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定年後「年金の足しとして使える」と“退職金1000万円”で投資を購入→数年後、60代男性を待ち受けていた“想定外の悲劇”

  • 2026.3.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関に勤務している中川です。日々、退職金の運用や老後資金についてのご相談を受ける中で、「もっと早く仕組みを知っていれば…」と後悔される方に出会うことがあります。

老後資金を少しでも増やしたい。
そう考えて退職金で資産運用を始める人は少なくありません。

しかし、商品の仕組みを十分に理解しないまま投資を始めてしまうと、思わぬ結果につながることもあるのです。

今回は、定年退職後に毎月分配型の投資信託を購入し、気づかないうちに資産が減ってしまった60代男性の事例をご紹介します。

退職金2,000万円。老後資金を「増やしたい」という思い

今回ご紹介するのは、60代前半男性のAさん(仮名)です。

長年勤めた会社を定年退職し、約2,000万円の退職金を受け取りました。住宅ローンはすでに完済。大きな借入もなく、老後生活は安定しているように見えました。

ただ、Aさんには一つ気がかりがありました。

「このお金を銀行に預けておくだけで大丈夫だろうか」

当時の預金金利はほとんどゼロに近い水準。老後の生活が長くなる可能性を考えると、少しでも資産を増やしておきたいと考えたのです。

そこでAさんは、退職金の一部を運用することに決めました。

銀行で勧められた「毎月分配型投資信託」

相談に訪れた銀行の窓口で勧められたのが、毎月分配型の投資信託でした。

この商品は、その名の通り毎月分配金が支払われる仕組みです。担当者はこう説明したといいます。

「毎月お金が入るので、年金の足しとして使えますよ」

Aさんは、その言葉に安心感を覚えました。

年金に加えて毎月分配金が入るなら、老後の生活はさらに安定する。そう考え、退職金のうち1,000万円をこの投資信託に投資することを決めたのです。

毎月の分配金は数万円。通帳に入金されるたびに、「運用して良かった」と感じていたといいます。

気づけば減っていた資産残高

しかし数年後、Aさんはあることに気づきました。

運用残高を確認すると、投資信託の評価額が大きく減っていたのです。

「毎月分配金を受け取っているのに、なぜ資産が減っているのか」

不思議に思い調べてみると、その理由が分かりました。

毎月分配型投資信託の分配金は、必ずしも運用益から支払われているとは限りません。運用益が足りない場合には、元本を取り崩して分配金が支払われることもあります。

つまり、Aさんが受け取っていた分配金の一部は、実質的には自分の資産を取り崩して受け取っていたお金だったのです。

注意すべきは「定期収入がある」という安心感

なぜAさんは、この仕組みに気づかなかったのでしょうか。

背景には「定期収入がある」という安心感があります。

毎月、分配金が振り込まれると、年金のような安定収入を得ている感覚になります。その結果、資産の評価額が減っていることに気づきにくくなるのです。

投資信託の仕組みは複雑です。分配金の原資や元本取り崩しの可能性まで理解して購入している人は決して多くありません。

Aさんも、「分配金が出る=利益が出ている」と思い込んでいました。

退職金運用で起こりやすい判断ミス

退職金を受け取った直後は、大きなお金を手にした安心感と不安が同時に生まれます。

「このお金を減らしたくない」
「少しでも増やしたい」

そうした思いから、金融機関で勧められた商品を深く理解しないまま購入してしまうケースは少なくありません。

退職金は、多くの人にとって老後生活を支える大切な資金です。一度大きく減ってしまうと、働いて取り戻すことは簡単ではありません。

だからこそ、老後資金の運用では「仕組みを理解すること」が何より重要になります。

分配金の高さだけを見るのではなく、そのお金がどこから支払われているのか。元本が減る可能性はあるのか。

こうした基本的な仕組みを確認するだけでも、意図しない商品を契約してしまうリスクを減らすことができます。

老後資金を守るために、資産運用の知識を身につけてから投資を始めるようにしてください。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。 専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。