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代官山に「ディオール」の新名所が誕生。世界で最も星を持つ女性シェフのクチュールのような一皿とは?

  • 2026.3.10
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2026年2月12日、東京・代官山に「カフェ ディオール by アンヌ=ソフィー・ピック バンブー パビリオン」がオープン。壮麗な外観はパリの本店「30モンテーニュ」のファサードをゴールドに染め上げたバンブー(竹)で再解釈している。

カフェのメニューを監修したのは世界でもっとも多くの星を持つ女性シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック。来日したシェフに「ディオール」の魅力や香りに重きを置いた独自の料理哲学、日本愛、現代女性へのエールを聞いた。ここでしか食べられない代官山の限定メニューや、確実に楽しみたい方は予約方法もチェック。

Photo SHINTARO OKI

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アトリエを3回訪れ、理解を深めたメゾンのスピリット

――はじめに、ピックさんが思う「ディオール」の魅力を教えてください

「ディオール」の世界というのは、永遠のフェミニティだと思います。ムッシュ ディオールが10年間クリエイションを続け、アイコニックなクリエイションもたくさん生み出している。それが今も世界で生き続け、多くのデザイナーたちの無限のインスピレーションの源となっているのは、素晴らしいことです。

「カフェ ディオール」でメニューを提供するにあたって、「ディオール」のディテールを理解したいと思い、3回ほどアトリエに足を運びました。生地見本やムッシュ ディオールの手書きのメモなどのアーカイブとその歴史に没頭しました。「ディオール」のアトリエで長年お仕事をされている女性にいろいろな説明をしていただいたんです。

ムッシュ ディオールとはいったいどういう人物だったのか。何が好きだったのか。どんな仕事ぶりだったのか。もちろんもともと「ディオール」のことは知っていましたが、アトリエを訪れたことで多くの発見を得て、「ディオール」の精神や哲学、世界観などへの理解が深まり、大きな影響を受けました。

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――料理人として特に共感したのはどんな部分ですか?

お花やお庭に造詣が深いところですね。私の料理も野菜や植物が大きなインスピレーションの源になっていて、栽培されたものを使うこともあれば、野生のものを摘んでくることもある。日本でも山菜を食べるでしょう? それと同じです。私と日本の共通点でもあり、「ディオール」の世界観とも繋がっています。

それからビジュアル、そしてフェミニティも私が感じた共通点。私たちの間には共通しているところや自然に重なり合う一貫性が多くあって、非常によい調和が生まれていると思います。

写真/カフェの店内を飾るブロックフラワーのオブジェはアーティストの東 信さんが制作。クリスチャン ディオールが幼少期を過ごしたヴァランスの庭と日本に咲く生花をひとつひとつレジンで固めている。天井から降り注ぐ紙の花のインスタレーションは切り絵アーティストの柴田あゆみさんの作品だ。

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――ピックさんも子どもの頃はファッションデザイナーになるのが夢だったそうですね

はい。みんなそうだと思いますが、20代の頃はファッションにものすごく興味がありました。でも、あまり絵を描くのがうまくなかったので、キャリアとしてはあきらめたんですけれど(笑)。

クチュールから今もたくさんのインスピレーションを受けていて、そのビジュアルのコンセプトをデザートに落とし込むこともあります。たとえば私のシグネチャーデザートの「ミルフィーユブラン」はドレスのプリーツからインスピレーションを得たものなんですよ。

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シェフの料理哲学を体現する、奥行きのある香りの世界

――料理でもっとも大切にしていることは何ですか?

アロマ(香り)です。私の料理哲学は「インプレグネーション(浸透)」。さまざまなアロマを浸透させ構築することが、料理を作るうえでの最初のステップになります。ひと匙め、2匙め、3匙めで同じではなく異なる香りが楽しめる、そんなひと品に仕上げるようにしています。

香水でも、トップノートとか、ミドルノート、ラストノートがあるのと一緒です。季節の野菜や植物を使うこともとても大事。そのアロマが他のものと組み合わせたときに生きてくるんです。組み合わせ、そして素材そのものの純粋な香りがとても大事です。

――「カフェ ディオール」では、どんな表現を心がけていますか?

