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“要介護4”に認定された母→月22万円の有料老人ホームに入居させるも…5年後、50代女性を待ち受けていた“800万円”の悲劇

  • 2026.4.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!FPとして主に家計相談やお金に関する情報発信などを行っている柴田です。

57歳女性・Aさん(仮名)から、こんな言葉が出てきました。「母のためを思って会社を辞めたんです。でも気づいたら、5年で貯金が全部なくなっていました」Aさんは独身で、地方都市で一人暮らしをする母親(当時78歳)の介護のため、52歳のときに勤めていた会社を退職しました。当時の年収は約480万円、貯蓄は約800万円。「私が見てあげなきゃ」という思いと、「貯金もあるし数年なら大丈夫」という見通しでの決断でした。しかし5年後、Aさんの貯蓄は底をつき、自身の老後にも深刻な不安を抱える事態となっていました。

「数年なら大丈夫」のはずが、貯蓄800万円が消えた理由

親の介護って、なかなか悩ましい問題ですよね。私の両親は幸い元気にしていますが、いつ介護が起こるかわかりません。なので、今回のAさんの悩みを聞いて、「自分も気を付けないとなぁ」と思いました。

さて、Aさんの母親は要介護2からスタートし、徐々に状態が進行して最終的には要介護4となりました。最初の2年間は在宅介護で月平均8万円ほど。デイサービスやヘルパー利用の自己負担分、おむつ代、通院費などが積み上がります。母親の年金は月12万円ほどありましたが、生活費と医療費でほぼ消えてしまい、介護費用はAさんが負担せざるを得ませんでした。

3年目以降は症状が進み、特別養護老人ホームへの入居を希望したものの順番待ち。やむなく民間の介護付き有料老人ホームに入居し、月額費用は約22万円に跳ね上がりました。母親の年金で足りない約10万円を、Aさんが毎月補填する生活が続きます。5年間の介護費用は総額で約800万円。Aさん自身の生活費もここに重なり、貯蓄は静かに、しかし確実に減っていったのです。

介護離職が「お金」に与える本当のダメージ

介護離職の怖さは、目の前の介護費用だけではありません。収入がゼロになることに加え、厚生年金の加入期間が短くなることで、将来受け取る年金額そのものが減ってしまいます。さらに深刻なのが「再就職の壁」です。介護が一段落して57歳で求職活動を始めたAさんですが、ブランクと年齢を理由になかなか正社員の仕事は見つかりませんでした。現在はパートで月10万円ほどの収入を得ていますが、自身の老後資金を貯める余裕はほとんどありません。

辞める前に使えたはずの3つの制度

ここで知っておいてほしいのは、Aさんが「離職しなくても使えた制度」が複数あったということです。

1つ目は介護休業制度です。対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。この間、雇用保険から介護休業給付金として賃金の67%が支給されます。「たった93日では足りない」と思われがちですが、これは介護に専念するためではなく、介護の体制を整えるための期間と位置づけられています。

2つ目は介護休暇です。年間5日(対象家族が2人以上なら10日)まで、1日または時間単位で取得できます。通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせなどに活用できます。

3つ目は短時間勤務制度や所定外労働の制限です。働きながら介護を続けるための仕組みが整っており、フルタイム勤務が難しくなっても仕事を辞めずに続ける道があります。ここで一度、お金の面から「離職する場合」と「制度を使って働き続ける場合」を比べてみましょう。

Aさんが52歳から60歳まで働き続けていれば、給与収入だけでも単純計算で3,000万円以上。さらに厚生年金の加入期間が延びることで将来の年金額も増え、退職金にも影響します。これらをすべて合わせると、介護離職によって失ったものは生涯で軽く2,000〜3,000万円規模に達することも珍しくありません。目の前の介護費用800万円に気を取られて離職した結果、その何倍もの金額を失ってしまうのが介護離職の怖さです。

辞める前に相談すべき3つの窓口

介護に直面したとき、いきなり退職を決める前に勤務先の人事部で相談しましょう。介護休業制度や短時間勤務制度の利用について、必ず確認してください。

「会社に介護のことを相談するなんて気が引ける」と感じる方も多いのですが、ここは発想を切り替えてほしいところです。会社にとっても、経験を積んだ社員に辞められるのは大きな損失です。採用や教育のコストを考えれば、制度を使ってでも働き続けてもらうほうが企業にとってもメリットがあります。

実際、近年は介護と仕事の両立支援に力を入れる企業も増えています。「迷惑をかける」ではなく「会社と一緒に乗り切る」という気持ちで、まずは相談してみてください。そして忘れないでほしいのは、介護休業給付金も介護休暇も短時間勤務制度も、すべて国が法律で定めた制度だということです。私たちが普段納めている雇用保険料や税金が原資になっており、いざというときに使うために用意されているという点を、ぜひ知っておきましょう。

まとめ

介護離職は「親のため」のつもりが、結果的に自分の老後を犠牲にし、ひいては親にとっても望ましくない結末を招きかねません。Aさんも「あのとき会社を辞めずに、まず地域包括支援センターに相談していれば」と振り返っています。

介護に直面したら、まず辞めない方法を探す。そのために使える制度と窓口があることを、ぜひ覚えておいてください。介護はマラソンです。一人で抱え込まず、社会の仕組みを上手に使いながら、自分の生活と老後も守っていきましょう。  


柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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