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老人ホームで…入居者家族「これ食べさせてほしい」→介護士が思わず冷や汗をかいた“持参食”とは…

  • 2026.4.24
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現場経験14年、介護福祉士ワーママのけいこです。

数年前、有料老人ホームで働いていた頃。ある女性が入居されました。

若くして病に倒れ、歩行はできず車椅子での生活。食事は持ちやすいスプーンで、柔らかいものをゆっくり時間をかけて。短い言葉や表情、ジェスチャーから気持ちをくみ取り、少しずつ信頼関係を築いていきました。

施設生活にも慣れ、笑顔が増えてきたある日。ご家族から、衝撃的なお願いがありました。

■ 家族が持ってきた「これ」

「これを食べさせてあげてほしい」面会に来たご家族が差し出したのは、スーパーの餃子パックでした。

家族の愛情が伝わってきます。
でも、介護現場では話がそう簡単ではありません。女性は病気の影響で嚙む力が弱くなり、固形物は誤嚥(ごえん=食べ物が気管に入ること)の危険がありました。

普段は柔らかいお食事のみ。女性は餃子を見た瞬間、目を輝かせてうなずきました。

その笑顔を見たら、「危ないから控えてほしい」と言うのは心苦しい気持ちでした。もしかしたら、思い出の懐かしい味だったのかもしれません。家族が持ってきてくれた喜びが、心を満たしたのかもしれません。

しかしながら、嚥下機能が低下している方にとって、食材を細かく刻むことは口の中でばらけてまとまりにくくなるため、かえって誤嚥のリスクを高める場合があります。

リスクを説明した上でその場ではお断りしました。

■増える持参食と現場の不安

しかし、この一件をきっかけに、「これならどうか?」とご家族の持参物はどんどん増えていきました。お菓子、ケーキなど…。どれも刻んだり潰したりしないと食べられないものばかりです。

入居から時間が経ち、女性の状態は少しずつ変化していました。話す言葉や動作が減り、表情や目の動きで思いを汲み取る日々。
身体が変化する中、持参されたお食事のリスクは高まる一方でした。

全てお断りしたものの、ご家族の悲しそうな顔を見るとこちらまで心苦しくなりました。

家族の想いを考えてみました。家族は女性の変化に気づいていたのか、それとも認めたくなかったのか。

分かることはありませんが、きっと「元気になってほしい」「これから食べられるようになるはず」という願いがあったのでしょう。

その気持ちは痛いほどわかります。願わずにはいられない、家族の愛情が。

■ 本人の涙が教えてくれたこと

ある日、女性にそっと聞いてみました。
「いろいろな食べ物を持ってきてくださって、〇〇さん想いの優しいご家族様ですね」

すると、女性はふっと微笑み、涙を流されました。
その一瞬で女性が、喜び、戸惑い、悲しみ、様々な思いを抱えていることが分かりました。

女性と家族が過ごす姿を見ていると、家族それぞれに歴史があり、愛情があり、人生のステージごとの葛藤がある。介護士として、私に今できることは何だろう。繰り返し何度も考えさせられることになりました。

■ 善意と安全の間で揺れる現場

このエピソードは、「家族の無茶な要求」と片付けてしまうことはできない出来事でした。

家族の「こうしてあげたい」という純粋な愛。介護現場の「安全第一」という命を守る責任。このふたつは必ずしも一致しないからです。

介護は本人だけではなく、家族を含めた多角的な取り組みです。本人の願いを尊重し、安全と喜びのバランスを探す。その板挟みの葛藤が、介護現場のリアルです。
それでも、関わるすべての人にとって納得できる形を探し続けることが、介護に向き合うということだと思っています。


ライター:けいこ
介護現場での実務経験とワーママとしての視点を活かし、暮らしやケアに関する記事を執筆。読者に寄り添い、分かりやすく安心して読める文章を心がけている。