1. トップ
  2. ゲスト声優を務めた二宮和也&谷口崇監督が振り返る、劇場版「おしり前マン」制作の裏側「僕たちだけのおしり前マンでいてほしかった儚さもある」

ゲスト声優を務めた二宮和也&谷口崇監督が振り返る、劇場版「おしり前マン」制作の裏側「僕たちだけのおしり前マンでいてほしかった儚さもある」

  • 2026.3.21

自身のYouTubeチャンネルの総再生回数は1億回を超え、テレビ番組やCM、音楽アーティストへのイラスト提供など、ジャンルを越えて活動を続けてきたアニメ・イラスト作家の谷口崇。そんな谷口の代表作であり、1枚の落書きから誕生したオリジナルヒーロー作品「おしり前マン」が『おしり前マン~復活のおしり前帝国~』(公開中)としてまさかの長編映画化。監督、脚本、作画、編集、声、歌までをすべて1人で手掛ける自主制作アニメで注目を集めてきた谷口だが、今回はなんとシークレット“おしりキャスト”として二宮和也を迎え、映画化に挑戦した。

【写真を見る】「おしり前マン」を1人で作り続けている谷口崇監督と映画公開後にゲスト声優として発表された二宮和也

ユニークな世界観はさらにスケールアップ。CGを用いたミュージカルシーンなど印象的な場面が随所に盛り込まれている。物語は、普通のサラリーマン・前尻(まえじり)を装いながら街の平和を守り続けてきたおしり前マンが、「おしり前帝国復活計画」と記された文書を発見したことから動き出す。そこにはかつて存在した「おしり前帝国」がおしりが後ろの人たちに滅ぼされていたことが書かれていた!復讐と帝国の復活に燃える謎のボスが裏で動き出していることを知ったおしり前マンは、かつての師「おしり前レジェンド(先代おしり前マン)」に修行を頼むが…。

どのような経緯で二宮がゲストになったのか?おしり前マンの誕生の秘密は?創作の裏話やアフレコ収録の思い出を谷口監督と二宮に振り返ってもらった。

「まさか本当に二宮さんに決まるとは思っていなかった」(谷口)

——映画化が決まった経緯を教えてください。

谷口「いままでショートアニメやWEB CM、企画モノなどを作ってきて、ちょうど昨年20周年を迎えました。そのタイミングで、本作のプロデューサーの紙谷(零)さんから長編制作のお話をいただいて、映画を作ることになりました」

落書きから誕生したオリジナルヒーロー作品「おしり前マン」が、まさかの長編映画化! [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇
落書きから誕生したオリジナルヒーロー作品「おしり前マン」が、まさかの長編映画化! [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇

——監督、脚本、作画、編集、声…とこれまですべて1人で手掛けててきましたが、どうして今回、ゲストを迎えることにしたのでしょうか。

谷口「4、5分のアニメを全部1人でやるというのがひとつのネタみたいなところではあったのですが、長編にするにあたり、やっぱりストーリー性は持たせたいと思って。78分間、1人で喋り続けると、観ている人たちがだんだんこれっておかしなことなんじゃないか?って気づき始めるかもしれないと思ったんです。僕と誰かがやりとりする映像の構成にしたいと思ったので、まずはその相手を選ぶことになりました」

——二宮さんにオファーをした理由を教えてください。

谷口「アイデア出しの際にポロッと二宮さんの名前を出したのですが、まさか本当に決まるとは思っていなかったので、『二宮さんに決まりました!』と聞いた時は、二宮さんの顔が思い浮かびながらも、そんなわけないと思ったくらいです。いまだに信じられないというか…」

 和やかな雰囲気の中でアフレコを振り返る谷口監督と二宮 撮影/木村篤史
和やかな雰囲気の中でアフレコを振り返る谷口監督と二宮 撮影/木村篤史

二宮「それ、ずっと言ってますよね(笑)」

谷口「『おしり前マン』はギャグ作品で、劇中のキャラクターが積極的にボケない世界観です。ボケてるのかボケてないのかわからない空気を持った人がいいなというので、二宮さんだ!と思って。『よにのちゃんねる』(二宮が出演しているYouTube番組)も観ていたので」

二宮「ありがとうございます!」

「おしり前マンは意外と大人たちよりも子どもたちのほうが刺さるんじゃないかな」(二宮)

——二宮さんは「おしり前マン」の存在はご存知でしたか?

