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飲み会翌日に“みぞおち”の痛み→「ただの消化不良」と放置…その夜、激痛で救急搬送され?50代男性を襲った“恐ろしい結末”

  • 2026.3.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆様こんにちは、麻酔科専門医の松岡です。

「毎日の晩酌が最高のストレス発散。週末は飲み会で、翌日の胃もたれはいつものこと。」
Eさん(50代・男性)は、飲み会翌日のみぞおちの痛みを「ただの消化不良」と思い込み、市販の胃薬でやり過ごしていました。

しかしその夜、かつて経験したことのない激痛と嘔吐のために救急搬送。診断は重症の「急性膵炎」でした。ICUで生死の境をさまよい一命は取り留めたものの、今も厳密な食事制限で大好きだったお酒とラーメンを完全に絶つ生活を送っています。

今回は「よくある胃もたれに潜む、臓器が溶ける病」について解説します。

「ただの消化不良」の裏で、自らの臓器を溶かすという暴走

美味しい食事やお酒を楽しんだ翌日、胃の調子が悪くなってつらい。そんな経験ありますよね。しかし、痛みの原因が胃の裏側にある「膵臓」だった場合、体内では恐ろしい事態が進行しています。
膵臓が作る強力な消化液は、通常、自分自身を溶かさないよう「時限爆弾の安全装置」がかかった「トリプシノーゲン(不活性)」という無害な状態で作られ、腸に届いてから初めて安全装置が解除されて「トリプシン(活性型)」という強力な消化酵素に変身し、食べ物(タンパク質)を分解します。そのため、この安全装置が壊れてしまうことがあると深刻な事態を招くのです。

【急性膵炎から多臓器不全に至るメカニズム】
1. 過度なアルコールや脂質により、膵臓の出口が塞がれ消化液が大渋滞を起こす
2. 環境の変化により、腸で目覚めるはずの消化液が膵臓内で活性化する
3. 活性化してしまった消化液が、「自分自身の膵臓(タンパク質)」をドロドロに溶かし始める(自己消化)
4. 溶けた組織から大量の炎症物質が血液中に溢れ出し、全身を巡る
5. 肺や腎臓などの重要臓器が連鎖的に破壊され、多臓器不全を引き起こす

「いつもの胃もたれ」と「危険な膵炎」の境界線

仕事のストレスが溜まっている時、ラーメンやビールをご褒美にしたくなるお気持ちは、痛いほどよく分かります。翌日に胃もたれを感じても、「市販の胃薬を飲んでおけば大丈夫」とやり過ごしてしまうのも、無理のないことです。たまの息抜き程度であれば、脂っこいものやお酒を楽しんでも大きな健康被害はありません。
危険な境界線は、「毎晩の過量なアルコール」に加えて、「ラーメンや揚げ物などの過剰な脂質」を摂り続ける習慣が常態化しているケースです。これらが重なると血液中の中性脂肪が異常に高くなり、膵臓の安全装置が限界を超えて破綻してしまいます。
膵炎の初期は「みぞおちの痛み」として現れ、胃痛と非常に似ています。しかし、胃薬でやり過ごしたつもりになって発見が遅れると自己消化は一気に加速します。急性膵炎は、重症化した場合、現代の集中治療をもってしても致死率は約6%(最重症例では約20%)に上る恐ろしい病気なのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

その痛みが単なる胃もたれなのか、膵臓が溶け始めているサインなのかは、以下の3つからチェックできます。

1.みぞおちから「背中」にかけて突き抜けるような痛みがある

膵臓は胃の裏側(背中側)にあるため、炎症が起きるとみぞおちだけでなく、背中や腰にまで重だるい痛みや激痛が響きます。

2.エビのように背中を丸めると痛みが和らぐ

仰向けに寝ると、腫れた膵臓が周囲の神経を圧迫して痛みが強まるため、無意識に前かがみの姿勢をとりたくなります。

3.市販の胃薬が効かず、痛みが徐々に強まる

胃の粘膜の荒れではないため胃薬は効きません。自己消化が進むにつれて痛みや嘔吐が持続、悪化します。

まとめ

食べすぎた翌日の不調を「ただの消化不良だ」と納得させてしまうのは、誰しも経験があることでしょう。急激に進行する急性膵炎では、初期症状が受診するほどではないと考えられるのはよくあることなのです。
もし今、すでに「背中まで響く痛み」がある場合は、迷わず消化器内科や救急外来を受診してください。まだ痛みはなくとも、お酒や脂っこい食事が好きで心当たりがある方は、たまのご褒美程度にすることを心がけましょう。また、次回の健康診断で「腹部エコー」のオプション枠にチェックを入れてみましょう。エコーでは、アルコールや脂っこいものを食べた結果として脂肪肝や胆石、膵石(胆嚢や膵臓の石)が見られるかもしれません。そのようなサインがあれば、いま一度気を引き締めることが大切です。そこが集中治療や重症化を防ぐターニングポイントです。
医療はあなたから楽しみを奪うものではありません。ぜひうまく活用して、美味しい食事を安心して味わえる毎日を守りましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。