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【椎名林檎さんインタビュー後半】満ちあふれるエネルギーの根源は“学び欲”

  • 2026.3.21

新作アルバム『禁じ手』をリリース、ライブツアーでも多くのファンを熱狂させている椎名林檎さん。インタビュー後半の話題は、新作アルバムから文学、食の好みまで。唯一無二の表現で魅せる、モードとの競演もお楽しみあれ!
インタビュー前半はこちらから


エネルギーの根源にあるのは“学び欲”

耽美な印象の裏に隠された侍のような気概。満ちるエネルギーの根源にあるのは、意外にも〝学び欲〞なのだという。

「実際に全工程をやってみることがいちばん勉強になるんですよね。歌ってみると歌というものが、絵を描いてみると絵というものの難しさがわかる。批評性が得られるでしょう。筆を散々使って汚して、メンテナンスして、乾かしてまた使うみたいな過程が好きなんですよ。その繰り返しに快感を覚えることがわかって。描きたい理想にとって、いまの自分が未熟だと感じれば、苦しくて潰瘍ができたりも。だけどやめられません」

トレーンがなびく、ドラマティックな黒T

トランスペアレントジャージーの黒Tは、長いバックトレーンが新しい。スリムなテーラードパンツを合わせて、軽やかかつ凛とした印象に。コントラストを成すローズカラーのレザーグローブが、新生バレンシアガ流のパリジャンシックなアクセント。

トップス19万8000円、パンツ19万8000円、グローブ16万1700円、イヤリング8万8000円、シューズ17万7100円※参考色 ※すべて予定価格(すべてバレンシアガ/バレンシアガ クライアントサービス) ピアスは本人私物

新作アルバム 『禁じ手』では、あえて自作曲を封印し、他のアーティストへの客演という形をとった。その真意とは?

「もともとJ‐POPを聴いていなかった私でも、大スターが一年に一、二度、テレビ番組で特別なデュエットをされている場面は楽しくて。 イギリス留学時に見たダイアナ・ロスとジャミロクワイの競演も記憶に残っています。それもあり、前作まで、デュエットアルバムを続けてつくりました。今作では私は歌に集中しています。作家同士ですから、普通に活動していたら滅多にご一緒できないお相手ばかり。贅沢な企画でした」

赤の色選びにも見えるエフォートレスな感性

細かなニットフリルで満たされたベビードールドレス。温かみがありながら軽やかな赤は、リップスティックレッド。ふんわりと膨らんだスカートから覗く肌とのバランスが計算されている。耳もとに添えた甘さと対比するゴールドのラッキーチャームもアクセント。

ドレス187万円、アンダーショーツ18万5900円※参考価格、イヤリング16万600円、シューズ17万9300円※参考価格(すべてジバンシィ byサラ・バートン/ジバンシィ ジャパン)ピアスは本人私物

好奇心のアンテナは全方位

総合芸術として世界観を表現する椎名さんのアンテナは全方位だ。『禁じ手』 のジャケット画はレジェンド、宇野 亞喜良による描き下ろし。またジャズピアニスト、シャイ・マエストロや、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の生命力あふれる公演にも感銘を受けたという。また焼き物好きが高じて、ジャケットに有田焼を使ったことも。「手仕事の温もりがいい」 と工芸にも思いを寄せる。

サーフカルチャー薫るオーバーサイズコート

張りのあるネオプレーン素材のコートは、エキゾティックなハワイアンプリント。まるで海から上がってきたサーファーが、ローブをラフに羽織ったかのようなムードがリラックス感を表現する。薄底スエードの70年代風レトロスニーカーもエッセンスに。

コート36万8500円、トップス着用したラッフルベルト7万1500円、ネックレス12万5400円、シューズ14万9600円※参考色(すべてドリス ヴァン ノッテン)ピアスは本人私物 ソックスはスタイリスト私物

「お慕いする唐津焼の中里隆先生の隆太窯ギャラリーがある、佐賀の洋々閣に行ってみたいです。着物もそうですが、伝承されてきたメソッドには、触れるほど、新しさを追求する世界とも共鳴する気がします。低い声を鍛えると高い声も広がるということに近いかもしれないですね」

