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突然、呼吸困難になり救急搬送→『心不全』を宣告された50代女性。健診では“異常ナシ”のはずが…女性に起きてた“恐ろしい予兆”

  • 2026.4.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「最近、階段ですぐ息が上がるのよね。ヨガだけじゃ足りないのかしら。やっぱり走るのが一番ね、明日からジョギングしよう。」
春の陽気に誘われ、50代の女性Mさんは走り始めました。昨年の健診では採血検査も心電図も異常なし。息切れは加齢からくる体力の衰えだと思い込み、ジョギングを取り入れることにしました。

しかし、数週間後、Mさんは夜間に激しい呼吸困難に襲われ救急搬送されました。診断は重症の心不全でした。一命は取り留めたものの、今も少し早歩きをするだけで息苦しく、毎日の厳密な減塩と体重測定、薬が手放せなくなっています。

皆様こんにちは。日々手術室で患者さんの心臓と向き合う麻酔科専門医の松岡です。今回は、健康診断でも異常を指摘されず、ヨガの習慣があったのに最近息切れが気になっていた女性のケースを通して、最近急増している隠れ心不全について解説します。

息切れは「硬くなった心臓」からのSOS

心臓が悪いなら健診でひっかかるはずだと誰もが信じています。
しかし、通常の健診では見つけにくいタイプの心不全が、近年中高年に急増しています。それが、心臓の「広がる力」が低下する「隠れ心不全(HFpEF:heart failure with preserved ejection fraction=収縮機能が保たれた心不全)」です。

【隠れ心不全で異常な息切れが起きるフロー】
・加齢や高血圧により、心臓の筋肉が少しずつ分厚く硬くなる
・安静時は血液を正常に送り出せるため、健診でも正常と判定される
・運動で全身が血液を求めると、分厚い筋肉で硬くなった心臓に血液がうまく入りきらない
・行き場を失った血液は手前の「肺」で渋滞する
・肺から水が染み出して、ガス交換がしにくくなり、息切れを引き起こす

実は、心臓は中で仕切られていて、左半分と右半分とで役割が異なります。分厚くなるのは主に左半分の方です。次のサイクルで渋滞が起こってしまうことで心不全となるのです。
【正常な血液のサイクル】
全身の血液 → 心臓(右側) → 肺(酸素を受け取る) → 心臓(左側) → 全身へ力強く送り出す

「健康への向上心」と「女性特有の心臓の変化」

「息が切れるのは体力が落ちたから。もっと運動しなきゃ」。そう考えて努力するのは、素晴らしいことです。健康診断もパスしたのに、まさか自分の心臓が悲鳴を上げているとは思わなかったでしょう。

この隠れ心不全は、更年期以降の女性に急増する病態として近年注目されています。心臓や血管のしなやかさを守っていた女性ホルモン(エストロゲン)が、閉経を機に減少するためです。また、女性の心臓は男性と異なり、加齢とともに内側に向かって硬くなりやすい性質を持っています。

硬く内側が狭くなった心臓にいきなり激しい運動負荷をかけるのは、狭くなった電車の車内に無理やり人を押し込むようなものです。乗りきれなかった血液は肺に溢れ、急性心不全を招いてしまいます。決して運動がよくないわけではありません。今の自分の心臓に合った適度なペースを知らずに負荷をかけてしまうことが危険なのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

「体力が落ちただけ」と誤認して心臓を限界まで追い込まないよう、心臓が原因の息切れ特有のサインを知っておくことが不可欠です。以下の症状を見逃さないでください。

1.運動をやめても、息切れがすぐには治まらない

単なる運動不足なら休めば数分で回復しますが、肺に血液が渋滞していると10分単位でしばらく苦しさが続きます。

2.夜、横になって寝ると息苦しく、起き上がると楽になる

医学的には「起坐呼吸(きざこきゅう)」と呼ばれる、心不全特有の危険なサインです。

3.足のすねを指で押すと、へこみがなかなか戻らない

前述した心臓の正常なサイクルで、渋滞が解消されないと、どんどん手前まで渋滞が及びます。ついには右側の心臓のさらに手前の全身に、水分が溜まるのが「体うっ血」です。特に立っている姿勢では、重力のために足に水が溢れやすく、皮膚と骨の距離の小さなすねでこれが目立ちます。

まとめ

みなさんも更年期という言葉を聞いたことがあると思います。ほてりのほかにもさまざまな症状が出ると知られていますが、実は心臓にも変化が訪れるということを知っておいてください。Mさんが感じた加齢による変化というのは、実はあながち間違っていませんでした。しかし、問題は体力ではなかったのです。

まずは今日、ご自身の足のすねのむくみや、息切れの様子を確認することから始めてみてください。違和感があれば、無理をせず循環器内科を受診しましょう。簡単な血液検査や胸に検査機械を当てるだけの心臓エコー検査などで心臓の状態を把握してみましょう。心臓エコー検査では、心臓の厚みや動きが痛みもなく簡単にその場でよくわかります。病院に行くのは抵抗があるかもしれませんが、これは誰もが経験する変化です、良いタイミングで上手に医療を活用して元気に歳を重ねていきましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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