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2000年前の「インドの旅人が残した落書き」をエジプトで発見

  • 2026.3.9
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

古代エジプトの王たちが眠る「王家の谷」。

かの有名なツタンカーメンをはじめとするファラオの墓が並ぶこの場所は、考古学の聖地として知られています。

そんな中、この神聖な墓地の壁に、2000年前のインドからの旅行者が残した“落書き”が発見されたのです。

スイス・ローザンヌ大学(University of Lausanne)は最新調査で、王家の谷の複数の墓から、古代インドの言語による碑文を数十点確認。

そして、そこに残された落書きは驚くほどシンプルな言葉でした。

「チカイ・コッランがここに来て見た」

2000年前、インドからエジプトを訪れた旅人は、王たちの墓を見学し、そして自分が来た証を壁に刻んでいったようです。

目次

  • 古代エジプトの墓で見つかった「インド語の落書き」
  • 「チカイ・コッランがここに来て見た」

古代エジプトの墓で見つかった「インド語の落書き」

今回の研究では、エジプト南部の王家の谷にある6つの墓から、約30点の古代インド語の碑文が確認されました。

王家の谷は、紀元前16世紀から11世紀にかけて造営され、現在では世界的な考古学遺跡として知られています。

ところが西暦1世紀から3世紀ごろ、この場所はすでに古代遺跡となっており、観光地として各地から訪れる人々がいたと考えられています。

【実際に発見された古代インド人による落書きの画像がこちら

研究に参加したローザンヌ大学のインゴ・シュトラウフ教授は、当時の王家の谷について「現在と同じように観光地だった」と評しています。

訪問者たちは墓の壁に名前やメッセージを刻み、自分が訪れた証を残していきました。

これは古代遺跡では珍しい行動ではなく、ギリシャ語やラテン語などの落書きも数多く見つかっています。

今回の研究で新たに注目されたのは、その中にインドの言語で書かれたものが含まれていたことです。

碑文は3つのインド系言語で書かれており、その半数は古タミル語でした。

これらの碑文は長い間存在が知られていたものの、言語が特定されていなかったため、内容を解読することができませんでした。

研究チームは碑文を詳しく分析し、西暦1〜3世紀のものと特定しました。

これはエジプトがローマ帝国の属州だった時代にあたります。

「チカイ・コッランがここに来て見た」

碑文の中でも特に目立つのが、「チカイ・コッラン(Cikai Korran)」という人物の署名です。

この人物は、5つの異なる墓に合計8つの碑文を残していました。

その内容は驚くほど単純です。

古タミル語で書かれていた文章は、次のように訳されます。

「チカイ・コッランがここに来て見た」

いわば、2000年前の「ここに来た記念」です。

さらに興味深いのは、彼が非常に高い場所に文字を書いていることです。

例えばラムセス9世の墓では、入口から約5〜6メートル上の位置に碑文が刻まれていました。

研究者のシャルロット・シュミット氏によると、彼がどうやってそこまで登ったのかは分かっていないとのことです。

また、タウセルトとセトナクトの墓では、入口付近に彼の署名が残されていました。

この墓では他の落書きが見つかっていないため、当時すでに内部が閉鎖されていた可能性があります。

それでもコッランは墓の入口を見つけ、自分の名前を刻んでいきました。

彼がどのような人物だったのかは分かっていません。

言語から、南インド出身である可能性が高いと考えられています。研究者は、彼が商人、傭兵、あるいは地域の首長だった可能性を指摘しています。

2000年前の世界は思ったより「つながっていた」

今回の発見は、古代世界の人々の移動範囲が、私たちが想像するよりずっと広かったことを示しています。

ローマ時代には、インドと地中海世界の間で活発な交易が行われていました。紅海沿岸の港ベレニケやミオス・ホルモスには、インド商人が訪れていた記録も残っています。

今回の碑文は、そうした交流が実際に人の移動として存在していたことを示す、非常に具体的な証拠です。

研究者氏は、この発見について次のように述べています。

「これは、タミル人や西インドの商人が実際にエジプトを訪れていた証拠です。これほどの規模で確認されたのは初めてです」

さらに研究者たちは、今後エジプトの神殿など別の遺跡でも、インド語の碑文が見つかる可能性があると考えています。

2000年前の旅人が残した「オレはここに来たぜ」という、ささやかな一言。

その落書きは、古代世界が想像以上に相互につながっていたことを示唆すると同時に、落書きの発想が現代と大して変わっていないことを指し示しています。

参考文献

‘Cikai Korran came here and saw’: Visitors from India graffitied dozens of Egyptian tombs 2,000 years ago
https://www.livescience.com/archaeology/ancient-egyptians/cikai-korran-came-here-and-saw-visitors-from-india-graffitied-dozens-of-egyptian-tombs-2-000-years-ago

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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