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「お返し」は”対等な関係”で生じやすいと判明

  • 2026.6.14
お返しは対等な関係で生じやすい / Credit:Canva

友人にコーヒーをおごってもらったら、次は自分がおごるべきだと感じる人は多いでしょう。

しかし、その相手が上司や先生、あるいは年上の家族だった場合も、同じように「次にお返ししよう」と考えるのでしょうか。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、人々が「親切にされた側が次にお返しする」と考えるのは、主に対等な関係だったと報告しました。

この研究は2026年6月2日付で、学術誌『Open Mind: Discoveries in Cognitive Science』に掲載されました。

目次

  • 親切に対する「お返し」は、対等な関係で生じやすい
  • 対等な関係では「交代」、上下差のある関係では「継続」が期待される

親切に対する「お返し」は、対等な関係で生じやすい

私たちは一般に、親切にされたら相手に返すべきだと考えます。

このような「互恵性」は、心理学や行動経済学において、協力関係を維持する基本的な仕組みと考えられてきました。

しかし、実際には親切が必ずしも交代制になるとは限りません。

たとえば上司が部下に毎回コーヒーを買ってくれているなら、次は部下が上司におごると予想するより、「また上司が買うのだろう」と考える人も多いはずです。

こうした発想は、文化人類学や社会学の分野では以前から指摘されてきました。

そこで研究チームは、親切を受けた人が次にお返しすると考えられるのか、それとも前回親切にした人が再び同じように親切をすると考えられるのか、人間関係を含めて人々の認識を調べました。

研究は6つのオンライン行動実験で構成され、対象は米国の成人599人です。

前半の4つの実験では、参加者が短い物語を読みました。

物語には、会議で一方がコーヒーを買う、食事を準備して片づける、相手の好みに合わせるといった日常的な場面が登場します。

参加者はその後、「次に同じ場面が起きたら、親切を受けた側がお返しすると思うか」「前回親切にした人が再び同じ行動をすると考えるか」を予測しました。

さらに後半の2つの実験では、参加者自身が報酬つきのゲームに参加し、相手との関係が対等か、上下差があるかを踏まえて実際に行動を選びました。

その結果、対等な関係では「次は相手がお返しする」と予測されやすく、上下差や役割差のある関係では「前回親切にした人が、次も同じ役割を担う」と予測されやすいことが明らかになりました。

では、具体的にどのような違いが見られたのでしょうか。より詳しい結果を見ていきましょう。

対等な関係では「交代」、上下差のある関係では「継続」が期待される

研究チームはまず、2人の関係が「対等な関係」か、「力・地位・影響力に差がある関係」かを示すだけで、参加者の予測が変わるかを調べました。

すると、対等な関係では、参加者は親切を受けた側が次にお返しすると予測しました。

一方、力・地位・影響力に差がある関係では、前回親切にした同じ人物が、次も同じように親切にすると予測しました。

つまり、親切な行為そのものは同じでも、その2人の関係性によって、「次に自然に起きること」の予測が変わったのです。

さらに研究チームは、上下差のある関係で、親切をした人が上位者なのか下位者なのかにも注目しました。

その結果、上司が部下に親切をするような場合でも、部下が上司に親切をするような場合でも、参加者は「前回親切にした人が次も親切にする」と予測しました。

つまり、「地位の高い人が与え続ける」という単純な話ではありません。

一度できた親切の流れそのものが、その関係の中の役割として認識されていたのです。

また、「同僚」「友人」「いとこ」のような対等な関係や、「助言者と助言を受ける人」「叔父と甥」のような具体的な関係名を使った実験でも、結果のパターンは変わりませんでした。

さらに、参加者自身が報酬つきゲームに参加し、「親切にする側」と「親切を受けた側」のどちらの役割を選ぶかを決める実験でも、この傾向は再現されました。

対等な相手とのやり取りでは、参加者は次に役割を交代しようとしました。

一方、相手との関係に上下差があると説明された場合には、前回と同じ役割が続くと見なし、それに合わせる選択が増えました。

参加者の判断は損得だけでは説明しにくく、相手との関係性も行動選択に影響していたことがうかがえます。

もちろん、この研究は米国成人を対象としたオンライン実験であり、実際の長期的な人間関係を直接観察したものではありません。

それでも、「親切にされたら返す」という一見当たり前のルールが、特に対等な関係で働きやすい可能性を示した点は興味深いでしょう。

「お返し」は、親切そのものから自動的に生まれるのではなく、相手との関係がどれだけ対等に見えているかによって変わるのかもしれません。

参考文献

Would you return a favor? Scientists say it depends on the relationship
https://www.eurekalert.org/news-releases/1131888

元論文

Expectations of Reciprocal Generosity Are Specific to Equal Relationships
https://doi.org/10.1162/OPMI.a.357

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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