1. トップ
  2. 「そのうち売ればいい」母の死後、実家の解体費200万を先送りした結果…52歳女性を襲った“年間30万”の落とし穴

「そのうち売ればいい」母の死後、実家の解体費200万を先送りした結果…52歳女性を襲った“年間30万”の落とし穴

  • 2026.5.11
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。宅地建物取引士の資格を持つライターのT.Sです。総務省が公表した調査結果によると、全国の空き家数は約900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高を更新しました。こうした背景もあり、2024年4月からは相続登記が義務化され、2026年4月からは住所変更登記の義務化も始まりました。

さらに法改正によって、管理が不十分な空き家は自治体から「管理不全空家」として勧告を受ける対象になりました。勧告を受けると、たとえ建物が残っていても住宅用地の特例が解除され、土地の固定資産税が3〜6倍に跳ね上がる仕組みが導入されています。今回は、地方の実家を「そのうち何とかなるだろう」と放置してしまった、ある女性の事例を紹介します。

団塊世代の親から相続した実家と心理的先送りの罠

都内在住のIさん(52歳・女性)は、2年前に母親が他界したことで、地方の木造戸建てを相続しました。団塊世代の親を持つ50代は、今や空き家相続の中心世代といえます。Iさんは「とりあえず今のままで、そのうち売却すればいい」と先延ばしにしていましたが、いざ地元の不動産会社に相談すると、築年数の古さを理由に取り扱いを断られてしまいました。

更地にするにしても解体費用として約200万円が必要だと分かり、Iさんは決断をさらに先送りにします。その結果、誰も住んでいない実家に年間約30万円もの維持費を払い続けることになりました。

固定資産税8万円に加え、年2回の草刈り代6万円、光熱費の基本料金5万円などが家計を圧迫します。さらに遠方からの帰省費用や保険料も重なり、放置するほど資産が削られていく現実に直面しました。

近隣居住者とのトラブルと増税のリスク

空き家を放置するリスクは、金銭面だけにとどまりません。Iさんの実家では庭木が隣家に越境し、近隣の居住者から苦情が入る事態に発展しました。2023年の民法改正により、越境された側が一定の条件で枝を切除し、その費用を所有者に請求できるようになっています。

遠方からの管理に限界を感じる中で、こうしたトラブルは精神的な負担も増大させます。また、自治体から「管理不全空家」に認定されるリスクも無視できません。

窓ガラスが割れたままだったり、庭木が荒れ放題だったりする状態が続くと、固定資産税の優遇措置が受けられなくなる可能性があります。更地にする費用を惜しんで建物を残した結果、かえって税負担が数倍に膨らむ事態も起こりうるのです。

負動産化を防ぐための出口戦略と事前の備え

Iさんは現在、自治体の空き家バンクへの登録や、2023年4月に開始された「相続土地国庫帰属制度」の活用を検討しています。この制度は、一定の条件を満たせば土地を国に引き渡せるものですが、建物がある場合は解体が前提となるため注意が必要です。空き家問題は、相続が発生してから慌てても解決が難しいケースが多く見られます。

大切なのは、親が元気なうちに「誰が管理するのか」や「解体費用の原資はあるか」を具体的に話し合っておくことです。資産としての価値が残っているうちに売却や譲渡の目処を立てることで、実家が負担ばかりの「負動産」になることを防げます。

「来年でいいや」という先送りをせず、今のうちから家族で数字を共有し、出口戦略を立てておくことが賢明な判断といえるでしょう。

参考:
令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果(総務省統計局)
空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省)



ライター:T.S(宅地建物取引士)
大学卒業後、大手不動産会社に入社。10年以上にわたり、都心のタワーマンションから郊外の築古戸建てまで、数多くの現場経験を積む。現在は不動産ライターとして「業界の不都合な真実」や、消費者が陥りやすいマネーの罠について、実体験に基づく記事を執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる