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「そのうち治る」“長引く咳”を放置した40代女性→数年後、医師から告げられた“驚きの病名”に「あの時、受診しておけば…」

  • 2026.5.22

 

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆様こんにちは。日々、患者様の呼吸機能や全身状態と向き合っている麻酔科医の松岡です。

「いつもはよく効く咳止めが、今回はあまり効かないな。でも熱はないしそのうち治るだろう」

家事に育児に、仕事にと日々奮闘する元気な40代の女性・Bさん(仮名)。最近続く咳を「ただの風邪」と様子を見ていました。しかし数年後、痰に血が混じる(血痰)ことに気づいて慌てて受診したところ、告げられた病名は「非結核性抗酸菌症(NTM症)」。数年にわたる治療の必要性を聞き、「あの時、受診しておけば……」と激しく後悔することになったのです。

今回は、近年女性の間で増加傾向にある、身近な環境から感染する呼吸器のトラブルについて解説します。

清潔な習慣が細菌感染症につながる理由

「ただの長引く咳」が肺にダメージを与えていた原因は、土や水の中に広く生息する「非結核性抗酸菌」という細菌です。結核菌の親戚にあたりますが、人から人へ感染することはありません。

【肺がジワジワと破壊されるフロー】

  • 菌の潜伏:この菌は土の中や水場、特に浴室のシャワーヘッドのぬめりや水垢などに日常的に潜んでいます。
  • エアロゾル吸入:毎日の入浴や掃除の際、菌を含んだ微細な水しぶき(エアロゾル)が発生し、それを無意識に肺の奥深くへと吸い込んでしまいます。
  • 細菌の増殖と呼吸不全へのリスク:肺に定着した菌が、数か月から数年単位でゆっくりと増殖し、進行すると肺の機能低下(呼吸不全など)を招くリスクがあります。

「綺麗好き」という長所と「危険な様子見」の落とし穴

毎日お風呂を掃除して清潔を保ちたい、趣味のガーデニングで自然に触れるというのは、理想的な日々に思えます。そんな健全な暮らしをしていて健康の心配も特にない場合、長引く咳が出ても「ただの風邪」あるいは「咳だけ」と自己判断して様子を見てしまうのも、無理のないことでしょう。

しかし、そこに落とし穴があります。肺NTM症は「基礎疾患のない免疫力の正常な、中高年女性」に多く発生しているのです。
基礎疾患がないからこそ他のことで受診する機会もなく、元気だからこそそのまま様子を見てしまって知らず知らずのうちに悪化していくのです。

病状が進行する前に確認したい「3つのサイン」

「ただの咳」から病状が進行する前に、ご自身の体の変化を振り返ってみてください。以下のサインがある場合には受診を検討します。

1. 風邪や喘息の薬が効かない長引く咳

1か月以上続く咳や痰の変化は、もっとも頻度が高い初期のSOSです。

2. 原因不明の体重減少

体重が減ってきたら、それは体内で慢性的な炎症が続いている、注意すべきサインの一つです。ご自宅で定期的に体重を測定してください。

3. 血痰(血が混じった痰)

病気が進行し、肺の血管や組織に影響が出始めているサインです。

心当たりがあったらぜひ一度検査を

「熱が出ないから」「動けるから」と受診を後回しにしていると、気づかないうちに病状が進行してしまう恐れがあります。

肺非結核性抗酸菌症は、早期に発見できれば、すぐに強い薬を飲まなくても、定期的なCT検査などで「慎重に経過観察をする」という選択をとることが一般的です。予防として、シャワーヘッドを定期的にクエン酸などで掃除する、ガーデニング時はマスクを着用するといった心がけも有効です。

もし「最近、おかしな咳が続くな」と思ったら、市販の咳止めで誤魔化そうとせず、まずは専門の医療機関である「呼吸器内科」を受診してください。「何事もなければそれでいい」という軽い気持ちで専門医の検査を受けることが、あなたの大切な肺と、健やかな毎日を守る最大の自衛策になります。


※本記事は一般的な医学的情報の提供を目的としており、特定の診断や治療を保証するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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