca」は絵本『THE MONSTERS TRILOGY』の第1章で、家族について描いた物語です。今回初めてアニメーションという形で展示することになりました。その目的は、来場者に「THE MONSTERS」の世界そのものを見てもらうことです。多くのファンはトイをとおしてと彼らと出会いました。でも、私が伝えたいのは、この世界にはトイ以外にもさまざまな表現があって、その中心にあるのは物語だということ。それを来場者に届けたいと思っています。

──近年はアートトイだけでなく、油彩画を中心とした絵画制作にも力を入れています。立体作品と平面作品を行き来するなかで、創作に向き合う姿勢や感覚に違いはありますか?

KL:トイのデザインと絵画制作はまったく異なる体験ですし、必要とされる考え方も違います。トイのデザインはデザインチームとの協働作業です。意見を出し合いながら調整を重ねていく、いわばチームワークですね。一方で絵画はとても個人的な仕事です。自分の考えや感情をそのまま絵にすることができるし、自分の思うままに表現できます。

──本展の「創作の軌跡とスケッチゾーン」では、創作の源泉やアイデアのプロセスも紹介されています。行き詰まったときや新しいキャラクターを考えるときに、大切にしている習慣を教えてください。

KL:実は、創作に行き詰まることはほとんどないんです(笑)。アイデアやインスピレーションは、日常生活や音楽、映画、友人たちとの時間から生まれてきます。毎日のようにスケッチを描くのですが、それは日記をつけるような感覚で、長年の習慣になっています。新しいデザインに取り組むときには、過去のアイデアやスケッチを見返すことも多いですね。それがとても役立っています。

──「THE MONSTERS」10周年という大きな節目を迎えました。次の10年に向けて挑戦したいことや、新たに描きたい物語はありますか?

KL:これからは、より多くの時間を絵画制作に使いたいと思っています。そして何より絵本ですね。「THE MONSTERS」の世界について、もっとたくさんの物語を語っていきたいです。


会期:〜2026年7⽉5⽇
会場:⿇布台ヒルズギャラリー
住所:⿇布台ヒルズ ガーデンプラザ A MB 階(東京都港区⻁ノ⾨ 5-8-1)

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