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「いつもの風邪薬を買おうとしたら…」5月から市販薬の販売ルールが大幅変更。知らないと戸惑う“変更点”とは【医師が解説】

  • 2026.5.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「いつもの風邪薬を買おうとしたら、レジで色々聞かれた……」そんな経験が、これから増えるかもしれません。2026年5月から、改正薬機法の施行に伴い、市販薬の販売ルールがより厳格に運用されることになりました。

「自分を疑われているの?」「個人情報をどこまで話せばいいの?」といった不安を解消するため、医師の松岡雄治さんに、ルール変更の背景と、私たちがスマートに薬を購入するためのポイントを伺いました。

なぜ「いつもの薬」に確認が必要なの?背景にある深刻なリスク

---風邪薬の販売ルールが変更された背景には、どのような乱用リスクが関わっており、なぜ今、購入時の確認が必要になったのか、専門家の視点から教えていただけますでしょうか。

松岡雄治さん:

近年、市販薬のオーバードーズ(意図的な大量摂取)による健康被害が絶えないためです。

市販薬は用法・用量を守れば基本的に安全に使用できますが、多量に服用すると脳への依存だけでなく、肝臓などの薬を分解する他の臓器にも深刻なダメージを与え、死に至る危険性さえあるためです。

一部の咳止めや風邪薬には、コデインやエフェドリンといった依存性がある成分が含まれています。これらを意図的に大量摂取するオーバードーズが、若年層を中心に深刻化し、命に関わる事態を引き起こしています。

市販薬の過剰摂取がもたらす致命的なダメージは、以下の通りです。

・脳の破壊と依存
規定量をはるかに超えて飲むと一時的な多幸感が得られ、脳がもっと欲しいと誤認して強い依存に陥ります。

・肝臓への深刻なダメージ
風邪薬に含まれる解熱鎮痛成分(アセトアミノフェンなど)を一度に多量に飲むと、肝臓の解毒機能が限界を超えます。広範囲の肝細胞が壊死することで、肝臓に深刻なダメージを与え、最悪の場合は死に至る可能性さえあります。

こうした悲劇を水際で防ぐために、薬剤師や登録販売者に、適正な使用を確認してもらうよう、新たなルールが導入されました。薬局での確認はあなたを疑っているわけではなく、安全な使用を徹底するためのものなのです。」

「家族の分」も買える?複数購入やプライバシーの扱い

---新ルール施行後、特定の成分を含む咳止め薬を複数個まとめて購入したり、代理の人が購入したりする場合、どのような点に注意すべきでしょうか?

松岡雄治さん:

「まず、対象となる薬を知っておきましょう。今回の対象は、依存性成分を含む一部の内服薬のみで、貼り薬や塗り薬といった外用薬は対象外です。

複数購入については、運用がこれまで以上に厳しくなります。

対象となって多くの人に影響が出る薬は、具体的には、総合感冒薬(風邪薬)、咳止め、アレルギー用薬、解熱鎮痛薬などが該当します。

複数購入時の注意点としては、家庭の常備薬として置きたい、同居家族の分も買いたい等の具体的な理由を伝えれば、複数個の購入は可能です。記録の取り扱いについては、誰が何のために買ったかという情報が、一律に警察などの公的なデータベースに登録されるわけではありません。ただし、過剰摂取や頻回購入を防ぐ目的で、薬局内の販売記録や会員情報として情報が残されることはあります。

なお、18歳未満が購入する場合は原則1箱に制限されます。ご家族の分の購入を子供に頼むことは避け、大人が直接購入してください。これらはすべて、安全な適正使用を守るための必要な手順と言えます。」

レジでの質問、どこまで答えるべき?

---新ルール適用後、薬局のレジで焦らずスムーズに市販薬を購入するために、私たちが今から意識できる具体的な「買い方のコツ」を教えていただけますでしょうか。

松岡雄治さん:

「薬局側が法律で確認を義務付けられている項目は明確に決まっているため安心してください。聞かれる項目を事前に知っておくだけで、心理的な負担は軽くなります。

・確認が義務化されている項目
年齢、他の薬の使用状況、他店での購入状況、複数購入を希望する場合はその理由。また、18歳未満の場合は氏名の確認も必須となります。

・答える必要のない項目
法律上、すべての購入者に『住所』や『体重』を答える義務が課されているわけではありません。ただし、店舗が適正販売を管理するために、独自のルールとして連絡先の記入を求める場合があります。不審な聞き方でなければ、安全管理への協力として対応するのがスムーズです。

スムーズな買い方の例としては、レジで年齢を伝えるとともに、『お薬手帳』を提示して使用状況を伝え、自分の風邪症状のために買うという目的と、他店では買っていないことを伝えてください。流れと項目を知っておくことで確認の時間は劇的に短縮できます。

薬のプロである薬剤師は、病気のあなたを問い詰める存在ではなく、安心して安全に薬剤を購入し服用することを助けるパートナーなのです。」

ルールを知り、安心して薬局と付き合おう

薬局での確認は、決してあなたを疑うためのものではなく、健康を維持するための大切なステップです。

「義務化されている項目」を把握し、お薬手帳を活用することで、スムーズなやり取りが可能になります。

もし戸惑うことがあっても、それは社会全体の安全を守るためのルールです。薬剤師を『健康を守るパートナー』として、正しい知識を持って適切に薬と付き合っていきましょう。


監修者:松岡雄治
麻酔科専門医。総合病院、大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じ、幅広い周術期管理に従事。現在は急性期病院で麻酔科医として勤務する。日々、美容領域を含む各診療科の手術に携わっている。医師としての知識と経験を活かして医療系ライターとしても活動し、医療・健康・美容分野の記事執筆、医学論文の解説、商品監修、AI技術開発関連プロジェクトへの参加などの実績を有する。睡眠コンサルタント、睡眠検定1級の資格も保有。

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