二宮「YouTubeで観ていたので知っていました」

——出演の決め手を教えてください。

二宮「『おしり前マン』は、基本的に監督が1人でやるもの、1人で作っている世界観が支持されている大きな要因のひとつだと思っていたので、そこに他者が介在するというのがアリかナシなのかという意味を含めて、オファーにはとても驚きました。監督も言っていたように、いかに振りかぶらないでボケられるかはすごく重要だったので挑戦だと思ったし、あまり逸脱せずに、初めからそこにいたかのようにいられることを目標にしようと思っていました(笑)」

おしりが前にある、ごく普通のサラリーマン・前尻の正体はおしり前マンだった! [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇
おしりが前にある、ごく普通のサラリーマン・前尻の正体はおしり前マンだった! [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇

——谷口監督の印象を教えてください。

二宮「割と静かなタイプの方。見た目的にも尖った人だったら、『おしり前マン』のシュールな世界観を創っていることを理解できるけれど、こういう感じの人が考えているんだ、という怖さはあります。この感じで世の中に潜んでいるんだなって…(笑)」

——二宮さんが思う「おしり前マン」の魅力とは?

二宮「わかりやすさだと思います。大人も観て楽しいともちろん思えるのですが、一番響くというのかな。刺さるのは子どもたちだと思います。入り口と出口が違うというのか。ビジュアル先行で入ったとしてもおしり前マンのある種の説法みたいなものが、意外と大人たちよりも子どもたちのほうが刺さって、理解してくれるんじゃないかなと思うし、そこが魅力だと感じています」

「監督が演じるキャラクターと対話できる人でいようと心掛けていました」(二宮)

嵐として最後のコンサートツアーが開催中!デビュー30周年目を迎えた二宮和也 撮影/木村篤史
嵐として最後のコンサートツアーが開催中!デビュー30周年目を迎えた二宮和也 撮影/木村篤史

——おしりが体の前にあるおしり前マンはどのように生まれたのでしょうか?

谷口「趣味でSNSに落書きをアップしていて。最初はおしりが前にあるおじさんでした。そこそこ反応があったので、次はヒーローにしようと思い、じゃあ、ベルトとマントと手袋をつけて…という感じで誕生しました。そこにゲーム化やCMの話が来たという流れでいまに至ります」

二宮「おしりが前にあったらおもしろいかな?みたいな発想からの落書きってことですか?」

谷口「いや、そこまですら考えてなかったような…」

二宮「その落書きをブラッシュアップしていったんですね」

谷口「そうですね。最初からアニメ化しようと思って描いていたら、多分、膝関節は逆にしていなかったと思います(笑)」

二宮が演じるおしり前レジェンド(左) [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇
二宮が演じるおしり前レジェンド(左) [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇

二宮「後悔はあるんですね(笑)」

谷口「おしりが前にあるのと、膝が逆にあるのは関係ないので、膝を前にしてもよかったなって。映画にして3Dのシーンになった時に、どっちに曲がるんだ!みたいな話が出てきて」

二宮「確かにそうですね。あの形でずっと動いているから(笑)」

谷口「今回、サッカーのシーンがあって、3Dの担当の方が大変だったみたいです。ただ、後から気がついてもどうしようもないというか。そういうデザインなので」

「ボケているのか本当にちょっとおかしいのか、二宮さんの言い方が絶妙でした」(谷口)

——二宮さんが演じるおしり前レジェンドはどのように生まれたのでしょうか?

