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「虫に刺された」“痛くないから”と放置した50代男性→1週間後、意識障害で搬送され…医師から告げられた“恐ろしい診断”

  • 2026.5.24
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは、日々皆さんの健康と向き合う医師の松岡です。

「そこ、どうしたの?」「庭いじりのときに虫に刺されたみたいだけど、痛くもないし大丈夫。」

娘に指摘された虫刺されの痕を、50代男性のAさん(仮名)は気に求もとめていませんでした。

しかし、一週間が経つころに高熱と下痢の症状が出ました。何かにあたったのかもしれないと、受診せずにいたところ、突然の意識障害と高熱に襲われ、救急搬送されました。

医師からは、「多臓器不全に陥っている」と告げられ、集中治療を受けることになりました。ウイルスにより血液が固まらなくなり、ICUで人工呼吸器と透析の機械につながれています。ご家族は、「あの時、放置しなければ」と後悔しています。今回は、ガーデニングに潜むリスク、SFTSについて解説します。

「ただの虫刺され」が全身の臓器を破壊するメカニズム

なぜ「ちょっと虫に刺されただけ」の油断が、集中治療を要するほどの事態を招くのでしょうか。その犯人は、都市部の公園や自宅の庭の草むらにも広く生息する「マダニ」です。

蚊は一瞬で血を吸って飛び去りますが、マダニは皮膚にガッチリと口器を突き刺すと、数日から10日以上も麻酔のような成分を出しながら血を吸い続けます。その吸血のプロセスで、SFTSウイルスが人間の体内へ静かに、大量に注入されてしまうのです。

体内でウイルスが増殖すると、血を止める役割を持つ「血小板」や、病原体と戦う「白血球」が激減。全身の血管や臓器(脳や腎臓など)から出血しやすくなり、急激に多臓器不全へと進行します。

「いつもの虫刺され」という油断と、見逃されやすい初期症状の罠

「庭に出れば虫に刺されるのは当たり前」「発熱や下痢くらいで病院に行くなんて大げさだ」と考えるのは、ガーデニングをするほど普段元気な方であれば、無理もないことです。

しかし、日本のSFTS感染者数は年々増加傾向にあり、2025年の年間感染者数は「191名」(速報値)と過去最多を更新しました。

国内での致死率は約27%(およそ4人に1人が死亡)と極めて高く、近年一部の抗ウイルス薬が承認されたものの、重症化すれば今なお命に関わる極めて危険な感染症です。

さらに恐ろしいのが、「刺されたことに本人が気づけない」という点。マダニは刺すときに痛みを感じさせない物質を出すため、およそ半数の人が「いつどこで刺されたか分からない」まま発症し、ただの風邪や急性胃腸炎だと勘違いして発見が遅れてしまうのです。

手遅れになる前に確認したい「3つのサイン」

取り返しのつかない多臓器不全になる前に、ご自身の体調を振り返ってみてください。以下のサインがある場合、ただの風邪ではなく、体内でマダニ由来のウイルスが増殖している可能性があります。

1. 野外活動の6日〜2週間後に38℃以上の高熱が出た

ウイルスが体内で潜伏期間を経て、一気に増殖し始めたサインです。

2. 発熱とともに、嘔吐や下痢、腹痛が続く

ただの風邪ではなく、STSFに特徴的な消化器症状が現れている危険な状態です。

3. 原因不明のぼんやり感やだるさがある

血小板や白血球が減少し、脳や全身の臓器にダメージが及び始めている(意識障害の初期)サインです。

「ただの虫刺され」を防ぎましょう。

庭仕事や農作業をするときは、「長袖・長ズボン・帽子・手袋」を着用し、首にタオルを巻いて肌の露出を完全にゼロにすることが最高の予防策です。

万が一、お風呂上がりなどに「皮膚に黒く丸い小さな虫(マダニ)がガッチリ食い込んでいる」のを見つけても、絶対に指でつまんで引っ張ったり、ピンセットで引き抜こうとしてはいけません。

無理に引っ張ると、マダニの頭部(口器)が皮膚の中にちぎれて残ってしまったり、虫の体を押しつぶした拍子に、マダニの体内のウイルスが一気に人間の血管へと逆流してしまうからです。

見つけた場合は触らず、そのまま「皮膚科」を受診して医療器具で安全に除去してもらってください。そして、庭仕事のあとに「高熱や下痢」が起きたときは、市販の風邪薬で誤魔化さず、必ず「いつ、庭仕事をしていたか」を医師に伝えて、速やかに内科を受診すること。その一歩の早さが、あなたと大切な家族の命を救う、唯一の境界線になるのです。


※SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の潜伏期間や症状の現れ方、重症化のスピードには個人の免疫状態や年齢によって大きな差があります。野外活動後に体調の異変を感じた場合は、自己判断で様子を見ず、直ちに医療機関(内科・皮膚科)を受診し、マダニに接触した可能性がある旨を必ず医師に伝えてください。

監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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