洗練された「ディオール」のイメージにふさわしいお皿を表現すると同時に自身の料理のスタイルに忠実であることを心がけたいと思いました。レストランではなくカフェの範囲でのお料理やデザートではありますが、この素晴らしい雰囲気、環境のなか、たくさんのインスピレーションを受け、「ディオール」らしい繊細なお食事を召し上がっていただきたいと思いました。

こだわったのは、味わい、テクスチャー、そして「ディオール」らしさです。繊細で、フェミニンで、組み合わせてあってもひとつひとつの味が完璧にわかる。やさしいけれど、はっきりした主張もするし、率直さがあるお料理は、私自身が目指すところでもあります。

©LARA GILIBERTO

ガストロノミーもクチュールもビジュアルがとても大事

ひと目見てすぐに「ディオールのフード」とわかることも大切。今日のガストロノミーとクチュールには共通点があって、ビジュアルがとても大事なんです。特にデザートづくりにおいては、型をオーダーメイドで作るなどして、「カナージュ」「バラ」「トワル ドゥ ジュイ」をはじめとするディオールのさまざまなコードを生かして表現しました。この店舗では、デザート2品とお料理1品を代官山限定として新たにメニューに加えています。

写真/代官山限定「ル カナージュ シュクレ」。バニラが香る「カナージュ」模様の日本酒のムースと、日本酒とみりんを使ったリ・オ・レ、いちごと柚子とジンジャーのコンフィ、香ばしいお米のシュトロイゼルなどがやわらかく調和。フレッシュないちごとコンフィ、日本酒とみりんと酒粕のジュレ、砂糖菓子とパンナコッタの花で華やかに。¥5,000

©LARA GILIBERTO

日本の食材に見つけた‟明るさ”と‟暗さ”

――日本のどんなところに惹かれますか?

一番惹かれるのは、文化です。日々の流れはものすごくスピーディだけれど、何かをゆっくりと堪能する時間も流れている。瞑想とまで行かないけれど、何かを愛でる時間の余裕があるところにとても惹かれます。お庭もお花も愛でるでしょう? そんな風に日本ではすべてが愛でることの対象になっているような気がします。

抹茶をはじめ、日本の食材にもすごく影響を受けています。たとえば苦み。フランスではあまり苦味を取り入れることはないのですが、私はすごく好きなんですよね。お料理に奥深さを与えてくれる。かすかな苦みというものを大切にしています。

また、日本の食材には、明るいところと暗いところの両方があります。たとえば、日本のウイスキーは味わいも香りもすごく豊かでありつつ、ヨード系のおもしろい香りが感じられたり、ウッディな香りが入っていたりする。

ほうじ茶も、味わいや香りのバリエーションがすごく広くて豊かなんですよね。それをグローバルな私の料理哲学に落とし込んで、いろいろ遊ぶのが好きなんです。

なかでもお茶は大好き。日本のDNAでもあると思っています。この「カフェ ディオール」でも、おいしい玉露や煎茶をお出ししますし、ヴァランスにある私のレストランでは、オリジナルの日本茶のブレンドもつくっています。それをお料理に取り入れたり、デザートに取り入れたり。おいしいほうじ茶とコーヒーのブレンドもお出ししています。

写真/代官山限定「ル トレフル」。抹茶とエストラゴンのムースの中に、柚子のコンフィと、玄米茶とエストラゴンのビスキュイを閉じ込め、ピスタチオの食感が心地よいタルト生地に重ねた、香り豊かなひと品。デザインは、新クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソン氏へのオマージュ。¥5,000

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写真/代官山限定「ル パン クジュ マン」。韃靼そば茶を加えた香り豊かなパンに、マリネしたマグロとバジルペースト、旬の野菜を美しくサンドし、「パン・バニャ」(ニース風サラダを間にはさんだ南仏のサンドイッチ)を再解釈。ムッシュ ディオールがヴァカンスを過ごした南仏のシャトー・ド・ラ・コル・ノワールから着想。¥5,000。

