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【注目アーティストfile.33】日常のなかの、さりげないものに宿る「記憶」を愛おしむ――シルヴィ・オーヴレ

  • 2026.2.27
KATSUO TAKASHIMA[BOW PLUS KYOTO]

もっと気軽にアートを生活に取り入れてほしい――そんな思いで企画したアート作品をELLE SHOPで販売中! 今回は京都にある気鋭のアートギャラリー、艸居 ディレクターの藤田篤実さんとタッグを組み、アーティストシルヴィ・オーヴレさんに注目。日常を新たな視点で作品に昇華させるアーティストの創造の裏側と、表現へと託す思いをインタビューした。作品の詳細・購入はELLE SHOPへ。

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艸居 ディレクター藤田篤実さん KATSUO TAKASHIMA[BOW PLUS KYOTO]

「シルヴィは日常で目に留まったものから作品を組み立てていく点がユニークな作家です。おもしろい題材を扱っているけれど、ちょっと悲しいとか、どこかグロテスクというような、誰もが心のなかにある側面を、ポジティブに扱っているところも魅力です。今回はペーパー素材の作品をご紹介していますが、陶芸、ジュエリー、版画と、一貫したコンセプトで表現を広げているところも興味深いです。また人間として、力強く生きる人生観にも共感するところがあります。日本にもシルヴィのように子育てをしながらキャリアを積んでいける女性が増えたらいいなと思います」

Videographer : AZUSA TODOROKI[BOW PLUS KYOTO]Video Editor : YUMI KONDO

ユニークなパリジェンヌ視点で、新たな価値を表現

「インスピレーション源は日常生活そのものです。あらゆるところに目を向けています。日々たくさんのことが起きていますから」。こう語るシルヴィ・オーヴレさん。多くの人が見過ごしてしまう、日常のなかのささやかな美しさ、愛おしさに目を向け、さまざまな手法を通してその価値を表現している。

「Untitled」( サイズH395×W304×D22mm、2026) 作品情報詳細入る

手にしていたいくつかのものを見せながら話す。「これは100円ショップにあるような普通のピンだけれど、この色も、この精巧な形も大好き。そしてこれは道に落ちていた青いガラスの破片。でも見て、この色! とても鮮やかでしょう。こうしたとりとめのない小さな存在に、もっと注目すべきだと思うのです。これは少しだけ立ち止まってゆっくり見れば、誰にでも見つけられるものですよ」

“物”にとても愛着がある、という。「蚤の市や美術館に行くのも大好きで、そんな場に身を置いていると、自分自身がたくさんの画像を取り込む大きなコンピュータのような気分になります。それらを全て混ぜ合わせて、また別の形にするんです」。アトリエはパリの南部、ヴァンヴ蚤の市のすぐ近く。「制作中は音楽を聴いています。クラシックからエレクトロニックまで何でも。そのときの気分や、作っている作品次第で、とても穏やかなものが必要なときもあれば、エネルギーが必要なときもあるから」

自然光の入る心地よいパリのアトリエ Annik Wetter



日本のアニメを見て育った幼少期の記憶

インタビューはちょうど京都にある艸居で開催されている個展に合わせた来日中に行われた。艸居の展覧会に併せて、2、3年に一度くらいの頻度で来日。「日本人と一緒に働くのが好き。来るときはできるだけ長く滞在しています。(SOKYO ATSYUMIの個展のために)信楽のレジデンスに3ヶ月滞在し、 現地の人たちと一緒に制作しましたが、それは本当に楽しかったですし、気に入っています。私と同世代、70〜80年代生まれのフランス人は、子供の頃、日本のアニメをたくさん見て育ったんです。だから私にとって、それは人生の一部のようなもの。大人になってから実際に日本に来て、子供の頃に見ていたものとの違いを知ったのは、とても衝撃的な体験でした」