谷口「映画では、“おしり前マンとはなんだ!?”というのを描きたいと脚本段階で思っていました。おしり前マンが代々受け継がれているヒーローで、先代を登場させようと思ったんです」

——二宮さんが演じる上で工夫したことを教えてください。

二宮「監督がすべてのキャラクターを1人で演じていると、誰が喋っているのかわからなくなるシーンや時間が突如として現れるのではないかと思っていたので、対話できる人でいようと心掛けていました。敵対もですし、相対もそう。常に前尻さんの“目の前にいる人間でいよう”というのが今回のひとつのルールというか。観ている人が、いま、どっちが喋っているのかがわかれば、おのずと物語はわかってくる。伝わりやすくすることは自分のなかでルールとして持っていました」

——脚本を作る上でこだわったポイントはありますか?

原作、脚本、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督などに加え、二宮が演じたおしり前マンレジェンド以外のキャラクターの声を演じた谷口監督 撮影/木村篤史
原作、脚本、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督などに加え、二宮が演じたおしり前マンレジェンド以外のキャラクターの声を演じた谷口監督 撮影/木村篤史

谷口「二宮さんも言っていたように、掛け合いでどちらが喋っているのかがわかるようにという点はかなり気をつけました。シーンによっては会話している相手がフレームの外にいたり、喋っている人が後ろを向いていたりすることがあったので、極力そういう状況は作らないように心掛けました」

二宮「全部監督が喋っていたら、わからなくなる可能性はおおいにありますよね(笑)」

——二宮さんはおしり前レジェンドとして歌も披露していますが、アフレコで印象に残っていることはありますか?

二宮「監督が全部付き合ってくれたことです。声のお仕事って、だいたいスタッフさんが後ろ側にいるから、意思のやりとりみたいなものがテイク中に感じられることが少ない。でも監督はずっと同じブースにいたし、ニコニコしている監督を見て、自分のアプローチが間違ってないことを確かめられたのはよかったなと。過度に演出することなくやるほうが好みなんだろうなとか、いろいろなことがアフレコ中にわかるのですごく助かったし、印象にも残っています」

——二宮さんが演じるおしり前レジェンドはいかがでしたか?

谷口「壮大に前振りをして、サッとやめちゃうシーンの言い方が絶妙でした。一蹴するセリフの言い方も、サラッと当然のような言い方をして流すところを聞いて、これがお声がけしたいと思ったポイントだとニヤっとしちゃいました。ボケているのか本当にちょっとおかしいのか、みたいなところが、絶妙なセリフにも表れていて、改めてすごいなと思いました」

「2026年はデビュー30周年。胸ならず、おしりを張っていこうと思います(笑)」(二宮)

【写真を見る】「おしり前マン」を1人で作り続けている谷口崇監督と映画公開後にゲスト声優として発表された二宮和也 撮影/木村篤史
【写真を見る】「おしり前マン」を1人で作り続けている谷口崇監督と映画公開後にゲスト声優として発表された二宮和也 撮影/木村篤史

——二宮さんの出演については公開日当日までシークレットになっています。どんな反応があるのか、楽しみですよね(※本取材は1月中旬に実施)。

二宮「喜んでいただけたらうれしいなと思っています。驚く方もいらっしゃるでしょうし、僕が出演を決めたと聞いて『どうかしちゃったのかと思いました』みたいなことを宣伝の方にも言われたのですが(笑)。確かに、どうかしているんだとは思います。でも、間違った作品選びはしていないという自信はあります。おもしろいと思えるものを選びたいし、作品に対しての敬愛を持ちながら品よく演じたいと思っているので。まあフィルモグラフィだけで見たら『8番出口』の次がこれになるので…(笑)」

