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「痛くなる前に飲んでおこう」市販の鎮痛薬を“朝昼晩”で飲み続け…→その後、40代女性を待ち受けていた“身体の異変”

  • 2026.4.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「今日も雨か。頭が痛くなると仕事にならないから、痛くなる前にいつもの薬を飲んでおこう」。

梅雨の時期。40代の女性Yさんは、気圧の変化による頭痛に備え、市販の鎮痛薬をお守りのように頻繁に飲んでいました。

しかし、次第に薬が効かなくなり、自然と飲む量は増加していきました。気づけばほとんど朝昼晩と定時内服をするようになり、今では朝から晩まで続く激しい頭痛のせいで、休日の外出すらできなくなりました。
受診後は、原因となった薬を一切断つという苦しい治療を強いられています。離脱症状による激しい吐き気に耐える日々です。

皆様こんにちは。痛みと薬と日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。今回は痛み止めを飲んでいるのに治るどころか日に日に強くなっていく頭痛のメカニズムについて解説します。

「痛くなる前に飲む」お守りのつもりの痛み止めが脳のネットワークを狂わせる

「どうせ痛くなるから、その前にあらかじめ薬を飲んでおこう」と考えるのは一見すると合理的な考えのようです。
しかし、これが習慣化すると、薬が効かなくなるばかりか、かえって新たな激痛が生まれる可能性があります。

市販の鎮痛薬の過剰な使用が、脳の痛覚ネットワークを狂わせるメカニズムを整理します。

【お守りの鎮痛薬が新たな激痛を作り出すフロー】

  1. 鎮痛薬の過剰摂取:不安から、月に10〜15日以上など頻繁に市販の鎮痛薬を飲み続ける。
  2. 痛覚制御システムの破綻:薬の成分が蓄積することで、体内に薬がある状態に慣れてしまうと次のような変化が起こる。
  3. 痛みを抑えるシステムが弱る:常に鎮痛されていることで、脳が痛みを抑える神経システム(下行性疼痛抑制系)が不要だと判断され、機能不全に陥っていく。
  4. 脳の過敏化:痛みは危険から身を守るための大切なシグナルなので、その機能を取り戻そうと、痛みのセンサー感度を高く設定するようになる。中枢性感作(セントラル・センシタイゼーション)が引き起こされる。
  5. 新たな頭痛の発生:血管のわずかな拍動など些細な刺激まで激痛として伝達され、毎日続く持続性の頭痛(薬物乱用頭痛)が発生する。

「仕事に穴をあけられない」という自然な心理と危険な罠

頭痛で仕事を休みたくない。せっかくの休日に家族に迷惑をかけたくない。忙しい毎日の中で痛みを未然に防ぎ、周りのために自分をコントロールしようとするのはごく自然な心理です。真面目で責任感が強いことがこの病気を招いてしまうことはよくあります。

ただし、市販の鎮痛薬は一時的に痛みの伝達をブロックするだけで、頭痛の根本的な原因を治すものではありません。
そればかりか、連用すると脳に変化が生じます。例えば、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の単一成分なら月に15日以上、カフェインなどを含む複合製剤なら月に10日以上の服用が長期間続くと、脳の痛みを抑えるシステムは深刻なダメージを受けます。

特に危険なのは、薬が切れること自体が脳へのストレスとなり、激しい頭痛を引き起こす状態です。「頭が痛いから薬を飲む」のではなく、「薬が切れたから頭が痛くなる」という泥沼の悪循環に陥ります。加えて、梅雨時などの気圧の変化に伴う予期不安が、薬の服用量を一気に増加させます。

あくまでもレスキューとして使うという鎮痛薬の正しい使い方を知っていればこの事態は防ぐことができたかもしれません。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

ただの片頭痛の悪化だと誤認して脳を限界まで痛めつけないよう、薬物乱用頭痛特有の危険なサインを見逃さない配慮が必要です。

1.市販の鎮痛薬を月に10〜15日以上(週に2〜3日以上)飲んでいる

脳の痛みを抑えるシステムが破壊され始めているおそれがある、最も客観的で危険なサインです。

2.以前は効いていたはずの薬が、最近は全く効かなくなった

脳のセンサーの感度が高く設定され、市販薬の成分では痛みを抑えきれない状態に陥っている危険な警告です。

3.頭痛の性質が変わり、毎日「頭全体が重く締め付けられる」ように痛む

時々起きるズキズキとした痛みから、毎日の慢性的な痛みに変化しているのは、脳のネットワークに変化が起きてしまったサインです。

まとめ

痛みをどうにかしようと頑張った結果、さらにつらく苦しい頭痛を招いてしまっているケースが最近増えています。

まずは、月に何回鎮痛薬を飲んでいるかを手帳や頭痛記録アプリに記録することから始めましょう。月に10日以上の服用をしている場合や、薬が効かなくなってきたと感じている場合は、決して自己判断で薬を増やさず、直ちに頭痛外来や脳神経内科を受診することが不可欠です。

薬から抜け出し、痛みに怯えない自由な日常を取り戻すため、ぜひお気軽に相談してください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

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