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たった“3か月”で再放送のNHKドラマ「凄まじい高評価」「うれしい」配信サイトでも盛り上がる“NHK特別ドラマ”

  • 2026.6.16

3月に放送されたNHK特別ドラマ『片想い』が6月21日(日)、早くも再放送される。そのスパンから、いかに本作の反響が高いか実感できるだろう。SNS上でも「U-NEXTでも凄まじい高評価」「再放送、うれしい」と話題の本作において、岡田惠和脚本が描くのは、報われなさを煽る“片想い”の行方ではなく、誰かを大切に思う気持ちが日々を立て直していく過程だ。盛岡の商店街、窓越しに育った距離感、そして芦田愛菜と岡山天音の“瑞々しいのに生々しい”演技。見返したくなるのは、本作によって心がほどける瞬間が、確かにあるからなのだと思う。

※以下本文には放送内容が含まれます。

勝ち負けの文脈を置いてきた脚本

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特集ドラマ『片想い』前編より(C)NHK

『片想い』は、恋愛ドラマにありがちな“勝ち負け”の文脈を、最初からどこかに置いてきている。優衣(芦田愛菜)の片想いは、燃え上がる情熱というよりも、暮らしのなかで長く育った憧れだ。
隣に住むケンケン(岡山天音)は、窓から声をかければ返事がある距離にいる。近いのに、手が届かない。届かないのに、生活は隣り合っている。その矛盾が、片想いを“苦しみ”の物語にしそうなのに、岡田はあえて違う方向へ舵を切る。

この脚本が巧いのは、片想いを“報われない恋”として悲劇化していないところだ。むしろ片想いを、人生の再起動の燃料として扱う。
優衣は仕事で悩みを抱え込み、ある日逃げるように職場を出て、気づけば東京のケンケンのもとへ行ってしまう。ここで描かれるのは、恋の暴走というよりも、心が折れた人間の“避難”だ。ケンケンは不用意に事情を詮索しない。元いた友人たちを帰し、余計な台詞を並べず、ただ話を聞く。その静けさが、優衣を救う。

片想いの喜びとは、相手に選ばれることだけではない。自分が自分に戻れる場所を、誰かの存在が作ってくれること。岡田の筆致は、その“戻り道”を丁寧に照らす。だから見ている側も、恋愛ドラマを見ているのに、いつの間にか救われている。

窓越しの距離が形作る関係性

この物語は、土地の距離感がそのまま感情の距離感として機能している。盛岡の商店街。優衣は南部鉄器の店で働く母・由香(羽田美智子)と二人暮らし。ケンケンは豆腐屋を営む父・隆(矢柴俊博)と祖母・千寿子(白石加代子)と暮らしている。
大げさな“運命”より先に、生活のリズムがある。朝の仕込み、配達、店先のやりとり。恋はその隙間に生まれる。

優衣が会社を辞め、豆腐屋で働くことになる展開も、ただの“好きな人のそば”という甘さで終わらないのがいい。好きな人の生活に入り込むのは、幸福であると同時に、現実を引き受けることでもある。
早朝の仕事が苦にならないほど嬉しい……その高揚が描かれる一方で、同じ場所にいるからこそ見えてしまう側面もある。優衣の願いは“この幸せがずっと続いてほしい”だけれど、日々の暮らしは甘い願いだけでは続けられない。

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特集ドラマ『片想い』後編より(C)NHK

そしてケンケンの帰郷が効いてくる。東京から戻り、こっちで豆腐屋をやると言う。優衣は天にも昇る気持ちになるものの、視聴者は同時に察する。ケンケンが帰ってきた理由、その背景について。
脚本は、その“理由”を過剰に説明しない。だからこそ、窓越しの距離が生む微妙な沈黙が生きる。恋愛の駆け引きではない、生活の濃淡で物語が進んでいく。

もう一度帰ってきたくなる温度

早いスパンでの再放送というのは、やはり作品が広い視聴者層に刺さった証拠だと思う。もちろん要因はさまざまだが、確実にその一つに、俳優たちの存在がある。

芦田愛菜の優衣は、ただ純粋で可愛いヒロインではない。職場で抱え込み、逃げてしまう脆さがある。その脆さが、恥ずかしさではなく切実さとして映るのは、芦田自身が“弱っている人の目”をちゃんと持っているからではないか。
回復していく過程も同じで、みるみる劇的に立ち直るのではなく、少しずつ体温が戻っていく。そのグラデーションが丁寧だ。

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特集ドラマ『片想い』後編より(C)NHK

岡山天音のケンケンはさらに難しい。良すぎるくらいイイ奴で、優衣に恋されていることに気づかない……この手のキャラは、記号的な鈍感さで成立させると印象が薄くなってしまう。
けれど岡山が演じるケンケンの背後には、挫折や葛藤の影が滲む。優衣の存在を大事にしながらも、どこか割り切れない表情がある。その曖昧な機微、二面性の狭間を縫うやり方が、岡田惠和の世界に生々しさを足している。

東京の場面でケンケンの同僚・涼花(武田玲奈)の存在が差し込まれるのも、修羅場に振らないからこそ効く。優衣の胸に生まれる小さなざわめき、ケンケンの気遣いの不器用さ。恋愛ドラマが大袈裟にアピールしがちな感情を、この作品は小声で扱う。小声だからこそ、観ている側は耳を澄ませる。
思わず見返したくなるのは、あの小声をもう一度聞き取りたくなるからだ。

片想いの物語なのに、視聴後に残るのは“失恋の痛み”ではなく、“好きでいることの静かな幸福”。『片想い』は、恋のゴールを描くより先に、恋が人をどう生かすかを描いた。だから、もう一度戻りたくなる温度がある。


NHK特集ドラマ『片想い』再放送 6月21日(日)前編 午後4時20分~ 後編 午後5時5分~
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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