1. トップ
  2. “築35年の実家”を相続した3兄妹→「すぐに売るのは気が引ける」共有名義にしたところ…3年後、家族が直面した“思わぬ事態”

“築35年の実家”を相続した3兄妹→「すぐに売るのは気が引ける」共有名義にしたところ…3年後、家族が直面した“思わぬ事態”

  • 2026.5.21
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 IFAの石坂です。

相続した実家について、「すぐに売るのは気が引ける」「きょうだいで平等に持てばよい」と考え、共有名義にするケースがあります。一見すると無難な方法に見えますが、共有名義の不動産は、売却や解体などの重要な判断を一人で進めにくくなります。

さらに、誰も住まないまま時間が経つと、固定資産税や管理費、修繕費がかかり続けます。管理が不十分になれば、近隣から苦情が入ったり、自治体から助言や指導を受けたりする可能性もあります。

今回は、相続した実家を共有名義にした40代女性の事例をもとに、空き家共有の注意点をFPの視点で解説します。

「とりあえず共有」が数年後の重荷になる

40代女性のAさん(仮名)は、母親の死亡をきっかけに地方の実家を相続しました。相続人はAさん・兄・妹の3人です。実家は築38年の木造2階建てで、土地は約180平方メートルありました。誰も住む予定はありませんでしたが、母親との思い出もあり、すぐに売却する決断はできなかったそうです。

そこで3人は、「いったん平等に持っておこう」と考え、実家を3分の1ずつの共有名義にしました。当初の負担は、固定資産税が年間約9万円、火災保険料が年間約3万円ほどでした。庭の草刈りは、近くに住む妹が年に数回対応していました。

ところが、相続から3年後、妹が遠方へ引っ越したことで状況が変わります。実家を定期的に見に行く人がいなくなり、夏場には雑草が伸び、庭木の枝が隣家の敷地に入るようになったそうです。台風のあとには、古くなった雨どいの一部が外れ、道路側に落ちかけていたこともありました。

近隣住民から「枝が越境している」「建物の一部が危ない」と連絡が入り、Aさんたちは急いで業者に依頼しました。草刈りと剪定で約8万円、雨どいの修理で約12万円かかったそうです。

その後も、年2回の草刈りや点検を業者に頼むことになり、年間15万円前後の管理費が発生するようになりました。固定資産税や保険料を含めると、毎年の負担は約27万円です。5年続けば、単純計算で135万円になります。

さらに、自治体からも空き家の管理状況について連絡が入りました。すぐに大きな処分を受けたわけではありませんが、建物や敷地を適切に管理するよう助言を受けました。

Aさんは売却を考えましたが、兄は「もう少し残したい」と反対しました。一方、妹は「管理が大変だから解体した方がよい」と考えていました。売却・解体・管理継続のどれを選ぶか決められず、話し合いは止まってしまいます。共有名義にしたことで、誰か一人の判断では前に進めにくくなったのです。

共有名義の実家で見落としやすい注意点

共有名義の注意点は、所有者の一人だけで重要な判断を進めにくいことです。不動産全体を売却する、建物を解体するなどの判断では、原則として共有者全員の同意が必要です。賃貸についても、契約内容や期間によっては共有者間で慎重な確認が必要になります。そのため、一人でも反対すれば、話が進まない可能性があります。

空き家では、この「決められない時間」が負担を大きくします。誰も住んでいなくても、固定資産税・火災保険料・草刈り・清掃・修繕費は発生します。建物が古くなるほど、屋根・外壁・雨どい・塀などの修繕が必要になる可能性も高まります。

また、管理が不十分な空き家は、近隣トラブルにつながることがあります。草木の越境・害虫・建物の破損・倒壊のおそれなどがあると、近隣から苦情が入ることもあります。

状況によっては、自治体から助言や指導を受ける可能性もあります。さらに、管理状態が悪化し、自治体から勧告を受けた場合には、固定資産税等の住宅用地特例の対象から外れる可能性もあります。

空き家は「使っていないから費用がかからない」のではありません。使っていなくても、所有している限り管理責任と費用が続きます。

FP視点では「維持費」と「出口」を先に考える

FP視点で見ると、相続した実家は財産である一方、維持費がかかる資産でもあります。特に共有名義の空き家では、お金の負担だけでなく、意思決定の難しさも確認する必要があります。

まず、年間いくらかかっているかを数字で整理することが大切です。固定資産税・保険料・草刈り・修繕・交通費・管理委託費を合計すると、想像以上の金額になることがあります。

次に、共有者全員で今後の方針を決めておく必要があります。売却するのか、誰かが住むのか、賃貸に出すのか、解体するのかを決めないまま放置すると、費用だけが増えやすくなります。共有を続ける場合でも、費用負担の割合、管理担当者、緊急時の連絡方法を決めておくべきです。共有を解消したい場合は、共有者間で持分を買い取る方法や、全員で売却する方法などが考えられます。

話し合いが難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することも選択肢です。「とりあえず共有」は、相続直後には公平に見えるかもしれません。しかし、使い道を決めないまま共有にすると、誰も判断できず、費用だけが増える状態になりかねません。

相続した実家をどうするか迷ったときは、思い出だけでなく、維持費、管理責任、共有者の考え、売却可能性を早めに整理することが大切です。


※空き家の管理義務や、固定資産税の特例除外に関する基準は、各自治体の条例や物件の状況によって細かく異なります。また、共有名義の解消や売却手続きにあたっては、親族間での合意形成が不可欠です。判断に迷う場合は、自己判断せず、必ず不動産に強い司法書士や税理士などの専門家へ直接ご相談ください。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。

の記事をもっとみる