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夫「後頭部が痛いだけ」妻「なんか様子がおかしくて」違和感が命を救った…元救急隊員が語る“軽症に見える”現場の落とし穴

  • 2026.5.12
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

救急の現場では、分かりやすく重そうな症状の患者ばかりが来るわけではありません。

会話もできて、痛みも強くない。
それでも、なぜか安心しきれない。

そんな“引っかかる”現場があります。

このときの要請も、入口は「後頭部が少し痛い」という訴えでした。

妻からの救急要請。「後頭部が痛いだけなんです」

30〜40代くらいの妻からの救急要請でした。

到着すると、ご主人は受け答えもできていて、見た目に強い苦悶があるわけでもありません。

訴えは後頭部の痛み。

ただ、痛みの強さ自体はそれほどではない様子でした。本人も「少し気になるくらい」と話し、持病もないということでした。

まずは状態確認。心電図モニターも含めて丁寧に見る

現場では、まず淡々と確認を進めます。

  • 意識の状態
  • 呼吸の様子
  • 脈拍
  • 血圧
  • 体温
  • 必要に応じて心電図モニターの装着(不整脈などの確認)

このとき、血圧が高めでした。

年齢的には若く、持病もない。

それでも数字としては高い。ここが最初の引っかかりでした。

頭痛は軽そうに見えても、バイタルに小さなズレが出ることがあります。

だからこそ、丁寧な確認が大切になります。

妻の「普段と違う」が、もう一つのヒントになった

もう一つ気になったのが、奥さんの言葉です。

「普段は本当に元気なんです」「でも今日は、なんか様子がおかしくて…」

本人が「大丈夫」と言っていても、身近で見ている家族のほうが小さな変化に気づくことがあります。

救急要請では、症状の説明だけでなく、家族の証言がヒントになる場面があります。この現場も、まさにそうでした。

“軽い頭痛”として片づけず、病院へ搬送した

もちろん、頭痛の多くが重い病気につながるわけではありません。

ただ、頭痛は軽症から重症まで幅が広い症状でもあります。

この現場で「軽く見ていいとは言い切れない」と感じたポイントは、次の重なりでした。

  • 痛みは強くないが、後頭部の頭痛という訴え
  • 血圧が高めというバイタルの変化
  • 本人は話せるが、全体として残る違和感
  • 妻の「普段と様子が違う」という証言

そこで私たちは病院へ搬送し、状況を引き継ぎました。

搬送先での診断結果は、くも膜下出血でした。

もしあのとき迷っていたら、搬送までに症状が悪化していたかもしれません。

そう考えると、あの判断は間違っていなかったのだと感じました。その感覚が、次の現場の自信にもつながっていきます。

学び:「若い」「話せる」「持病がない」だけでは安心できない

今回の現場で強く残ったのはここです。

  • 若い
  • 受け答えできる
  • 持病がない

この3つがそろうと、つい安心しそうになります。

でも、重症はその外側から来ることがあります。

救急の現場は、違和感の積み重ねを言語化して共有する仕事でもあります。

小さなズレを丁寧に扱うことが、結果的に安全につながります。

今回の経験で、その大切さを改めて感じました。

その場の判断が、私たちの都合ではなく、傷病者にとってより良い選択になっているか。
結局そこに戻るのかもしれません。

本記事は著者の救急隊員としての経験に基づく一例です。頭痛の症状や原因は人によって異なります。普段と違う頭痛や違和感がある場合は、決して自己判断せず、速やかに医療機関を受診するか、救急安心センター事業(#7119)などへ相談してください。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。      


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