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20年前に突然いなくなった親友の姿と重なって…民生委員と若い母親との出会いが伝える、無縁社会での孤立した子育ての実情と課題【書評】

  • 2026.6.6

【漫画】本編を読む

家庭が抱える問題にはそれぞれの事情があり、安易に他人が踏み込むべきではない。そしてもし踏み込んだとしても良い方向に状況が変わるとは限らない。『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』(きむらかずよ/KADOKAWA)は、児童福祉を担当する民生委員の女性とひとりのシングルマザーの出会いを通して、社会的に孤立した母子の現実を描いたセミフィクションだ。

主人公は民生委員のカヨコ。ある日、カヨコが担当エリアの「赤ちゃん訪問」をしていると、訪問した家の18歳という若い母親の顔を見て20年前に親友だったナルミの記憶が蘇る。当時、カヨコはクラスメイトとの付き合いがあまりうまくいっておらず、ナルミも母親が夜の仕事をしているということでクラスで浮いた存在だったこともあり、いつしかふたりは親友といえる間柄になっていた。しかし小学5年生のとき、ナルミは母親と一緒に突然いなくなってしまい、それっきりとなったのだ。

訪問した母親はアカネといい、片付けられていない部屋の様子から明らかに子育てはうまくいっていない。そしてほとんど帰ってこないという夫はもちろん、誰にも子育てを手伝ってもらっていないと言う。雰囲気や話し方がナルミとよく似ていたためにアカネを放っておけなくなったカヨコは、それから彼女のために手を尽くすのだが――。

子ども心に夜逃げをしたナルミの家庭に何もできなかったという後悔をずっと持ち続けてきたカヨコは、同じく機能不全家庭のアカネを救おうとする。しかし民生委員といっても強制的な動きはできないし、アカネにとって何が正しくて何が間違っているのかもわからず激しく苦悩するのである。

地域や行政の施策など、頼れるものは必ずある。カヨコの「救いたい」という姿を通して、今まさに子育てをひとりで抱え込んでいる人に対して、そんな強いメッセージが本作に込められている。

文=nobuo

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