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家具ブランドとの協業が相次ぐデザイナー、フィリップ・マロインとは?

  • 2026.2.24
Simon171

国際的なデザインシーンで存在感を増しているフィリップ・マロイン。ロンドンに住む彼にデザインの考え方を聞く。『エル・デコ』12月号より。

Kasia Bobula

20年近くロンドンに拠点を置き、キャリアを積んできたフィリップ・マロインだが、彼が生まれ育ったのはカナダのモントリオール郊外にある自然豊かな水辺の町。自身のクリエーションの原点はその田舎町にあると話す。

「人口の少ない土地で、同世代の子どもがあまり近くに住んでいなかったので、遊ぶのは家にあった父の工作室。その部屋や庭に落ちていた木をのこぎりで切ってはおもちゃを自作していた経験が、後々デザインの道へとつながっているような気がします」

<写真>GREAT SOFA / Hem
「ヘム」から発表した新しいくつろぎのスタイルを目指した“グレート ソファ”は、座面の奥行きが1m以上もある。モジュールシステムで組み合わせにより、複数人がソファの上で寝転んでゆったりと過ごすこともできる。

Hearst Owned

当初は王道のインダストリアルデザインを専攻するも、経験を重ねるごとに自分の感覚で物事の真意を捉えながら丁寧にデザインを構築していく行為への興味が次第に強くなっていく。

「実際に素材に触れながら、その背景にある環境、土壌やものづくりに関わる人々の態度の一つひとつを自らの感覚でしっかりと把握し、プロセスを構築していく。その連続こそがデザインをより確実で芯のあるものにしていくように感じられるのです」

<写真>TRENCH / Acerbis
「トレンチ=溝」という製品名のとおり、溝のような2本の脚上にカーブした座面がのる幾何学形状を組み合わせたソファ。ボリュームたっぷりで存在感があるが、空間に軽やかな印象を与えてくれる。

JONAS MARQUET

好奇心旺盛で、興味を持ったことは貪欲に追求。学生時代から自発的にプロジェクトを立ち上げ、実現してきたと語るが、ロンドンを拠点にして以来、よりその傾向が強くなったともいう。

<写真>EXTRUDE / CUT /Tajimi Custom Tiles
タイルの一大生産地、岐阜県多治見市の「タジミカスタムタイルズ」と協働した“エクストルード /カット”。多治見で出合った押出成形とワイヤーカット技法から着想を得て、彫刻的なオブジェを制作。

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デザインは全ての人のもの、民主的にものづくりを進めたい

「イギリスには優れたデザイン教育や豊かな芸術文化がありますが、製造業に関しては十分な環境が整っているとは言えません。デザインに関連するメーカーの数は少なく、協業者を探すのも一苦労です。だからこそ自らプロジェクトを企画し、タッグを組める相手を探さなければならない。国外のプロジェクトが増えていくのも、僕にとっては自然の成り行きなんです」

イタリアの大手家具ブランド、「フロス」や「ザノッタ」との協業はもちろん、2024年は日本の企業や団体との仕事もスタート。岐阜県多治見市の「タジミカスタムタイルズ」や香川県高松市のアジプロジェクトから作品を発表したほか、現在は日本の工芸産地と国際的に活躍するデザイナーがコラボレーションする「Craft×Tech(クラフトテック)」の企画で、愛知県の尾張七宝とのプロジェクトが進行中だと語る。欧米と異なる、異文化での仕事にマロインは戸惑いを覚えることはないのだろうか。

<写真>BILBOQUET / Flos
マグネット式のボールジョイントを応用し、自在にアングルを調整できる照明“ビルボケ”。ポップな色彩と高い機能性が人気だ。

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「メーカーもユーザーも含め、そこに関わる人全員のためにデザインはあるべきもの。僕自身がいろいろな土地に暮らしてきたことも少なからず影響しているかもしれませんが、デザイナーが意見を強く主張することよりも、関係を持つ相手を信じ、その人の手に委ねることも大切。みんなと足並みをそろえ民主的にデザインしていく感覚は忘れないようにしています」

<写真>TABACE / Zanotta
陶製の花器から発想を得た、屋外でも使用可能なローテーブルをデザイン。

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この寛容さこそ、フィリップ・マロイン自身と、生み出すデザインの最大の魅力なのだろう。

フィリップ・マロイン
1982年カナダ生まれ。オランダのアイントホーフェンのデザイン学校で学士号を取得。フランスの国立高等工業デザイン学校(ENSCI)とカナダのモントリオール大学を経て、ロンドンでトム・ディクソンに師事。2008年に自身のスタジオを設立。


Hearst Owned

『エル・デコ』2025年12月号



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