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だから84歳で毎日働ける…料理研究家・村上祥子さんが実践する足腰のヨボヨボ化を回避する"室内運動"

  • 2026.4.1

電子レンジ調理の第一人者である村上祥子さんは、料理研究家歴60年。夫を亡くし、ひとり暮らしも12年目。84歳になった今、村上さんは「最後の最後までしゃんとしていたい。そのためには手間をかけず三食しっかり食べることが大事」という――。

本稿は、村上祥子『84歳。食べて、歩いて、カッコよく生きる』(プレジデント社)の一部と、2024年のインタビューを再編集したものです。

村上祥子さん
目の前のことだけで考えず、常に視野を広く

村上さんにとって仕事は楽しいこと。約60年、料理研究家として働いてきたが、それはたくさん稼ぐためではない。「スタジオやスタッフの費用を賄い、赤字にならないこと。それだけで十分」だと言う。働く意味は、求められることに応えること、社会を少しだけ変えること。料理教室を初めて開いたときからずっと心に抱いている想いだ。それは、おいしい料理をつくるだけでなく、料理を通じて人と出会い、自分も幸せになる――それらがすべてに当てはまる。

「世の中の役に立つことをやっていれば、それに目を留める方が現れます。あれもこれもと関連することを続けていくうちにお金も回っていくようになるんですよ」

村上さんの考え方は、まさに“三方良し”。近江商人の経営哲学として知られる「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三方が満足する考えと同じ。そうやって、顧客の信頼を得、次々に新たな仕事を生みだしてきた。

料理に関する気になる記事はファイリングする。自宅スタジオ内の仕事部屋にはファイルがズラリと並ぶ。
料理に関する気になる記事はファイリングする。自宅スタジオ内の仕事部屋にはファイルがズラリと並ぶ。
80歳超でも活躍する秘密は好奇心と探究心

元気いっぱい、いつも忙しく動き回る村上さんの元気の秘訣は何といっても好奇心と探究心だ。世の中に電子レンジが登場したときもいち早く目を付けた。なぜ温まるのか、どうすれば使いこなすことができるのか研究し尽くし、レンジ料理を考案して料理本をつくったり、大豆ミートなど新しい食材が登場すればレシピ開発を怠らない。目の前で起こることすべてに目を向け、「なぜ?」を考え続けることが村上さんの元気の源であり、80歳を超えて尚、第一線で活躍し続ける理由だ。

84歳の今も、毎日スケジュールはびっしりだ。
84歳の今も、毎日スケジュールはびっしりだ。

「ずっと働き続けてきましたが、大好きな料理の仕事ですから疲れることはありません。大腿骨を骨折して入院したときも、治療の過程や看護師さんの働き方を見たり、入院食の写真を撮ったり栄養計算をしたりで興味津々。先日は、ある出版社の方がびっしり書き込んだ私のスケジュール帳を見て、『見ただけで疲れる』って。でもね、エネルギーは天下の回りもの、使えば使っただけ入ってくるのだから、出し惜しみしないほうがいいのよ」と笑う。

村上さんは、どんなときでもじっと休んでいることはなく、エネルギーに溢れている。82歳のとき、スタジオで滑って転んで大腿骨を骨折した。手術を受け、翌日からリハビリをし、10日後に退院。自宅に戻った翌日には動画の撮影をし、その週末には大分、神戸、京都へとひとりで移動して講演会をこなした。骨折から2週間ほどでこんなにあちこち出歩く80代はいないだろうが、「忙しく飛び回ることがリハビリなの」と村上さんはさらりと言う。

ムラカミ流「人生の続け方」

1989年、福岡市内に1階は駐車場、2階は料理スタジオ、3階はプライベート空間という、自宅兼料理スタジオを構えたことをきっかけに仕事はしやすくなったが、当時、家族5人の生活を想定して用意した家。3人の子どもが独立した後、夫とふたりで暮らしやすいように、そして、オンとオフを切り替えやすいようにとリフォームした。娘の部屋を約7.5畳のリビングキッチンにつくりかえ、無駄な動きを減らし、家事をラクにするシンプルな暮らしを実践している。

「大切なのは、『人生の仕舞い方』ではなく、最後まで人生をどう続けるかです。シンプルにするのは“食べる”ことも同じ。料理が面倒なら、出来合いのお惣菜でもいい。そこに、野菜や肉・魚などの小分けにした冷凍パックを足せば野菜やたんぱく質不足も解消できるし、レンチンだけで調理できてしまいます。食べることは生きること。食べない選択はありません。シンプルに簡単に三食食べる、そして自分の足で歩くことが、人生を続ける基本なのです」

夫婦ふたりになった際にリフォームし、今も使い続けているキッチン。コンパクトで動きやすい。
夫婦ふたりになった際にリフォームし、今も使い続けているキッチン。コンパクトで動きやすい。

