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“2,500万円の実家”を売却した50代娘→70代母の施設代に充てようとしたが…不動産会社から告げられた“思わぬ一言”に絶句。

  • 2026.5.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。

「お母さんの資産、1円も動かせないんです……」と泣きそうな声で話す、56歳女性・Aさん(仮名)。

母親(78歳)の介護施設入所が決まり、月20万円超の費用を捻出するために実家(評価額2,500万円)を売却しようとした矢先のことでした。

不動産会社からは「お母様の意思確認ができないと売れません」。銀行に行けば「ご本人の判断能力がないと、預金の引き出しはお断りしています」。母の口座には1,000万円超の預金があるのに、1円たりとも動かせず、Aさんは途方に暮れたのです。

「認知症」=資産の全停止スイッチ

親が認知症と判断された瞬間、銀行口座も不動産も、まとめて凍結されると考えてください。これは銀行や不動産会社が意地悪をしているわけではなく、「本人の財産を守るため」のルールです。判断能力が低下した状態で大金を引き出させたり、不動産を売却させたりすると、詐欺被害や家族による使い込みのリスクが一気に高まります。

だからこそ金融機関は、本人の意思確認ができないと判断した瞬間、家族であっても取引を止める仕組みになっているのです。本人の預金を利用することが原則としてできなくなるのです(※近年の法改正や指針により、医療費や介護費用に限り一定の引き出しを認める柔軟な対応を行う銀行も増えていますが、手続きは極めて煩雑です)。

凍結されるのは口座だけではありません。

  • 預金の引き出し・解約 → 不可
  • 定期預金の解約 → 不可
  • 不動産の売却・大規模修繕 → 不可
  • 生前贈与・相続対策 → 不可
  • 株式・投資信託の売買 → 不可

これが「デッドロック(行き詰まり状態)」。資産はあるのに、家族が必要なときに使えなくなってしまうという、極めて深刻な事態を招くのです。

成年後見制度も一長一短

本人が認知症になったときに使える制度の一つが「成年後見制度」。家庭裁判所に申し立てて、後見人を選任してもらう仕組みです。

専門職の成年後見人が就任した場合、本人が亡くなるまで毎月2〜5万円の報酬を支払い続ける必要があります。また、成年後見制度は途中で解約することもできません。さらに、家族が後見人になるケースもありますが、弁護士や司法書士など第三者が選ばれるケースもあります。

しかも見落とされがちなのが、成年後見人の役目はあくまで「本人の財産を守ること」だという点。家族の都合や相続対策ではなく、本人の利益を最優先に動く立場なので、たとえ「介護施設の費用を捻出するために実家を売りたい」と家族が頼んでも、認められない可能性があります。※

  • 不動産売却には家庭裁判所の許可が必要(却下されることも)
  • 資産運用は原則禁止(株式は売却が基本)
  • 生前贈与など「本人の利益にならない行為」は一切不可

つまり、節税のための生前贈与や、孫への教育資金贈与といった相続対策も完全にストップ。「家族の意向と関係なく、資産が塩漬けになる」というAさんの嘆きは、まさにここから来ています。

※本人の介護費用のためであれば原則として許可されますが、家庭裁判所への申立てや書類準備に時間・手間がかかる点に注意が必要です

元気なうちに相続対策を進めることが大切

ではどうすればいいのか。有効な対策を立てるには、『親が元気なうちに行う』ことが極めて重要です。

1.家族信託(民事信託)

信頼できる家族(主に子)に財産の管理権限を託しておく仕組み。信託できる財産は幅広く、契約に定めれば現金だけでなく不動産や株式の信託もでき、成年後見人では制限される不動産の売却・大規模修繕や資産運用も可能です。

費用は、不動産がない場合は30〜50万円程度、不動産がある場合には50〜100万円程度。初期費用は高く感じますが、成年後見制度の月3万円が10年続くことを考えれば、長期的には安く済みます。

2.任意後見契約

将来の後見人を、本人が元気なうちに「この子にお願いします」と指名しておく契約。介護施設の入所手続きなど、家族信託ではカバーできない「身上監護」もカバーできます。家族信託とセットで設計するのが理想形です。

さらに効果的な対策が「父さん母さんの介護費用、誰がどう管理する?」という問題を、親も含めて全員で話す機会を、お盆や正月に意識的に作ることです。家族間では挙げづらい話題ではあるものの、将来の面倒事を回避するうえで、合意形成を図ることは重要です。「もしも」の話を今しておくことが、10年後の家族を救うかもしれません。

まとめ

親が認知症になると預金・不動産・投資などの資産が一斉に凍結され、家族でも手を出せなくなります。成年後見制度も一定の制限や費用がかさむ実態を踏まえると、対策は親が元気なうちに「家族信託」や「任意後見契約」を組んでおくことが重要です。

「私の知り合いでこんなことがあった」のように切り出せば、話が進むかもしれません。家族が集まる機会があれば、将来のためにも話し合ってみてはいかがでしょうか。


※本記事に掲載した各制度の概要、費用、および裁判所・金融機関の対応は、個人の資産状況や各自治体・窓口の判断により細かく異なります。特に家族信託や後見制度の設計にあたっては、自己判断せず、必ず司法書士や弁護士、税理士などの専門家へ事前にご相談ください。

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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