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国際的なデザインシーンで注目を集めるデザイナー、フェイ・トゥーグッドとは?

  • 2026.2.24
Genevieve Lutkin

国際的なデザインシーンで存在感を増しているフェイ・トゥーグッド。ロンドンに住む彼女にデザインの考え方を聞く。
『エル・デコ』12月号より。

Genevieve Lutkin

「ポルトローナ・フラウ」や「タッキーニ」など、世界のトップブランドと協働が続くフェイ・トゥーグッドは、デザイナーとしては異色のキャリアの持ち主だといえる。多くのデザイナーのように高等教育機関でデザイン教育を受けたことはなく、その美的感覚の基礎は雑誌の編集を通じて、独自に身につけたものだと話す。

<写真>GUMMY ARMCHAIR / Toogood
伝統的な張りぐるみの技法を用いながら、家具を擬人化するような感覚でチェアをデザイン。

Hearst Owned

「私は8年間にわたり、イギリスのインテリア誌『THE WORLD OF INTERIORS』で編集とスタイリングの仕事を担当。ページをつくりながら、セットの組み方やストーリーの伝え方を一つずつ学んでいきました。現実の空間をデザインしようとふと考えたときに、自分が欲しい家具が、今の世の中にはまだ十分に存在していないことに気付いたんです」。この発見こそが、トゥーグッドがデザイナーに転身したきっかけだ。

<写真>ROLY-POLY CHAIR / Toogood
ずんぐりとしたシートを支える太い脚は、小動物のような愛らしさとともに、プリミティブな工芸品にも似た安定した存在感を示す。

Hearst Owned

その後、領域を超えた幅広いクリエーションに取り組んでいるのも、こうした自身のバックグラウンドが色濃く影響していると続ける。「私が大学で勉強したのは美術史で、デザインの専門教育は受けていません。実際に自分の手を動かしてつくる力が足りないからこそ、自由な意識で異なる要素を交錯し、常に新鮮で豊かな感覚を養ってこられたような気がします」

<写真>SQUASH / Poltrona Frau
ポリメックス製の頑丈なフレームを大きくて柔らかいクッションで覆い、上質なレザーを張ったアームチェア“スクワッシュ”。彫刻的な形をしたベースには、カバノキの合板材を用いている。

Stefan Dotter

人間の感覚が、デザインをより豊かに育て上げる

キャリアを重ねた現在、デザインはどんな役割を果たすべきだと感じているのだろう。

「フォルムをいかに美しくするか。どれほど使い勝手が良く、機能的なものにするか。このポイントだけを取り上げたら、AIのほうが私よりも良いデザインができるかもしれません。私が意識しているのは、身体的かつ精神的に心地よいものは何かということ。実際に使う人の感覚にフォーカスすることこそが大切です。今は既存のルールや枠組みにとらわれず、要素をミックスし、視点を変え、より自由にデザインすることが求められる時代。現在地から抜け出し、物事の見立てを再構築しながら次なるステップに踏み出さなくてはいけないと考えています」

<写真>ROSE / Noritake
自宅の庭で30品種以上のバラを育てているトゥーグッドが、自身の手で模様を描いたプレート。「ノリタケ」の精密な技との対比が新鮮だ。手描きのものはコレクションピースとして販売され、その絵をプリントしたバージョンも発売予定。

Andrea Ferrari

未来へとつながる広大なビジョンを掲げつつ、自身が生まれ育った美しい風景やフォークアート(民俗文化)をこよなく愛する彼女は今後もイギリスを拠点に活動を続けると宣言する。「幼少期を過ごした田園が広がる豊かな風景は、私にとっての癒やし。子どもたちと一緒にときおり郷里を訪れ、散歩やガーデニングをすることが自分のデザイン、特に色彩や形、素材の感覚をより豊かにしてくれるのです」

<写真>BUTTER SOFA / Tacchini
その名のとおり、柔らかなバターの塊から発想を得てデザインしたソファシリーズ。モジュールシステムで、組み合わせを自由に変化させて好みのレイアウトをつくり、さまざまなシーンを演出できる。

Genevieve Lutkin

自身のアプローチを「かなりアナログなやり方かもしれない」と振り返るトゥーグッド。試行錯誤から新たな感覚を再発見し、予想だにしない結果を導き出す。感情や触感など、人間の豊かさをたたえる感覚がフェイ・トゥーグッドのデザインの軸には確かに存在している。

フェイ・トゥーグッド
1977年イギリス生まれ。ブリストル大学で美術史を専攻。インテリア誌『THE WORLD OF INTERIORS』の編集者、スタイリストを経て、2008年に独立。インテリアや家具のデザインに限らず、ファッションや生活雑貨など幅広いフィールドで活動している。

Hearst Owned

『エル・デコ』2025年12月号



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