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大黒パーキング/絶望ライン工 独身獄中記 第70回

  • 2026.5.27

『絶望ライン工 独身獄中記』を読む

最近車を購入した。

MAZDAロードスターという、2人乗りの小さなスポーツカーである。

天井部分は開閉可能な幌形状で、天気が良い日など全開にして走るのが実に気持ちが良い。

2人乗りを謳ってはいるが実情は少し異なり、助手席にはグローブボックスもドリンクホルダーさえなく、とにかく荷物を収納するスペースがない。

釣り道具を小さなトランクルームに入れ、助手席に手持ちのリュックなど置いたらそれでおしまい。

この車の乗員は1名である。

結婚し家庭を持つことを最初から放棄しているようなこの車を大変気に入っており、仕事終わりや休日に用もないのにやたら乗りたがる。

行先はイオンやオートバックス、釣具店、海釣り施設、そして首都高。

夜の首都高はギラギラ光るビルの灯りがものすごいスピードで後ろに流れていく。

一生田圃と磐梯山を見せられる会津縦貫道と違い、男女間の性的衝動を誘発する傾向が強いと感じる。

独りで湾岸線を走りながら「ああ、男女間の性的衝動を誘発する傾向が強いな」と考えに耽る独身男性は根っからのスピード狂だ。

狂おしい程に道路交通法を遵守し、法定速度で走るのが俺の人生だった。

だからお前と俺は兄弟だった。

湾岸線を南に走れば大黒パーキングエリアがあって、車を停めて休憩したり飯を食ったりができる。

本牧まで釣りに行く時など立ち寄る事になるわけだが、この場所はどうも他のPAと様相が違うのだ。

まず広大な駐車場はいつもほぼ満車である。

じゃあ運転手は車を離れて休憩してるのかと言えばそうでもない。

愛車の隣に立ってボーっとしたり、他の車を眺めたりしている。

車種も人種も実に多種多様で、ヤンキーが乗るようなのから高級外車、スポーツカーやクラシックカー、ヒップホップのMVで見るやつなど。

その隣でボーっと立ってるヤンキー、成金、車好きおじさん。

騒いでいる外国人観光客も多いが、どうやらツアーで来ているらしい。

大黒パーキングは日本の主要な観光スポットなのだ、只の駐車場なのに。

此処では派手なクルマが人気であるから、バリバリ音を立ててぴかぴか光るランボルギーニなどに人だかりができている。

さながら辺り一帯パチンコ店のようだ。

遊戯台の隣には誇らしげにオーナーと思われる人物が立つ激アツ展開。

さて、我がロードスターはどれだけ人だかりができているかなと振り返る。

彼を眺める者はなく、寂しそうに此方を見る前照灯と目が合った。

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