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「収入は増えたのに手取りが減った…」稼いでも社会保険料で“損”をする。パート主婦の“危険な働き方”とは?【お金のプロが解説】

  • 2026.4.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「頑張って働いて収入を増やしたはずなのに、なぜか手取りが減ってしまった……」。そんな経験はありませんか?
派遣社員の方をはじめ、パートやアルバイトで働く中で、多くの人が直面するこの現象。実は、単なる計算ミスではなく、ある特定の構造が関係しています。

なぜ、収入が増えることが手取りの減少につながるのでしょうか。

そして、私たちはどう働き方を選択すべきなのでしょうか。
今回は、独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)である石坂貴史さんに、手取りの逆転現象が起こるメカニズムと、納得して働くための正しい判断基準について解説していただきました。目先の手取りだけに惑わされない、賢い働き方のヒントを探ります。

なぜ収入が増えると手取りが減る?「社会保険の壁」の正体

---頑張って働いて月収を上げたのに、逆に手取りが減ってしまう人がいます。これは一体どういうことなのでしょうか?

 石坂貴史さん:

「これは『収入が増えたことで新しい支出が発生する構造』によって起きています。ポイントは、単に保険料が増えたのではなく、『それまで払っていなかったものが新たに発生する』点です。

派遣で働いている場合、条件によっては社会保険に入っていない状態で働いていることがあります。このときは、給料から引かれるのは主に税金だけなので、手取りは比較的多く残ります。
しかし、月収がある程度の水準を超えると、健康保険と年金に加入する必要が出てきます。ここで毎月数万円単位の保険料が新たに発生します。結果として、『収入は増えたが、それ以上に引かれる額が増える』ため、手取りが減ったように見えます。

さらに見落とされやすいのが、配偶者の扶養です。扶養に入っている場合、このラインを超えると扶養から外れ、自分で保険料を負担することになります。この影響は個人ではなく、家計全体に及びます。

FPの視点で伝えたいのは、『手取りだけで判断しないこと』です。社会保険に入ることで、将来受け取れる年金が増え、医療費の自己負担も抑えられます。つまり、目先の手取りは減っても、その分は将来の受け取りや安心に回っています。 この現象は損得の問題というより、『お金の受け取り時期が変わる』構造です。今多く受け取るか、将来に回すかという違いとして捉えることが大切です。」

「手取りを守る」か「将来を増やす」か。働き方の正しい選び方

---働き方を考える際、何を基準にすべきでしょうか。目先の手取りをとるべきか、それとも収入を増やすべきか迷ってしまいます。 

石坂貴史さん:

「FPの立場からみると『どの水準で家計を安定させるか』を先に決めることが重要です。働き方はその後に決めるべきものです。

手取りが不利になりやすいのは、社会保険の対象になるラインを少しだけ超えた状態です。この状態は、収入の増加よりも負担の増加が上回りやすく、効率が悪くなります。

ここでの考え方はシンプルです。 一つは、そのラインの下に収める働き方です。労働時間を調整して社会保険に入らない範囲に収めることで、短期的な手取りを確保できます。特に、配偶者の扶養に入っている場合は、家計全体の手取りを維持しやすくなります。

もう一つは、逆にしっかり収入を伸ばすことです。 保険料の負担を前提に、それを上回る収入を確保する働き方に切り替えます。この場合は、勤務時間を増やす、時給の高い仕事に移るなどの選択が必要になります。

50代の場合はここに『老後資金』という視点が加わります。これからの働ける期間は限られているため、厚生年金に加入して将来の受け取りを増やすメリットは無視できません。短期の手取りだけで判断すると、長期的には不利になる可能性があります。 『今の手取りを守る働き方』か、『将来も含めて増やす働き方』かを意識して選ぶことが大切です。なんとなくで働き方を決めると、この中間に入りやすく、それが一番不利な状態になります。」

感覚ではなく「数字」で判断する。誤算を防ぐための手順

---後悔しないためには、具体的にどのような手順で準備を進めればよいのでしょうか? 

石坂貴史さん:

「手取りの逆転を防ぐためには、『感覚ではなく数字で判断すること』が最も重要です。順番としては、まず現状把握、次に比較、この2段階です。

最初に確認するのは、現在の契約内容です。週の労働時間、月収の見込み、契約期間。この3つを整理することで、社会保険の対象になるかどうかが見えてきます。これは契約書や条件通知書で確認できます。
次に、『社会保険に入った場合にいくら引かれるのか』を把握してください。給与明細や派遣会社への確認で、おおよその負担額は分かります。この数字を知らないまま働き方を決めると、後から手取りの減少に気づくことになります。そのうえで、『入らない場合』と『入る場合』で手取りを比較しましょう。

ここで初めて、どちらの働き方が家計にとって有利か判断できます。 また、FPとして軽視できないのは、『世帯で考えること』です。扶養に入っている場合、外れることで家計全体の負担がどう変わるかを確認する必要があります。個人の収入だけで判断すると、全体ではマイナスになることがあります。

実務的なコツとしては、『境目を狙わないこと』です。制度は段階で変わるため、ギリギリの働き方は不安定で、結果的に損をしやすくなります。あらかじめ、どの水準で働くかを決めて、その水準から余裕を持たせることが、手取りを安定させるポイントです。
『知らないまま働くこと』が一番のリスクです。先に数字を確認し、選択肢を比較してから働き方を決める。この順番を守るだけで、手取りの誤算はかなり防ぐことができます。」

「知らない」が一番のリスク。まずは家計の数字を整理しよう

今回の取材を通じて見えてきたのは、手取りが減る現象は単なる損得の問題ではなく、「いつ受け取るか」というお金の性質の違いであるという点です。目先の手取りを守るのか、将来の安心のために働くのか。どちらが正解ということはなく、大切なのは「どちらを選択するか」を自分で決めることです。

一番避けるべきなのは、なんとなくの感覚で働き、意図せず不利な「境目」で働いてしまうこと。まずは今の契約内容を確認し、社会保険料の負担額を把握することから始めましょう。 自分のライフスタイルと将来設計に合わせて、納得のいく働き方を選択するための第一歩を、ぜひ今すぐ踏み出してみてください。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、日本証券アナリスト協会認定資産形成コンサルタント、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。各種メディアにて毎朝金・プラチナ市況の解説を担当。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポート。

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