独特の日本語表現も椎名さんの真骨頂ゆえ、どんな本を好むのかも気になるところ。

「純文学は確かに子ども時分、人並みに読んできたと思います。懐古趣味で、昭和初期の言葉遣いに惹かれます。かたや、装飾過多な縦書きっぽい文章は嫌いなんですよ。独特の言語感覚を提供したいなどとは思ってなくて、なるべく顔のないものにしたい。ねっとりと湿度のあるものが少し苦手です。男っぽい江戸好みのドライ好み。お酒も何もかも辛口が好きです。あ、でも甘じょっぱいに勝るものはありません!(笑)」

メランジのジャージがラッフルの甘さをドライに

ラッフルをふんだんに配した、バンドカラーのボリュームブラウスとショーツのセットアップ。ライトグレーのジャージというカジュアルな素材だから、甘さもトゥーマッチにならない。シェルモチーフのロングネックレスからも、伸びやかでチルな海風が漂うかのよう。

ブラウス17万3800円、ショーツ11万2200円、ネックレス12万5400円(すべてドリス ヴァン ノッテン)ピアスは本人私物

“椎名林檎”という禁断の果実

無限に広がる興味は、タイやインド、アルゼンチンといった海外はもちろん、このところ北陸の文化にも及んでいる。

「カニ解禁とともに訪れる福井は最高です。蔵で寝かせた昆布を購入したのですが、コクの出方が違います。実用に耐え得るギリギリの美しいデザインが堪らないのはタケフのナイフや、金沢の竹俣勇壱のカトラリー。新潟からは八海山の大吟醸酒粕がそろそろ届く頃かと。北陸に縁があると経歴詐称したいくらい」

大胆に肌をのぞかせたフリルトップス

オートクチュールピースにインスパイアされたフリルトップスは、ペールピンクのやわらかな素材。フェミニンなデザインとコントラストを見せるベアバックが、上品な艶やかさを醸し出す。スカートのウエスト部分に施されたテーピングがパンキッシュなエッセンスに。

トップス67万2100 円、スカート44万1100円、イヤリング31万2400円(すべてメゾン マルジェラ/マルジェラ ジャパン クライアントサービス) ピアスは本人私物

北陸への思いを満たすなか、先日ささやかな 〝禁じ手〞 をおかしてしまったという。

「福井の黒龍・石田屋という最高のお酒をこともあろうか、お猪口に飲み残したまま寝てしまって。あくる朝どうしよう、もったいない……明るい時間にお酒をあおる罪悪感と料理酒への展開で逡巡して。結局すみません、鶏もも肉を漬けてしまいました。大変美味でした」

尽きぬ話題を伺うほどに、多面的な魅力に引き込まれる。〝椎名林檎〞という果実には酸いも甘いも享受せんとする、生きるパッションがほとばしっていた。

profile

椎名林檎 しいなりんご

作曲家/演出家。1978年生まれ、福岡市出身。1998年にシングル「幸福論」でデビュー。バンド「東京事変」も率いる。自作自演業はもとより、他の歌い手や、映画・舞台・TV・CMなどへの楽曲提供も精力的に行っている。2009年、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2016年、リオオリンピック・パラリンピック閉会式のフラッグ・ハンドオーバー・セレモニーにおいて演出/音楽監督を務め、国内外から高い評価を得た。2019年、アルバム『三毒史』、及びベストアルバム『ニュートンの林檎 ~初めてのベスト盤~』をリリース。2024年、アルバム『放生会』をリリース。2026年、新作アルバム『禁じ手』を3月11日にリリース。3月17日から5月28日まで、ライブ・ツアー「椎名林檎 党大会 令和八年列島巡回を開催。詳細は http://www.kronekodow.com

椎名林檎 New Album「禁じ手」

2026年3月11日(水)発売
ユニバーサル ミュージック
[初回限定盤] UPCH-29502 3960円
[通常盤] UPCH-20716 3300円


撮影=藤森星児 スタイリスト=青木千加子 ヘア&メイク=稲垣亮弐(maroon brand) 取材・文=古泉洋子
※2026年GLOW4月号より

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