1. トップ
  2. 「数日休めば治る」孫からもらった風邪を放置→その後、突然の呼吸困難で救急搬送…60代男性に告げられた“恐ろしい診断結果”

「数日休めば治る」孫からもらった風邪を放置→その後、突然の呼吸困難で救急搬送…60代男性に告げられた“恐ろしい診断結果”

  • 2026.5.12
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。日々、呼吸器外科手術を始め、みなさまの全身と向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。

今回ご紹介するのは、60代男性・Aさん(仮名)の実例です。

「可愛い孫が遊びに来てから数日後、少し咳が出始めた。孫の鼻風邪がうつっただけだろう、数日休めば治る」

Aさんは、さほど気にしていませんでした。しかし翌日には突然息ができなくなり、救急搬送されて「重症肺炎」と診断されました。ICUで人工呼吸器につながれ、徐々に改善して何とか退院することができましたが、在宅酸素ボンベが手放せなくなってしまったのです。

「あの時すぐ病院に行っていれば、また孫と公園を走れたのだろうか」と後悔しても、失われた健康な日常はすぐには戻りません。

「大量のウイルス」と「持病の悪化」というリスク

なぜ「ただの子供の風邪」という油断が命取りになるのでしょうか。

RSウイルスは、健康な大人が感染しても通常は喉の痛みや鼻水などの軽症で済みます。しかし、免疫力が低下している高齢者や、基礎疾患(持病)がある方が至近距離で大量のウイルスを浴びた場合、深刻な呼吸不全を招くリスクがあるのです

【大量のウイルスが肺を壊すフロー】

  • 大量曝露と下気道への侵入(初期):孫の抱っこや、ウイルスがついた「おもちゃ・手すり」などを介した接触・飛沫により、大人が一度に大量のRSウイルスを吸い込み、肺の奥深くで激しい炎症が起きます。
  • 基礎疾患の連鎖的悪化(進行期):ウイルスの増殖ストレスにより、心臓病やCOPDなどの持病が悪化します。
  • 特効薬がない状況での呼吸不全進行(末期):RSウイルスには特効薬がありません。つまり対症療法をしながら、免疫としては自力で戦うしかなく、ダメージを受けた肺は急速に呼吸不全に陥ります。

ご家族からうつった風邪を「家で寝ていれば治る」と自己判断してしまうのは、無理もありません。

しかし、RSウイルスは高齢者や持病がある方にとって、インフルエンザと同等以上に警戒が必要なウイルスです。「熱が高くないから大丈夫」と過信せず、体調の変化に敏感になることが大切です。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

治療のタイミングを逃さないために、以下のサインが見られたら早めに医療機関へ相談してください。

1. 孫と接触してから「4~6日後」に咳や鼻水が始まる

RSウイルスの典型的な潜伏期間です。数日遅れて咳や鼻水が始まったら、単なる疲れではない可能性があります。

2. ゼーゼー、ヒューヒューという苦しい呼吸(喘鳴)がある

単なる咳ではなく、気管支が狭くなって空気が通りにくくなっている下気道炎の危険なサインです。

  • 上気道:鼻、喉
  • 下気道:気管、気管支、肺

3. 少し動いただけで激しく息切れする、顔色が悪い

肺に炎症が広がり、酸素が取り込めなくなっているサインです。数時間単位で急激に悪化するおそれもあるため要注意です。

安心してご家族と過ごすために

可愛いお孫さんやご家族との時間を諦める必要はありません。大切なのは、リスクを知って正しく備えることです。

現在は、「60歳以上」および「50歳以上で特定の基礎疾患(喘息、糖尿病、慢性心疾患など)がある方」を対象としたRSウイルスワクチンという選択肢もあります。 任意接種(全額自己負担)となりますが、重症化を未然に防ぐための有効な手段の一つです。

こまめな手洗いやうがいに加え、不安がある方はぜひ一度、かかりつけ医に相談してみてください。正しい知識を持って対策することが、大切な家族との穏やかな日常を守ることに繋がります。


※2026年5月現在の情報に基づき執筆しています。
※体調に異変を感じた際は、速やかに医療機関を受診してください。

監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる