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100万円で株を購入→1万円分の株主優待を受け取り…“得している”はずが?家計を圧迫する“想定外のリスク”【お金のプロが解説】

  • 2026.3.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

株主優待を楽しみに投資を始め、楽しんでいる方も多いかもしれません。

「お得」なイメージが強い優待ですが、実はその魅力の裏で、家計を圧迫するリスクが潜んでいることをご存じでしょうか。目に見えるメリットに満足するあまり、株価の変動や思わぬ支出増といった「見えにくい損」を見落としているケースは少なくありません。

では、なぜ優待投資で家計が苦しくなってしまうのか。投資のプロである石坂貴史さんに、優待との正しい付き合い方と、損をしないための判断基準について伺いました。

「得しているつもり」が危険?優待投資で家計が苦しくなる理由

---株主優待は「お得」というイメージが強いですが、なぜ家計が苦しくなってしまうのでしょうか?

石坂貴史さん:

「株主優待で家計が苦しくなる理由は、『得しているつもり』と『実際の収支』のズレにあります。優待は目に見えるメリットがあるため満足感を得やすい一方で、株価の変動や支出の増加といった見えにくい部分が軽視されやすい点が特徴です。

たとえば、100万円で株を購入し、年間1万円分の優待を受け取れるケースを考えてみましょう。一見すると利回り1%でお得に見えますが、株価が10%下がれば10万円の損失です。優待の1万円では補えず、結果として9万円のマイナスです。このように、優待だけで判断すると全体の損益を見誤る可能性があります。

さらに、生活習慣の変化も大きな影響を与えます。ここは誤解が出やすいため、整理して考える必要があります。

支出が減るケースとしては、普段1,000円で自炊している人が、2,000円の外食を優待で全額まかなえた場合です。この場合、現金の支出は0円となり、結果的に1,000円分の節約になります。

一方で、支出が増えるケースです。たとえば、優待を使うために外食に行き、追加注文や交通費などで合計1,500円かかった場合、本来1,000円で済んでいた生活より支出は増えています。また、『優待があるから』という理由で外食の回数自体が増えれば、年間で見ると支出はさらに膨らみます。

このように、優待そのものが問題なのではなく、『優待があることで行動が変わる』点が家計を圧迫する原因です。優待をきっかけに支出が増えていないかを確認することが大切です。」

利回りだけで選ぶのはNG!優待が「判断」を鈍らせるワナ

---優待利回りの高さに惹かれて銘柄を選んでしまうことも多いですが、注意すべき点はありますか?

石坂貴史さん:

「優待利回りだけで銘柄を選ぶと、本来確認すべき企業の安定性や収益力を見落とすことになります。投資の基本は、企業が安定して利益を出せるかどうかを見ることですが、優待に注目しすぎるとこの視点が弱くなります。

利回り6%の銘柄に100万円投資した場合、年間6万円相当の優待や配当が期待できます。しかし、企業の業績が悪化して株価が15%下がると15万円の損失です。

差し引きすると9万円のマイナスになります。このように、利回りの高さだけでは判断できません。優待の使い方にも注意が必要です。

たとえば、1,000円の買い物で使える500円券がある場合、本来その商品を買う予定がなければ、

・買わない場合:支出0円
・優待を使って購入:支出500円

となります。

この場合、『500円得した』のではなく、『500円の支出が新たに発生した』と考える必要があります。

実際には、優待を使うことをきっかけに追加の買い物をしたり、交通費が発生したりすることも多く、結果として支出が増えやすい点にも注意しなければなりません。

また、優待目的で銘柄を選ぶと資産の偏りも生じます。外食優待を重視して外食企業に集中投資すると、その業界の業績が悪化した際にまとめて株価が下がるリスクがあります。本来は複数の分野に分けて投資することでリスクを抑えるべきですが、それが難しくなります。

『優待があるから売らない』という判断も損失拡大の原因です。たとえば、100万円で購入した株が80万円まで下がっても優待を理由に保有を続けると、回復しない場合は損失が固定化します。優待が冷静な判断を妨げる点は見落とされがちです。」

もう失敗しない!優待投資の誤算を防ぐ「客観的な視点」

---優待投資で損をしないために、私たちはどのような対策をとるべきでしょうか?

石坂貴史さん:

「優待投資による誤算を防ぐためには、まず『感覚ではなく数字で確認すること』が重要です。

たとえば、ある銘柄で年間5,000円の優待を受け取っている一方で、含み損が3万円ある場合、優待6年分以上の損失が出ている計算になります。このように具体的な数字で比較すると、その銘柄を保有し続ける意味を客観的に判断できます。

次に、『優待を実際に使えているか』を確認しましょう。

年間1万円分の優待をもらっていても、実際に使っているのが6,000円であれば、残り4,000円は価値がないのと同じです。この時点で利回りは想定より低くなっています。

また、生活面でのルールを決めることも効果的です。『優待があっても外食回数は増やさない』『必要な支出にのみ使う』といった基準を設けることで、優待による無駄な支出を防ぐことができます。

『優待がなくても持ちたいか』という視点で銘柄を見直すことも大切です。優待がなくなっても保有したいと思える企業であれば問題ありませんが、そうでなければ優待だけが保有理由になっている可能性があります。

まずは保有している銘柄の中から一つだけでも、この基準で見直してみることが現実的な第一歩です。小さな見直しでも積み重ねることで、家計への影響を大きく改善することができます。」

「お得」の裏側を正しく理解し、家計を守る投資を

株主優待は魅力的ですが、それが家計を圧迫していては元も子もありません。「お得」という言葉に隠された数字のカラクリを理解することは、投資家としての一歩です。

大切なのは、感覚で判断せず、含み損や実際の使用頻度を「数字」で冷静に見ること。そして、「優待がなくてもこの会社を持ち続けたいか?」と自分に問いかけてみることです。まずは一つの銘柄からでも、この視点で見直してみてください。小さな確認の積み重ねが、将来の家計と資産を確実に守る力になるはずです。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、日本証券アナリスト協会認定資産形成コンサルタント、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」的6つの分野が専門。各種メディアにて毎朝金・プラチナ相場の解説を担当。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポート。