1. トップ
  2. 「教育費は私が出してやりたい」孫に1,500万円を一括贈与→10年後、70代祖父が直面した“想定外の事態”【お金のプロは見た】

「教育費は私が出してやりたい」孫に1,500万円を一括贈与→10年後、70代祖父が直面した“想定外の事態”【お金のプロは見た】

  • 2026.5.21
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関でマネージャーを務めながら、相続や贈与に関するご相談を数多く受けてきた中川です。

今回ご紹介するのは、お孫さんの将来を思って2016年に教育資金1,500万円を一括贈与された78歳のお祖父さまAさんの体験談です。10年経った今、信託にはまだ480万円が残っています。「使い切ればOK」と聞いて始めた制度が、お孫さんの進路変更とご自身の体調悪化が重なった瞬間、思いがけない重さで家族にのしかかってきた一件をご紹介します。

「孫の未来に1,500万円」――2016年、迷いなく拠出した日

Aさんは中堅企業の役員を務め上げ、退職後はゆったりとした暮らしを送られていました。

2016年、お孫さんが小学校に入学されるタイミングで、Aさんは銀行の信託商品を使い「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を活用されました。拠出額は1,500万円。

「孫の教育費は、私が出してやりたい。使い切ってくれればそれでいい」

担当者から「30歳までに使い切れなかった残額には贈与税がかかる場合があります」と説明は受けたものの、Aさんは「孫が大学を出るまでには十分使い切れる」と楽観されていたといいます。

進路変更と長引く入院

それから10年。お孫さんは16歳の高校2年生に成長されました。

ほぼ同じ時期、Aさんは長引く入院を余儀なくされます。病室で制度を改めて調べたAさんは、お孫さんが30歳になったときに残額があれば贈与税の対象になることを知りました。しかも適用される税率や課税のルールは、拠出時期によって段階的に見直されてきたため、2016年拠出の本件で最終的にどう判定されるかは、税理士への個別確認が必要な状況でした。

進路変更で支出が止まれば、残額はそのまま残ります。Aさんは静かに天井を見上げたといいます。

「使い切ればOK」の落とし穴――家族で出口を描く

担当の税理士はAさんにこう伝えました。

「進路変更後でも、教育訓練給付の対象講座や、留学準備に関わる一定の支出など、適格として認められる費用が残っている可能性があります。一度、信託銀行と税理士で支出可能な範囲を洗い直しましょう」

支出可能な範囲を再確認することで、事情によっては救済される運用もありますが、税務署や信託銀行の個別判断となり、必ず認められるとは限りません。

2026年5月時点では、教育資金一括贈与は新規拠出ができない一方で、既存契約は契約期間内であれば継続できます。残額がある場合は、贈与者の年齢や健康状態、受贈者の進路など、家族の状況を踏まえて「いつまでに何に使うか」を早めに設計し直すことが大切です。

大きな金額の贈与は、入口だけでなく出口の設計こそ専門家と一緒に。税理士や信託銀行の窓口に、ぜひ一度ご相談されてみてください。


※教育資金一括贈与の非課税特例は、拠出した年度(法改正の時期)によって、30歳到達時の課税ルールや、贈与者が死亡した際の相続税加算の取り扱いが細かく異なります。残額の処分や払い戻しにあたっては、自己判断せず、必ず契約中の信託銀行や、不動産・相続税務に強い税理士へ直接ご相談ください。

監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance)
金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。 専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

の記事をもっとみる