——並びが…とは思いましたが、すごく興味深くも感じました。

二宮「あくまで自分の琴線に触れたというか。おもしろいなと思ったものに出続けた結果がこれなんで(笑)。そこにはなんの後悔もなく、いい作品に携われたと思っています。自分ごとで恐縮ですが、2026年はデビュー30周年。監督が10年前に生まれた『おしり前マン』をご自身の20周年記念で映画化する。10、20、30となんかこう合わさる瞬間の第1弾ということで、胸ならず、おしりを張っていこうと思います(笑)」

谷口「アハハハ!」

——第1弾というお話が出たので、もし続編があるならこんなお話…と考えていることはありますか?おしり前マンでこんなことをしてみたいなどでも構いません。

谷口「今回はおしり前マンのルーツを描くことができたので、第2弾ではおしり前マンの仲間たちが登場するようなストーリーにしてみたいです。それぞれのイメージカラーも考えて…」

——割と具体的ですね(笑)。

二宮「次も監督に呼ばれるように頑張っていかなきゃなと思っています。監督みたいなタイプは、放っておくのが一番かなと思っていて。こっちがこれをみたい、あれをやりたいというところにアジャストするタイプではないのかなと。自分がこうやりたい、こうだったら自分はおもしろいという気持ちで動くタイプなので、放っておいても、自然とおもしろいものに辿り着いてくれる気がしています」

谷口「勉強になります」

二宮「もちろん相手はどう思うのかとかお客さんはどういう反応するのかとかいろいろ考えてはいるけれど、根幹はやっぱり自分。こういうタイプの方に声をかけてもらえること自体がとても光栄なこと。みんなで相談してこの人にお願いしよう!というオファーもうれしいけれど、主観で物事を捉えている人に声をかけてもらえるというのはすごくうれしい。だから次に呼ばれない可能性もあるっていう(笑)。二宮さんとはもう仕事できたからいいや、って言えちゃうタイプの人!」

おしり前マンとおしり前レジェンドの過去に因縁が… [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇
おしり前マンとおしり前レジェンドの過去に因縁が… [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇

谷口「なるほど」

——「もういいや」と言われても二宮さんは受け入れられる?

二宮「もちろん!思えるし、受け入れられます。だから次の時に呼んでもらえて初めて私は胸を張れる時が来るってわけです」

「自分1人ではできない達成感は映画でしか味わえないものだと思います」(谷口)

——監督、1人での作業ではない長編映画作りを経て感じたことを教えてください。

谷口「物語を考えている時と画を描いている時が一番楽しいのですが、普段は1人でやっているので、絵コンテや台本を作る必要がない」

二宮「共有する必要ないですからね」

谷口「世に出ない指示書や説明書作りは、1人の時とは決定的に違う作業だったし、今回は結構描き込んだ絵コンテにしたのでより大変でした。でも、自分1人ではできない何倍、何十倍、何百倍の壮大なストーリーや仕掛けができました。やっている時はつらかったけれど、あの快感、達成感というのは映画でしか味わえないものだと思います」

サブキャラクターの声もすべて谷口監督が演じた [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇
サブキャラクターの声もすべて谷口監督が演じた [c]2026映画「おしり前マン」/ ⾕⼝崇

——谷口監督の才能、挑戦に触れて刺激を受けたこと、チャレンジしたいことが生まれていたら教えてください。

二宮「おしり前マンの映画デビューが決まってうれしい反面、不特定多数の人間に知られていく儚さみたいなものも同時にあることも否定できなくて。僕たちだけのおしり前マンでいてほしかったみたいな(笑)。でも、映画でもちゃんと僕たちのおしり前マンになっているし、監督の優しさや熱量はすごく感じているので、こういった形で触れ合えたことは僕的にはすごくよかったです。おしり前マンが映画として世に出る手段のひとつとして使ってもらえたことはすごく光栄なこと。より広めたいと思うし、なにより、この先おしり前マンがどうなっていくのかが気になります。おしり前マンのこの先を気にしつつ、僕もおもしろいものを自ら探していきたいです」

取材・文/タナカシノブ

元記事で読む
の記事をもっとみる