夫が旅立ってから12年。毎日朝5時に起き、にんたまジャム®入りミルクティーを飲み、足腰を鍛えるためにトランポリンを100回飛ぶ。仏壇に手を合わせ、朝食を摂り、部屋を掃除し、風呂へ。身支度を整え、9時には2階の料理スタジオへ降りていく。それから夜の9時まで働きっぱなし、立ちっぱなし。仕事を終え、3階の居住スペースに戻り、夕食を摂って、眠るのは毎夜11時~12時だ。

「毎日、とにかくよく歩いていますよ。スタジオでの撮影や料理教室は立ち仕事。1日1万7000歩は軽く超えます。ある講演会の時に体組成計で調べてみたところ、筋肉量はアスリート並みだったの」

歩くだけではなく、10kg超えの荷物でさえ、自分で持つという村上さん。「講習など外部の仕事でアシスタントをつけることはありません。出張するときも資料やサンプル品、食材や調理器具を大きなバッグに詰め込んで、ひとりで飛行機や電車で移動します。いつも仕事先で『ひとりで来たんですか⁉』って驚かれます(笑)」。

外出はもちろん、撮影や料理教室でもヒールの靴を履き、重い荷物も自分で運ぶ。これが、足腰を鍛える“運動”になっているという。

「子どもたちには『運動神経ゼロのお母さん』と言われてきましたが、毎日ごはんを作り続けるだけでも、筋肉は付くのだと実感しています」

「生きることは食べること」最後までカッコよく

80歳を過ぎて、村上さんに負担を掛けないよう息子さんやお嫁さんが車で送迎してくれようとするが、村上さんはそれを「送迎してもらうと歩けなくなるわ……」と断る。それというのも、近年、顕著になった酷暑のさなか、タクシーを頻繁に利用した途端に足腰が弱り、自身の足で歩くことの大切さを感じ入ったからだ。人生100年と言われる時代、100歳まで自分の足で歩くためには、体を甘やかさないこと、そして食べ物に気を配ることがとても大切、と痛感した。それは、最後の最後まで自分らしさを貫くために、そして働き続けたいからこそなのだ。

「生きることは食べること」。人が生きるために必要な“食”に携わることが、村上さん自身の“生きる”に向き合う機会になっている。

「最後まで自分らしくいたい」と語る、村上祥子さん。
「最後まで自分らしくいたい」と語る、村上祥子さん。

「私はカッコいいことが大好きです。最後の最後まで気取っていたいと思います」

村上さんは、自分のことを“生来の気取り屋さん”という。「気取る」とは、「カッコよく見せる」こと。年齢を重ねると、「誰が見ているわけでもないし、この年だからカッコつけてもね」といった言葉を耳にすることが多くなる。確かに、カッコつけて生きることは大変なエネルギーを使うものだが、村上さんにとってそれは苦ではない。身だしなみはもちろん、住まいの整え方や仕事との向き合い方に至るまで、細かに気を配り、手を掛ける。体を動かすことをいとわない。それが村上さんの生き様なのだ。

村上祥子『84歳。食べて、歩いて、カッコよく生きる』(プレジデント社)
村上祥子『84歳。食べて、歩いて、カッコよく生きる』(プレジデント社)

「人間の体は24時間操業の工場と同じ。エネルギーが不足すると、筋力は衰え、腰は曲がり、カッコ悪いシニアになってしまいます。だから、私は最後までカッコよく生きるために、三食しっかり食べるのです。『元気の秘訣は?』とよく聞かれますが、それは、栄養・運動・社会参加。『お元気だから仕事ができるのですね』とおっしゃる方がいますが、私は仕事をしているから元気なのだと思っています」

世の中には、「あと何年働けば……」と考える人は多いだろう。しかし、村上さんを見ていると、年を重ねても自分の足で歩き、自由に生きていくためには“しっかり食べること”そして、“働き続けることが幸せにつながる”のだと気づかされる。

インタビュー取材・構成=江藤誌惠 撮影協力=品川プリンスホテル「コーヒーラウンジ マウナケア」

村上 祥子(むらかみ・さちこ)
料理研究家/管理栄養士/法人福岡女子大学客員教授
1942年福岡県生まれ。結婚後、27歳で料理教室をはじめ、料理コンテストの優勝をきっかけに料理研究家の道へ。1985年より福岡女子大学で栄養指導講座を担当。治療食の開発で油控えめでも一人分でも短時間調理ができる電子レンジに着目。研究を重ね、電子レンジ調理の第一人者となる。生活習慣病予防改善、個食時代の一人分簡単レシピ、小、中学校や保育園・幼稚園での食育出張授業、シニアの料理教室などあらゆるジャンルで電子レンジテクを活用。近著に『シニアひとり分のラクチンお鍋』(宝島社)、『古くて新しい 今こそ大豆』(東京書籍)、『料理家 村上祥子式 食べて生きのびる食べ力ぢから®』(集英社)など。著書は594冊以上、累計1296万部に上る。

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