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5000万円で新築アパートを購入…2年目で満室に→しかし1年後、68歳オーナーを襲った“想定外の事態”【お金のプロは見た】

  • 2026.3.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!ファイナンシャルプランナーの柴田です。

特に人口が減り続けている地方部において問題になりやすいのが、土地活用です。需要の見通しが立ちにくいうえに、更地のままだと固定資産税の負担が重くなりがちです。

68歳男性・Aさん(仮名)が父親から相続した郊外の土地に、建築会社の営業が声をかけてきました。

「サブリースで30年間家賃保証、老後の安定収入になります」とのこと。5,000万円のローンを組んで建てたアパートは、新築2年こそ満室でしたが、3年目に保証賃料の引き下げ通知が届き、やがて空室率40%超に。ローン返済が年金を食い潰す「負動産」と化してしまいました。

なぜ「サブリースで安心」が崩壊するのか

アパート経営の失敗でよくあるパターンが、サブリース契約のトラブルです。サブリースとは、建築会社や管理会社が建物を一括で借り上げ、オーナーに一定の家賃を保証する仕組みです。「空室ゼロ・家賃保証」という響きは確かに安心感があります。しかし契約書の細部には、致命的な落とし穴が潜んでいます。

まず、保証賃料は定期的に見直され、引き下げられるのが通常です。「30年保証」とは「30年間、同額を保証する」という意味ではなく、「30年間、契約が続く」というだけです。実際には2〜3年ごとの見直しで、築年数が上がるほど保証額は下がっていきます。特に地方部においては、下落幅が大きくなりがちです。

そしてローン返済は、空室率に関係なく毎月発生します。保証賃料が下がっても、ローンの返済額は変わりません。差額は毎月Aさんの口座から消えていくのです。築10年~15年を超えるころには外壁塗装・屋根修繕・設備交換などの大規模修繕費が一気にのしかかり、同時に市場家賃も下落します。収支の悪化は加速度的に進み、「進むも地獄、戻るも地獄」のような状況になりかねません。

なぜ「プロ」が自分で建てず素人に建てさせるのか

ここで一つ、根本的な問いを立ててみましょう。アパート経営が本当に儲かるなら、なぜ建築会社は自分で土地を買って建てないのでしょうか。

答えは明確です。建築会社は建てた時点で利益を確定できるからです。5,000万円のアパートを建てれば、その瞬間に建築利益が発生します。その後のアパートが満室になろうと空室だらけになろうと、建築会社の損益には関係ありません。リスクはすべてオーナーが負う構造です。

サブリース会社もまたしかりです。保証賃料と実際の入居者賃料の差額が収益になるため、空室が増えれば保証額を下げればいい。オーナーに「やめたい」と言わせないよう、途中解約には違約金が設定されています。国土交通省もサブリースのトラブルを深刻な問題と捉え、2020年に法規制を強化しましたが、既存契約の被害はなくなっていません。

「相続税対策になる」という説明も要注意です。確かに賃貸物件は評価額が下がり相続税が減る効果はあります。しかし相続税を減らすためにローンを組み、毎月赤字を垂れ流すのは、本末転倒です。節税額より損失額が大きければ、対策どころか資産を失ってしまうのです。

土地を持っているなら、まず考えたい3つの選択肢

アパート経営以外にも、土地の活用法は複数あります。大切なのは「建てること」を前提にせず、リスクとリターンを冷静に比べたうえで、自分に合った選択肢を選ぶことです。

1.「やらない」を最初の選択肢に入れる
更地のまま固定資産税を払い続けることを「損」と感じる心理が、判断を狂わせます。しかし月数万円の固定資産税と、毎月赤字が膨らむアパート経営を天秤にかければ、更地のほうが圧倒的にリスクが低い場合があります。「何もしない」は立派な戦略です。建物を建てると選択肢が一気に狭まるという現実を、必ず意識してください。

2. 低コスト・低リスクの活用から検討する
駐車場経営・資材置き場・太陽光発電など、建築ローンを必要としない活用方法を先に検討しましょう。収益は小さくても、撤退が容易で損失が限定的です。地域の賃貸需要をまず調べ、需要がなければアパートは論外と判断するのが正解です。

3.売却を検討する
土地を持ち続けることへの執着が、判断を縛ることがあります。売却益を安全な金融資産で運用するほうが、アパート経営より高いリターンを得られるケースも少なくありません。

なお、売却方法は大きく二つあります。一般的な仲介売却は市場価格に近い金額で売れる反面、買い手が見つかるまで数ヶ月かかる場合があります。一方、不動産会社への直接売却(買取)は市場価格の6〜8割程度と割安になりますが、早ければ数週間で現金化できます。「早く手放したい」「手間をかけたくない」という場合は、買取も現実的な選択肢です。

まとめ

「遊ばせておくのはもったいない」という言葉は、あなたの心理的な弱点を突いたセールストークです。土地は動かさなくても消えません。しかし一度建てたアパートは、簡単には消せない負債になり得ます。

アパート経営を始めたいなら、必ず所有する土地の周辺エリアの賃貸空室率を自分で調べましょう。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や地域の不動産会社数社への聞き込みで、需要の実態が見えてきます。その数字が厳しければ、アパート経営に手を出すべきではありません。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。