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「バスが目の前を通過した」とクレーム…“3人の運転士が全員素通り”した謎のバス停。発覚した真実に「狐につままれた気分」

  • 2026.3.26
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出典:photoAC※画像はイメージです。

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

春になると、スイミングスクールでは短期講習が始まります。特に、幼稚園から小学校低学年の子どもが多く入会し、スイミングもにぎやかになる季節です。

今回は、16年程前に私がスイミングスクールの送迎バスの運行管理会社に勤めていたときの出来事を紹介します。短期講習によって新たなバス停を設置した際、「バスが素通りした!」というクレームで頭を悩ませたお話です。

なぜか、3人の運転士が全員そのバス停を素通りするという珍案件でもありました。しかし、それは人の目の死角が引き起こした素通りだったのです。

3回もバスが目の前を通過した!保護者から怒りのクレーム

当時、私は運行委託を受けていたスイミングスクールの運行管理責任者をしていました。

そんなある日、「異なる日で3回バスを待ったのに、どの日もバスが目の前を通過した」というクレームがあり、困っていると相談を受けました。

すぐさまスイミングへ足を運び、クレーム内容を確認すると、短期講習用に設置した新たなバス停での素通りでした。しかし、スイミングのバスはローテーションで運行しており、3人の運転士が全員素通りするとは考えられにくいクレームです。

なかには、スイミングに行きたくない子どもが、自宅で「バスが行ってしまって乗れなかった」と嘘をついているケースもあります。しかし、保護者が毎回スイミングまで送ってきていることから、バスが素通りしたのは事実と認めざるを得ません。

今でこそ普及し、バスにも搭載されているドライブレコーダーですが、16年前は搭載しているバスは多くありませんでした。そのため、事実確認は困難を極め、実際に私がバスに乗務し、素通りした原因を探ることになったのです。

どこにいた!?姿の見えなかったはずの子どもが乗ってきた…

そして、バスに乗れなかった子どもがスイミングへ来る日がやってきました。運行管理責任者として、私までバス停を素通りするわけにいかないと、緊張しながらハンドルを握りました。

バス停に近づいたとき、ちょうど赤信号で停車し、バス停付近を注視しました。しかし、子どもがいる気配はありません。右折直後にバス停があり、先頭車両で停車して確認しているため、見落としはしないと思っていました。

しかし、万が一のことを考え、右折後にバスを停車させ、乗降扉を開けて少し待ってみることにしました。幸いにも停車しやすい場所であり、時間にも余裕があったからです。

すると、乗降扉を開けた直後、子どもが乗ってきたのです。確かにバス停付近に人は見当たらなかったはずなのに…狐につままれた気分になりました。

もしも停車していなかったら、私まで素通りしてしまうところでした。

私は、「ねぇねぇ…今乗車した子。そう、君はどこで待ってたのかな?」と恐る恐る声をかけてみました。すると、乗車してきた男の子は「バス停の前で待ってた!」と言うではありませんか…

「私が見落としていただけなのかな」と思う一方、「え…本当に人間?足ある?」と真剣に考えたりもしました。もちろん、幽霊の類ではなく、扉を開けた直後に乗車したのですから、バス停前にいたとしか考えられない状況でした。

担当運転士のバスに添乗して再調査

摩訶不思議な素通り事件の謎を解くため、今度は運転士としてではなく、添乗してバスに乗車しました。運転席の横に立ち、謎だらけのバス停を観察すれば、何かわかると思ったからです。

しかし…やはりバス停付近には、子どもどころか大人の姿もなく、疑問が浮かぶばかりです。

念のため、バスを停車させるよう運転士に指示し、乗降扉を開けたところ男児が乗車しました。

運転士の驚いた表情に、私は思わず笑いが込みあげました。面食らった表情の運転士は、身動きもせずに瞬きをし、目をこすりながら子どもを見ていたからです。

あのときの表情は、今でも忘れられません。

そして、バス停で素通りしてしまう理由は、思わぬところで解決することになりました。

人は見ようとしなければ見えない部分がある

どうしても自分では解決できないため、思い切って路線バスの教官経験を持つ先輩に尋ねてみました。すると、あっけなくバスが素通りする理由がわかったのです。

元教官の話によると、夕方の強い西日や建物の影が作り出す極端な明暗差によって、人が背景と同化して見えなくなる現象が起きやすいとのことでした。そこにバス特有の構造上の死角も重なりそのため、バス停では素通りしてしまうことがあるようです。

子どもが乗車する夕方、バスの進行方向とバス停の位置によっては、見逃しやすいことが発覚しました。まだ5年程度の運転士経験しか持たない当時の私は、初めて知った人間の目の仕組みでもありました。

その後、スイミングや保護者にもその内容を丁寧に説明し、その後は必ずバスを停車させて乗降扉を開けるようにしました。そして、謎のバス素通り事件は、無事解決を迎えました。

私はこの出来事で、人も物も、見ようとしなければ見えない部分があるということを改めて実感しました。確認だけでなく、自分の視界がすべてなのかを疑い、見えていないことはないかを意識することが重要だと知りました。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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