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相続した実家を3,000万円で売却→しかし、税理士から告げられた“想定外の一言”に唖然。50代男性を襲った“570万円”の誤算

  • 2026.5.18
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。

「親が残してくれた家を売っただけなのに、なぜこんなに税金を取られるんですか」そう言って肩を落とした54歳男性・Aさん(仮名)。父親が亡くなり相続した実家を3,000万円で売却したところ、税理士から想定外の一言を告げられました。

「取得費を証明する書類がないと、売却価格の5%でしか計算できない」というルールにより、本来であれば100万円程度で済むはずだった譲渡所得税が、570万円近くになる可能性があるとのこと。書類が一枚見つからないだけで、400万円以上の差が生まれる。これは特別な話ではなく、相続した実家を売却しようとする人の多くが直面するリスクです。

譲渡所得税の計算で「取得費」が命運を分ける

不動産を売却した際にかかる譲渡所得税は、以下の式で計算されます。

譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用

ここでいう「取得費」とは、その不動産をもともと購入したときの価格(建物は減価償却後)のことです。取得費が高ければ譲渡所得が小さくなり、税負担も軽くなります。

問題は、取得費を証明する書類がない場合です。税法上、取得費が不明なときは「売却価格の5%」を取得費とみなして計算することになっています。これを「概算取得費」と呼びます。

実家を3,000万円で売却したAさんの場合で試算すると、次のようになります(いずれも長期譲渡所得、税率20.315%で計算)。

  • 取得費が判明している場合(父が2,500万円で購入と仮定):譲渡所得は約500万円、税額は約100万円
  • 概算取得費(5%)を使う場合:取得費は150万円、譲渡所得は約2,850万円、税額は約570万円

書類一枚の有無が、470万円の差を生む計算です。

昔の契約書は「存在しないのが普通」

皆さんは、ご両親が今住んでいる不動産をいくらで購入してきたかわかりますか?

わからない、というケースがほとんどだと思います(恥ずかしながら、私もわかりません)。

Aさんの父が実家を購入したのは1970年代のことでした。当時の売買契約書を探して実家の押し入れや仏壇の引き出し、銀行の貸金庫まで確認しましたが、どこにも見つかりませんでした。

「捨てるつもりはなかったと思うんですが、引っ越しや建て替えのときに処分してしまったのかもしれない」とAさんは話します。

40〜50年前の書類が残っていないのは、むしろ自然なことです。しかし税務の世界では「書類がない=証明できない」となり、概算取得費が適用されてしまいます。残念ながら取得費が不明である以上、概算取得費のルールに従わざるを得ません。相続した不動産の売却で思わぬ課税が発生する背景には、この構造があります。

契約書がなくても、諦めるのは早い

取得費を証明する書類は、売買契約書だけではありません。実務上、以下のような代替資料が税務署への申告で認められる可能性があります。

  • 通帳・預金履歴:購入当時の払い出し記録が残っていれば、購入価格の裏付けになりうる
  • 住宅ローンの返済明細・借入資料:融資額が購入価格のおおよその根拠になる場合がある
  • 固定資産税の納税通知書(当時のもの):評価額から逆算する補足資料として使える場合がある
  • 当時の不動産会社の資料:仲介業者が記録を保存していることがある

ただし、これらはあくまで「交渉の材料」であり、税務署が必ず認めるとは限りません。申告の際には税理士に相談のうえ、証拠を丁寧に整理して提出することが重要です。

まとめ

Aさんはその後、古い通帳と住宅ローンの借入資料を父の遺品の中から発見し、税理士と協力して取得費の一部を主張できる見込みが出てきました。最終的な税額はまだ確定していませんが、「早めに動いて本当によかった」と話しています。

相続した実家の売却は、「売れればいい」で終わる話ではありません。購入費用を調べるだけで、数百万円単位の差を生む可能性があります。また、年末年始やお盆のような家族が集まる機会を利用して、「実家の権利証や契約書がどこにあるか」を共有しておくこと。 それだけで、将来の数百万円を守ることができるのです。


出典:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」

出典:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

執筆:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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