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「家賃8万円を30年払い続ければ2,880万円になり家が買える」見落としがちな“厳しい現実”に不動産歴15年プロが物申す

  • 2026.5.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産業界歴15年で宅地建物取引士やマンション管理士の資格を持つ、ライターの西山です。SNSで定期的に話題になるのが「家賃8万円を30年払い続ければ2,880万円になり家が買える」といった主張です。

「家賃は払って終わりだが住宅ローンは資産として残る」という論理は、一見正しく見えるでしょう。しかし不動産のプロから見ると、この損得勘定には重要な視点が欠けています。

今回は、賃貸派と購入派の双方が見落としている隠れたコストの実態と、老後の住居確保という現実的な問題について解説します。

購入と賃貸に潜む隠れたコストの実態

住宅購入にかかる費用は、ローンの返済額だけではありません。たとえば3,000万円を金利1.5%の35年ローンで借りた場合、約870万円の利息が発生します。さらにマンションであれば、毎月の管理費や修繕積立金が30年で約1,080万円かかり、固定資産税や売却時の仲介手数料も必要です。

総額で5,000万円を超える可能性がありますが、新築など一定の要件を満たす住宅の場合、現行制度では最長13年間の住宅ローン控除による所得税などの還付があり、実質的な支出が軽減される仕組みとなっています。一方で賃貸派の計算も、家賃の掛け算だけでは終わりません。

2年ごとの更新料や家賃保証会社の利用料に加えて、火災保険料や引越しの初期費用が上乗せされるため、実際の支出は数百万円多くなるのです。

投資としての持ち家と賃貸のメリット

住宅購入は本質的に不動産投資と同じ構造といえます。最終的にいくらで売れるかで損得が確定するため、正確な答え合わせは数十年後にしかできません。地価が上昇している局面では資産価値も上がるため、売却時にトータルコストを上回る利益を得られるケースがあります。

しかし、値上がりする物件を見極めるのは、不動産のプロでも容易なことではありません。賃貸には住み替えの柔軟性や、近隣トラブル時に離れやすいというメリットが存在します。さらに設備の修繕費がオーナー負担となる点も、賃貸ならではの大きな利点です。

最大の焦点となる老後の住居確保と家計設計

賃貸派が最も見落としやすいのが、老後の住居確保という現実です。賃貸の現場では高齢者の孤独死リスクを懸念するオーナーが多く、70歳を超えると優良な物件の入居審査に通りにくくなる実情があります。

定年後に住宅を購入しようとしても、組める住宅ローンは期間や金額ともに限られます。現役時代の信用力を使って住宅ローンを組み、老後の住居を確保しておくという視点は、単純な損得計算からは見えてきません。

購入を検討するなら、税金の還付分を差し引いた実質的なトータルコストでシミュレーションすることをおすすめします。賃貸を選び続けるのであれば、老後の住居確保を計画に織り込む必要があります。

賃貸か購入かはライフプランや資産状況によって正解が異なり、どちらが絶対に得ということはありません。ただし、15年間この業界に身を置いてきた実感として一つ言えるのは、「損得勘定だけで住まいを選んだ人ほど後悔しやすい」ということです。

どこまで行っても「家」は、毎日の暮らしの場であることに変わりはありません。通勤の快適さ、周辺環境の安心感、家族がくつろげる間取りなど「そこに住んで気持ちよく暮らせるか」という居住環境の視点を判断の軸に据えることが、結果的に長く満足できる選択につながるのではないかと考えています。



筆者:西山雄介(宅地建物取引士・マンション管理士・日商簿記2級などの資格所有)
不動産業界歴15年。新卒で東証プライム上場のマンションデベロッパーに入社後、計2社で新築・中古販売および管理業務に従事。実務現場を経て管理職も歴任し、組織運営にも携わる。現在はその多角的な視点を活かし、実務解説から不動産投資、法律事務所案件まで、専門性の高いコンテンツ制作・ディレクションを行っている。


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