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「最近気味が悪いの」彼女を待ち伏せしていた隣人が職場で「お嬢さんに会わせて」と言ってきたワケ

  • 2026.6.4

人助けのつもりだった夕食

会社員の頃、寮で恋人と同棲していた時期の話だ。

隣家には90代の爺さんが一人で住んでいて、地元では知らぬ者がいないほどの有力者として、勤め先の会社も古くから世話になっている人だった。

爺さんは一人暮らしの寂しさからか、頻繁に私たちを夕食に呼んだ。

戦時中の武勇伝、勲章を授かった日の様子、若かりし頃の恋人の話。

同じ話を何度も繰り返したが、毎回新鮮そうに語る顔を見ていると、こちらまで何度目かを忘れた。

「これも人助けだ」と自分に言い聞かせ、根気よく相槌を打ち続けた。

会社の上司も「あの爺さんを大事にしておけば困ったときに助けてくれる」と言うので、夕食招待は半ば仕事のうちだとも思っていた。彼女も最初の数ヶ月は笑顔で付き合ってくれていた。

ところが3ヶ月ほど経った夜、帰宅した彼女が玄関で立ち止まった。手にした鞄を下ろさず、こちらを見上げて言った。

「最近気味が悪いの」

「朝も夜もお爺さんに会う」

囲いの隙間から覗いていた90代

聞けば、爺さんは自宅の囲いからこちらを覗き、彼女が出てくるのを毎日待ち伏せしていたという。

出勤の朝も、夕方の買い物も、ゴミ出しの一瞬さえも、必ず視線があった。

気づいてしまった日からは、玄関のドアノブを握る手まで震えるようになったと彼女は言った。

確かに思い返せば、ゴミを捨てに出ただけの朝、ふと顔を上げると囲いの向こうに白い髪が見える日が増えていた。

当時はただ庭仕事をしているのだろうと流していた。あれは全て待ち伏せだったのだ。

翌週、爺さんはついに会社のロビーにまで現れた。

受付に名指しで頼み込む声が、廊下にまで響いていたという。

「お嬢さんに会わせて」

有力者の名前を出されれば会社側も強く追い返せず、総務から内線で呼び出された彼女は、震えながら下を向くしかなかった。

同僚たちが何事かと振り返るなか、爺さんは笑顔のまま手を振っていたという。

「お嬢さん、今日も家の前で待ってるから」

笑顔のままそう告げる姿が、どうしても怖かった。

彼女の出勤時刻と帰宅時刻だけは正確に把握している。

同じ昔話を毎回新鮮に語る老人が、彼女の動線だけは一度も間違えない。

その矛盾に気づいた瞬間、背筋に冷たいものが走った。

結局、寮を出るしか方法はなかった。

引越し当日、荷物を運び出す軽トラックの後ろにも、囲いの隙間から動かない視線が刺さり続けていた。

あの目線の温度を、十数年経った今でも忘れられない。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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