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自分の意思で決めたシェフへの道

――ところで、ピックさんはフランスを代表する老舗レストランのご出身ですが、ビジネスを学ばれてから料理の世界に入られたそうですね

そうです。18歳でバカロレア(高校卒業資格)を取って、まだ人生で何をやるか決めていなくて、どうしたらいいかわからなかったんですね。実家はヴァランスのレストラン「メゾン ピック」ですが、料理の世界に行く決意もまだできていなくて、とりあえず勉強しておこうと。大学でビジネスを学びました。授業の一環でモエ・シャンドンの研修を受けたり、日本にも来たんですよ。

卒業後の進路を考えようとした際、研修担当の先生から「なぜ新しい会社に入ろうとしているの? お父さんのレストランや伝統を探求してみたらどうでしょうか?」と言われてはっとしたんです。

思春期の頃って家族から逃げたい時期があるんですよね。私も父から「料理しないの?」って聞かれるたびに「ノン! ノン!」って言っていました。でも、親元を離れて学んだことで私自身の選択として「父のもとで料理を学びたい」と思うことができた。私にとってこの「自分の意思で決めた」ということが、とても大事なことでした。

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自分らしくあることが活躍の鍵!

――あなたは今、世界でもっとも多くの星を持つ女性シェフです。女性が社会で活躍するうえでのアドバイスをいただけますか?

どんな状況であっても自分らしくあること。社会の中で女性が自分をアピールするのは難しく、すごくエネルギーが必要です。それでも、女性らしいアプローチというものはあります。

私の夫は「女性ってすごく頑張り屋だよね」と言います。とにかく頑張って、最後まで徹底してやり抜くのが女性だと。ときにそれは合理的じゃないけれどね、と。なかなかいい分析でしょう(笑)?

とにかく女性たちには、自信を持って! 自分を信じて! と言いたいです。あとは、直観を養うことも大切。本当にそう思います。

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――最後に「ディオール バンブー パビリオン」についての思いをお聞かせください

ここは本当にポエティックで素晴らしい場所です。お花や庭園、和紙をはじめ、日本のさまざまなアーティストとのコラボレーションで出来上がっていて、すべてが繊細で素晴らしい。こうして日本の「ディオール」で私の料理やデザートを提供できることを、心から誇りに思っています。

そもそも私にとっては日本で自分の料理を出せたことが大きな誇り。なぜならそれは、私の長年の夢であり、最終的な目標だったから! 今までの努力に対して与えらえたご褒美のようなものだと思っています。

この空間がみなさんにとって居心地がよく、また来たいと思えるような場所になることを心から願っています。

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来店は公式ウェブサイトでの予約がおすすめ

早くも人気スポットとなっている「カフェ ディオール」。自分へのご褒美や大切な人とシェフのメニューを楽しみたいという方は、公式ウェブサイトからの予約がおすすめだ。代官山限定のメニュー以外にも美しいセイボリーやスイーツがアルコールを含むドリンクと共に楽しめる。テイクアウトできるチョコレートなどはギフトにもぴったり。暖かい季節はテラス席もオープンする。

カフェ ディオール by アンヌ=ソフィー・ピック バンブー パビリオン

住所/東京都渋谷区猿楽町8-1
電話番号/03-6455-0713
営業時間/11:00~19:00
無休

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Anne-Sophie Pic(アンヌ=ソフィー・ピック)

1969年、フランス・ヴァランス生まれ。曾祖母から続くレストランを営む家で育つ。大学でビジネスを学んだ後、ヴァランスに戻って父のレストラン「メゾン・ピック」で働き始めるが、わずか3カ月で父が急逝。1997年、それまで厨房を指揮していた兄に代わり、厨房に入って料理を一から学び、夫とともに「メゾン・ピック」を引き継ぐ。

2007年、父の死後に落としていたミシュランの3つ星を、再び獲得。フランスのみならずスイス、アラブ首長国連邦、タイ、香港などにもレストランを展開し、世界で最も多くミシュランの星を持つ女性シェフに(2026年現在)。

「カフェ ディオール by アンヌ=ソフィー・ピック バンブー パビリオン」に続き、2026年は大阪での4号店オープンも予定している。

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