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しっかり炒めたなめこはポルチーニのような香り高さに!? 焦げを旨みに変える“プロの技法”で作った「なめこペペロンチーノ」が絶品すぎた【書評】

  • 2026.4.11
圧倒的に旨い野菜のごちそう George ジョージ吉田/主婦の友社
圧倒的に旨い野菜のごちそう George ジョージ吉田/主婦の友社

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野菜は添え物、あるいは栄養のために仕方なく食べるもの――。そんな消極的な思い込みを鮮やかに覆してくれるレシピ本が、『圧倒的に旨い野菜のごちそう』(George ジョージ吉田/主婦の友社)だ。

著者はYouTubeチャンネル登録者数130万人超、ミシュラン二つ星レストランのエグゼクティブシェフを務めたGeorge(ジョージ吉田)氏。本書で彼が提唱するのは、野菜を「副菜」から肉や魚に匹敵する「主役」へと格上げするプロの技法だ。実際に3品を作り、その変貌ぶりを確かめた。

シンプルな素材に宿る、圧倒的な“ごちそう感”「えのきステーキ」

まず驚かされたのが「えのきステーキ」だ。えのきは石づきをギリギリで切り落とし縦半分に切り、ばらけないように根元につまようじを刺して丸ごと焼く。「大きく切って満足感を高める」――これが野菜を主役にする第一歩だという。

調理の要は、にんにくの香りを移したオリーブオイルでまず断面をしっかり焼きつけ、旨みや水分を閉じ込めること。その後、赤唐辛子をつけた水やしょうゆなどを加え、蒸し焼きにする。蒸気を当てながら焼くことで、中までしっかり火が通り、しっとりとした食感へと導かれるのだ。

実際に食べてみると、塩、醤油、にんにく、赤唐辛子という極めてシンプルな味付けながら、旨みが凝縮されたその味わいはまさに主役級。噛むほどにきのこの深い旨みが溢れ出し、柔らかさの中にコリコリとした食感も心地よく残る。

そして大ぶりにカットされた見た目は実におしゃれで、食卓に並んだ瞬間の「豪華さ」にも気分が上がる。普段は単に噛み切るための動作だった咀嚼が、このレシピでは旨みを堪能する幸せな時間へと変わった。ご飯のおかずにはもちろん、お酒との相性も抜群。プロの「形を崩さない工夫」の凄みを感じた一品だ。

焦げを旨みに変える逆転の発想「なめこペペロンチーノ」

味噌汁の定番脇役であるなめこを、「焦げる手前まで焼きつける」というプロの発想で別物に昇華させるのがこの一皿。

強火でなめこの水分を飛ばし、ロースト香をまとわせてから、ゆで汁でフライパン底の旨みをこそげとる(デグラッセ)。この「火入れを丁寧に行い、焼き色を旨みに変える」プロセスにより、味の輪郭がはっきりとし、野菜そのものの旨みが引き出され、お店の味のような深みが生まれる。さらにナンプラーという「別の旨み食材」を掛け合わせることで、野菜にはない魚介の重層的な旨みが補強されていく。

具材はなめこ1種類。それなのに、信じられないほどの厚みのある旨みに驚かされた。じっくり炒めることで独特のぬめりが消え、代わりにきのこの旨みが極限まで凝縮されている。香ばしく焼けたなめこは、まるでポルチーニを彷彿とさせる香り高さに。「なめこ=脇役」という固定観念を一口で粉砕する、まさに「きのこのご馳走」だった。

コーンのような甘さに宿る、プロの技「キャベツのステーキ」

本書の極意が最も分かりやすく体現されているのが、1/4カットのキャベツを豪快に焼き上げるこのレシピだろう。

キャベツをつまようじで固定し、断面を強火で焼きつけてから、蓋をしてじっくりと蒸し焼きにする。大きな塊をフライパン一つで仕上げるのは時間がかかるが、食材自体の水分を活かして蒸らすことで、芯までしっとりと火が入る。

仕上げには、めんつゆ、マスタード、バターを加え、少量の水で「乳化」させてソースを作る。野菜の淡白さを、動物性の脂や調味料で巧みに補強するテクニックだ。

厚みのあるキャベツにナイフを入れると、その手応えは驚くほど柔らかい。口に運べば、まるでコーンのように濃厚な甘みが広がる。蒸し焼きで芯までトロトロになったキャベツに、バターのコクとマスタードの酸味が効いたソースが絡む様は、贅沢なメインディッシュそのものだ。

ナイフで切り分けていただくスタイルも相まって、満足感はまさにステーキ級。これだけでご飯一杯をあっという間に完食してしまった。

タイパ至上主義への挑戦状。あえて「時短」を語らない独創性と哲学

現代のレシピ本がこぞって「時短」や「手抜き」を追求するなか、著者は本書が「いわゆる時短レシピではない」と明言している。電子レンジの活用などで家庭での作りやすさは確保しつつも、美味しさの頂点を目指すための「必要な手間」を絶対に惜しまない。この、ある意味で時代に逆行するストイックな姿勢こそが、本書を唯一無二の存在にしている。

本書が繰り返すのは「重ねる」という動詞だ。塩を重ね、火入れを重ね、旨みを重ねる。手間に見える工程の一つひとつにロジカルな理由があり、それを作る過程でプロの技術が自然と身体に馴染んでいく。数品試すだけで、野菜を扱う料理のレベルは確実に一段階上がるはずだ。

「今日は野菜しかないな」という妥協が、「今日はあの野菜を最高のステーキにしよう」という能動的な楽しみに変わる。ダイエット中でも心から満たされる一皿を、自分の手で作り出せる喜びも感じられる。ポトフ、白菜シチュー、ガスパチョなど本格的なレシピも収録されており、初心者から上級者まで、本気で野菜を美味しく食べたいすべての人に自信を持っておすすめしたい。

調理・文=古澤誠一郎

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