この日本との関わり合いは、アーティストとしての活動にも強く影響を受けているという。「アメリカで陶芸を学んだのですが、そこで陶芸における日本の重要性を改めて認識し、“日本に行って制作しなきゃ。日本の陶芸のプロセスを体験しなくては”と思いました」

艸居で2月26日まで開催したシルヴィ・オーヴレ展「ペーパーカット」会場にて KATSUO TAKASHIMA[BOW PLUS KYOTO]

ドローイングはとても自由であるとともに、とても覚悟のいる作業

今回、ELLE SHOPで紹介するのは、小さなドローイング作品。「水彩紙に描いた小さなドローイングは普段、切り絵のようにして仮面など他の作品のパーツにすることもありますが、今回はそのままの形で出すことにしました。ドローイングは、とてもダイレクトなところが魅力。ドローイングを描くのには窯もスタジオも必要なく、紙と絵の具さえあればいいのです。その自由さはとても素晴らしいこと。旅をしているときでも、どこにいるときでも描けるのです」

一方で、とても挑戦的な作業でもある、という。「ドローイングというのは、自分の内面を他人にさらけ出さなければならないから。魂が宿るようなものを作りたいのであれば、非常に正直になり、自分が感じたままに表現しなければならない。それは自分の恐怖や間違いと向き合わなければならないことでもあり、簡単ではありません。でも、それが本当に自分自身のものと言える作品を作る唯一の方法ですから。ドローイングを描いているときは、とても集中しています。ほとんど瞑想に近い状態ですね」

見過ごしそうなささやかなものに宿る価値に気づいてほしい

作品を通して伝えたいことは?と問うとこう答えた。「私の作品を見て、人々が笑顔になったり幸せな気分になったりしてくれるのは知っています。実は活動を始めたばかりの頃は、それが少し嫌だったんです。“知的なアーティスト”でありたいと思っていたから(笑)。でも、作品が誰かを笑顔にしたり幸せにしたりできるなら、それはとても良いことだと感じるようになりました。ただそれを目的にしているわけでもありません。私はとてもわがままだから、自分の作りたいものを作っているだけ」

シルヴィの好奇心を感じさせる、パリのアトリエ風景 Annik Wetter

そして、少し考えて言葉を添えた。「伝えたいことがあるとすれば、それはどこにでもある本当に小さなもののなかにある“軽やかさ”や“美しさ”です。例えば車のフロントにある小さなお守りのようなもの、あるいは道端に落ちているような小さなもの。そういったとても小さなものやささやかな思い出を大切にすることは、とても重要だと思うのです。そういったものがどれほど美しいかを知ってほしい。そこから多くのことが生まれるし、自分にとって大きな意味をもつこともある。ただのプラスチックの破片ではないのです。私の作品は過去や思い出、そして感情、さらには捨てられたものと深く関わっています。 皆さんに毎日使う道具についてもっと考え、それらを大切にし、それらがどれほどの芸術性を備えているかを理解してほしい。私はエコ・アーティストでも政治的なアーティストでもありませんが、結局のところ、世の中のすべては環境にも政治にも関わっているのです。私はそれを言葉に出して言ったりはしないけれど、作品を通して感じてもらえたらと思います」

「Untitled」( サイズH395×W304×D22mm、2026) 作品情報詳細入る

Sylvie Auvray
PROFILE 1974年パリ生まれ。絵画から版画、ファッション、彫刻、陶芸など多様な表現方法で制作を行う。1993年モンペリエ美術学校(フランス)卒業、1996年シティアンドギルドオブロンドンアートスクール(イギリス)絵画専門卒業。個展は「ペーパーカット」艸居(2026年)、「マーガレット」SOKYO ATSUMI、東京 (2022年) SOKYO ATSUMI 、「野獣と箒」(2021年)、グループ展は、シルヴィ・オーヴレ+梅津庸一「シルヴィとうめつ。おばけやしき?」(2024年)。主なコレクションに、Collection du Centre National des Arts Plastiques、パリ市立近代美術館、総合文化センター「MECA」など。

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