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母と父のダブル介護の末に訪れた「もう会えない」という現実。親の死という喪失感との向き合い方、そして再生への道を綴った物語【書評】

  • 2026.3.18

【漫画】本編を読む

大好きな母と、どこか苦手意識を抱いていた父が、同じ時期に病を告げられるという過酷な現実。そして突然始まったダブル介護。通院の付き添い、食事の用意、身の回りの世話。やることは尽きず、心も体も休まる時間はほとんどない。それでも、弱っていく両親の姿をまっすぐに見つめ続けた様子を描いた『今日もまだお母さんに会いたい』(枇杷かな子/KADOKAWA)は、がんを宣告された両親との約2年間を描いたコミックエッセイだ。

本作が胸を打つのは、介護の苦労だけを描いていないところにある。家族ゆえにぶつかってしまう気持ちや、思わずきつい言葉を投げてしまう瞬間、そのあとに押し寄せる後悔までを包み隠さずに描いている。闘病中の母との場面は特に印象的だ。病が進んでもおしゃれを忘れない母。しかし病院へ行く準備に時間がかかり、介護に疲れていた著者はつい声を荒らげてしまう。大切に思っているのに、どうしても優しくなれないときがある。そうした苛立ちや葛藤をそのまま綴っているからこそ、物語はより深く心に届く。

一方で、一緒に食べたごはん、何気なく交わした会話、好きだったマンガの話といった、ささやかな日常のひとときもすくい取られており、それらはあとになってかけがえのない宝物に変わるのだ。約2年の介護が終わったあとに残ったのは「もう会えない」という現実。部屋の静けさ、送っても帰ってこないメッセージ、ふとした瞬間によみがえる声や表情。「親の死」は誰にも訪れるものだが、それをどう受け止め、残された者がどう生きていくかという問いに、本作は優しく答えてくれる。

大切な人を亡くし、心の置き所をなくしている人にとって、本作は一歩踏み出すための光になるだろう。読み終えたあと、きっとあなたも自分の大切な人に「大好きだよ」と伝えたくなるはずだ。

文=坪谷佳保

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