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「予約したのに乗れない?」「客の責任なのか!?」窓口で客が激怒。元駅員が明かす、ネット予約の“思わぬ落とし穴”

  • 2026.4.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、元鉄道駅員の川里です。鉄道各社が提供するインターネット予約サービスは、今や旅のスタンダードとなりました。しかし、その便利さの裏側には、利用者には見えにくい「複雑な仕組み」が潜んでいます。

今回は、私が駅員時代に実際に立ち会った、あるお客様の苦い経験談をご紹介します。

進化するネット予約とそのメリット・デメリット

現在、「えきねっと」「エクスプレス予約」「e5489」といった、JR各社が運営する予約サービスが広く普及しています。これらのサービスの大きな魅力は、単に窓口と同じきっぷが買えるだけではありません。

  • 早期予約による割引特典(3日前や7日前までの予約で安くなる)
  • チケットレス乗車(スマホ一つで完結)
  • 場所を選ばない利便性(駅に行かず、自宅や移動中に変更・払い戻しが可能)

特に「窓口の長い列に並ばなくていい」という点は、最大のメリットといえるでしょう。

一方で、IDやパスワードの失念、あるいはスマートフォンの充電切れで予約番号がわからなくなるといった、デジタルならではのトラブルも後を絶ちません。

旅慣れたお客様を襲った「4桁の予約番号」の違和感

ある日のこと、私の勤める窓口に一人の男性客が訪れました。遠方から飛行機を乗り継いで来られたその方は、いかにも旅慣れた雰囲気で、帰りの列車の予約もスマートフォンのネットサービスで済ませているようでした。

当時、私の勤務先ではまだチケットレス乗車が導入されておらず、ネット予約分はすべて窓口か指定席券売機で「きっぷ」として発券する必要がありました。お客様は慣れた手つきで、予約番号を告げられました。

「番号は1483です」

私が駅員として窓口に立っていた当時のシステムでは、私の会社で必要な予約番号は『5桁』でした。その一瞬で、お客様が置かれている厳しい状況を理解してしまったのです。

私はお客様を落胆させてしまうことを承知で、慎重にこう切り出しました。

「恐れ入ります。そちらは他社のネット予約サービスでございますね……。残念ながら、当駅の端末ではそのご予約のきっぷを発券することができません」

「予約できるのに受け取れない」という矛盾

お客様は言葉を失い、次の瞬間には驚愕の表情を浮かべられました。

「え、嘘でしょ!? 予約はできているのに、ここで発券できないの?払い戻すのに手数料がかかるっていうの? 」

無理もありません。このトラブルの根源は、鉄道会社間の「予約と発券のネットワークの壁」にあります。

相互直通運転をしている列車であれば、A社の予約サイトでB社の区間の予約は可能です。しかし、実際の発券手続きは「その予約サイトを運営している会社の駅」でしか行えないという制約があるのです。

ネット予約の「どこでも予約できる」という手軽さが、皮肉にも「発券場所の制約」という盲点を見えにくくさせていました。

駅の券売機で買い間違えたきっぷなら、その場で全額返金できるケースもあります。

しかし、システムが繋がっていない他社の予約データは、私たちが操作することはできません。私にできる案内は、「お客様ご自身で手数料を支払って払い戻し操作を行い、再度きっぷを買い直していただく」という、あまりに心苦しい提案だけでした。

納得のいかない結末と、私たちが学ぶべきこと

お客様の怒りは収まりませんでした。

「チケットレスに対応していないのも、きっぷの発券ができないのも、すべて鉄道会社の都合じゃないか。なのに客に責任を押し付けて手数料を取るのか?」

「予約ができるから予約したんだ。列車に乗れないのなら予約させないのが常識だ」

メモを取りながらご意見を伺い、上司にも相談しましたが、規定を覆す救済策は見つかりませんでした。結局、長時間にわたる話し合いの末、お客様は「もういい! 高速バスで帰る!」と言い残し、背を向けて去っていかれました。

ネット予約は非常に便利なツールですが、会社ごとにルールや管轄が異なるのが現状です。

特に複数の鉄道会社をまたぐ旅行の際は、「そのきっぷはどこで受け取れるのか」「注意事項に何が書かれているか」を事前に確認することが、トラブル回避の鉄則です。

せっかくの旅行を台無しにしないためにも、予約確定のボタンを押す前に、ほんの数十秒だけ「受け取り場所」の項目に目を通すことを強くおすすめします。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。