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乗客「不慣れな運転士は困るわぁ…」転倒した90代女性を救助して遅れた送迎バス…届いた苦情に運転士が“言い返さなかった”ワケ

  • 2026.5.28
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

みなさんは、歩いている高齢者が目の前でこけたとき、どのように行動するでしょうか。多くの人が、きっと「大丈夫ですか」と声をかけるのではないでしょうか。

今回紹介するのは、高級老人ホームの送迎バスを運行していたときのお話です。

ただ人を助けただけなのに…と感じたことを今でもはっきりと覚えています。一方で、「どんなときでも平常心が重要」と運転士の心構えを再認識したきっかけでもあったのです。

利用者が転倒!バスをその場で停車して救助へ

高級老人ホームのバスを運行していたある日、停留所で降りた90代の女性が転倒する姿をサイドミラーで発見しました。すかさず私はサイドブレーキを引き、「恐れ入ります。少々お待ちくださいませ」とアナウンスし、女性のもとへ走りました。

幸いにも出血などの怪我はありませんでしたが、年齢から考えると骨折や酷い打撲なども考えられます。万が一のことを考え、老人ホームに引き返して医務室を受診されたらどうかと尋ねました。

すると女性が頷いたため、荷物を預かりゆっくり歩いて一緒に車内へ戻りました。途中、バスを停車させていることに罪悪感を持ったのか、女性は足早にバスへ戻ろうとします。

状況が分かるのは乗客だけ・・・私を責める冷たい視線と言葉

私は「大丈夫ですよ。ゆっくり行きましょう。」と声をかけながらバスへ戻り、乗車中の利用者へ謝罪しました。5分以上その場にバスを停車させたため、バスの遅延は免れません。

しかし、そのときバスに乗車していた利用者さんたちは、状況を見ていたため苦言を漏らす人はいませんでした。私は少しホッとしました。

ただ、そんな私の甘い考えは、いつまでも続きませんでした。停留所で待つ方々は、バスの状況を知りません。入居している方や老人ホームへ訪問する入居者のご家族などは、ただバスが酷く遅れてきたと感じるのは致し方ないと言えるでしょう。

バスへ乗車するなり「遅かったわねぇ。」「やっぱり不慣れな運転士は困るわぁ・・・」など、私へ冷たい言葉が刺さります。前を見て運転しているのに、後ろから感じる視線に緊張感は高まるばかりです。

失敗しないようにと運転に集中しつつ、結局10分以上遅れて老人ホームへ到着しました。

もちろん、降車時も「今度は遅れないよう運転してくださいよ」などの言葉が投げかけられます。あえて事情を説明することもせず、私は「申し訳ございません。ご迷惑おかけ致しました。」と頭を下げ謝罪し、乗客を見送りました。

事情を知らない乗客からの言葉。それでも説明を控えた理由

当時の私は、『急病人が出た』と事情を説明することで他の乗客の方に動揺が広がったり、質問に答えることでさらに時間が経過してしまうことを懸念しました。
一刻も早く女性を医務室へお連れすることを最優先と考え、その場での詳細な説明は控え、まずは誠心誠意お詫びをして医務室へ急ぐ決断をしたのです。

苦言をいただきつつも、乗客には謝罪をし、女性とともに医務室へ向かいました。その後、すぐに支配人へ正確な情報を伝え、館内の対応は任せて欲しいと心強い言葉をいただきました。

しかし、予想通り老人ホームには、送迎バスへの苦情が複数あったようです。「人命救助のため」と伝え、入居者とそのご家族にはご理解いただけたと聞いて、安心したのを今でも覚えています。

医務室で診察を受けた女性も異常はなく、あとでお礼を言いにバスまで足を運んでくださいました。

運行に対する不満も真摯に受け止めるのが運転士

バスの運行中は、さまざまな不満をぶつけられることもあります。たとえ理不尽に思っても、プロとして言い返すわけにはいきません。

言い返すことよりも、冷静な思考と判断で安全運行を遂行しなければなりません。グサリとくる一言を投げられたとしても、感情に左右されず安全運行に徹してこそプロの運転士です。

ぐっと堪える我慢を覚えたからこそ、視野を広げて物事の対処に当たれるようになったと、今では運転士時代の経験に感謝しています。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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