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『手取りが増える人』『減る人』には“分かれ目”があった。年金額の引き上げで、必ず確認すべき“3つの通知書”【お金のプロが解説】

  • 2026.4.3
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「年金が増えたはずなのに、なんだか生活が楽にならない」そう感じている方は少なくありません。

年金引き上げのニュースは明るい話題ですが、一方で「額面は増えたはずなのに、実際の手取りは…x」とモヤモヤしている方も多いのではないでしょうか。

実は、年金のまわりには税金や保険料など、いくつもの制度が複雑に絡み合っています。なぜ私たちの手取りは思うように増えないのか、そして秋になると振込額が減るケースがあるのはなぜなのか。専門家の見解をもとに、その仕組みと私たちが取るべき家計対策を解説します。

年金増額でも「手取り」が増えない本当の理由

---年金が引き上げられたのに、なぜ生活が楽にならないのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「『年金が増えたはずなのに、なんだか生活が楽にならない』のように感じている方は、決して少なくありません。それもそのはず、年金のまわりには税金や保険料など、いくつもの制度が複雑に絡み合っているからです。

2026年度の年金は基礎年金が前年度比1.9%、厚生年金が2.0%引き上げられました。ところが年金からは所得税・住民税・介護保険料・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)が毎回天引きされています。そして年金額の改定と、これら天引き額の改定はそれぞれ別のタイミング・別のルールで動きます。そのため、『額面が増えた=手取りも増えた』とは限らないのです。

とりわけ注意したいのが、保険料の『段階制度』です。介護保険料は所得や住民税の課税状況に応じて段階が決まるため、年金がほんの数千円増えただけで一段上に押し上げられ、保険料がドンと跳ね上がることがあります。

住民税にも『非課税ライン』があり、年金増額でこのラインを超えると、住民税が発生します。それだけでなく、住民税を基準に計算される介護保険料や医療保険料まで連鎖的に上がります。ちなみに、東京23区では65歳以上・単身・年金収入のみなら155万円以下が非課税の目安です。

さらに見落とされがちなのが医療費の負担増です。2026年4月に薬価(お薬代)が先行改定され、6月からは診察・検査・入院などの点数も新基準に切り替わります。加えて8月からは高額療養費制度の自己負担限度額も段階的に引き上げられます。つまり天引きが増えるだけでなく、病院で払うお金まで同時期に上がるため、『増えたはずの年金』が複数の方向から削られていくわけです。」

秋になると振込額が減る?「仮徴収」と「本徴収」の仕組み

---4月に年金額が上がったものの、秋になったら振込額が減っていたケースがありますが、なぜですか?

柴田 充輝さん:

「よくある疑問が、4月に年金額が上がったものの、秋になったら振込額が減っていたケースです。原因は、年金からの天引きが『仮の金額』と『本番の金額』の二段階に分かれていることにあります。

少しかみ砕いて説明すると、介護保険料も後期高齢者医療保険料も、4月・6月・8月は『仮徴収』といって、前の年度の2月と同じ金額がとりあえずそのまま引かれます。自治体が新しい年度の保険料額を正式に決めるのは6月〜7月頃で、その確定額に基づいて10月・12月・翌年2月に『本徴収』として差額をまとめて調整します。住民税も同じ流れで、10月以降に本来の税額が上乗せされます。

つまり、4月の時点では去年と同じ金額しか天引きされないので、手取りが多く見えます。10月に本徴収へ切り替わった瞬間、増えた年金所得を反映した保険料・税金が差し引かれ、振込額が落ちるのです。

これに追い打ちをかけるのが医療費の値上がりです。先ほど解説した4月の薬価改定・6月の診療報酬改定・8月の高額療養費制度の見直しと、ちょうど手取りが減り始める時期に医療機関のお金まで増えるため、家計への影響が何重にも重なります。」

年金生活を守る!通知書のチェックと固定費削減のコツ

---複雑な制度の中で、どのように対策すれば家計を守れるのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「対策として有効なのは、まず確定申告で使える控除をしっかり申告することです。医療費が年間10万円を超える方は医療費控除を申告するだけで、翌年の住民税や保険料が下がる場合があります。配偶者控除や社会保険料控除など、適用される控除も忘れずに調べてください。また高額療養費の自己負担限度額は所得区分で変わるため、自分がどの区分に当てはまるか事前に確認しておきましょう。

チェックすべき通知書は主に3つあり、1つ目は『年金振込通知書』です。次回以降の振込額と天引きされる各項目の金額が載っています。特に6月の通知(新しい年金額が初めて反映される回)と10月の通知(本徴収に切り替わる回)は、前回届いた通知書と必ず並べて見比べましょう。どの項目がいくら変わったか分かるだけで、モヤモヤが晴れます。

2つ目は、6月頃届く『住民税の税額決定・納税通知書』。年間の住民税額と天引きスケジュールが書いてあるので、秋以降にどれくらい天引きが増えるか先読みできます。

3つ目は、自治体から届く『介護保険料』と『国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)』の決定通知書です。自分が何段階目に当てはまっているかを確認し、前年度から段階が上がっていないかチェックしてください。

そしてもう一つ大切なのが、日々の家計管理です。基本は、年金の『額面』ではなく『実際に振り込まれた金額(手取り)』をベースに家計簿をつけましょう。10月は天引き額が大きく動く月なので、『10月の振込額を確認して年間の生活費を見直す』ことを毎年の習慣にしましょう。

加えて、手取りを守るうえで即効性があるのが『固定費の削減』です。高齢期で自由な時間が増えた時期こそ、惰性で続けている出費を思い切って見直す良い機会です。

たとえば、現役時代に加入した民間の医療保険や生命保険は、公的保険で十分カバーできる部分も多いので、内容を精査して不要なものは解約を検討しましょう。
使用頻度の低い固定電話も、思い切って解約すればそれだけで月数千円浮きます。スマホも大手キャリアから格安SIMに乗り換えるだけで、月々の通信費が半分以下になるケースは珍しくありません。
さらに、車の維持費は保険・税金・車検・ガソリン代を合わせると年間数十万円にもなります。近所の移動を自転車や徒歩に切り替えれば家計が大きく楽になるうえ、毎日体を動かすことで健康増進にもつながり、結果として医療費の節約にもなりますよ。」

10月の変化を習慣に。年金生活を賢く乗り切るために

年金の「額面」に一喜一憂せず、実際に口座に振り込まれる「手取り」を基準に生活設計を立てることが、将来の不安を減らす第一歩です。税金や保険料の仕組みは複雑ですが、届く通知書を丁寧に見比べるだけで、家計の先行きは見えてきます。

また、固定費の削減は、家計を楽にするだけでなく、健康増進や生活のシンプル化にもつながるメリットの大きい対策です。毎年10月は、自分の手取り額を再確認し、生活費を見直す「年に一度のメンテナンス月間」にする習慣をつけてみてはいかがでしょうか。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士など。

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