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学業のプレッシャーと数年間の「抑うつ」「自傷」リスク上昇の関連が示される

  • 2026.2.16
学業のプレッシャーが若者にどんな影響を及ぼす? / Credit:Canva

学生時代、「良い成績を取らなければいけない」というプレッシャーを強く感じてきたでしょうか。

テスト前の緊張だけでなく、将来の進路や親の期待、周囲との比較に追い立てられるような感覚を覚えた人も少なくないはずです。

英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)を中心とする研究チームは、15歳時点で感じていた学業プレッシャーが、その後の抑うつ症状や自傷行為と関連しているかを、大規模な縦断データで検証しました。

結果は、学業プレッシャーが高い若者ほど、22歳まで抑うつ症状が高い傾向にあることを示しています。

この研究は2026年2月12日付の『The Lancet Child & Adolescent Health』にオンライン掲載されました。

目次

  • 過度な「勉強」のプレッシャーは、若者にどんな悪影響を及ぼすのか
  • 15歳時点で学業のプレッシャーを受けていた学生は、22歳まで抑うつリスクが高まる

過度な「勉強」のプレッシャーは、若者にどんな悪影響を及ぼすのか

近年、英国を含む多くの国で若者の抑うつや自傷行為が増加していると報告されています。

一方で、学校における学業競争や成績重視の傾向が強まり、若者を対象にした調査でも「学業のプレッシャーが最大のストレス源の一つだ」と答える人が多いことが報告されています。

しかし、これまでの研究の多くは一時点の調査であり、「プレッシャーが高いから抑うつになる」のか、「もともと抑うつ傾向があるからプレッシャーを強く感じる」のかを区別することが困難でした。

そこで研究チームは、英国の出生コホート研究であるAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)を用い、4,714人の若者を長期に追跡しました

参加者は1991〜92年生まれで、15歳時(2006〜07年頃)に学業プレッシャーを評価されています。

学業プレッシャーは以下の3項目で測定されました。

・学校の課題を終わらせることを強く心配しているか
・家から学校で成功するよう強いプレッシャーを感じているか
・国家試験(GCSE)で少なくとも5科目を達成することがどれほど重要か

これらを合計した9点満点のスコアが高いほど、プレッシャーが強いとされました。

その後、抑うつ症状は16歳から22歳まで複数回にわたり質問票で評価され、自傷行為については最大24歳まで追跡されました。

解析では、性別、家庭の社会経済状況、学業成績、既存の抑うつ症状なども統計的に調整されています。

結果として、15歳時の学業プレッシャーが高いほど、16歳以降の抑うつ症状が高い傾向が確認されました。

また、自傷行為のリスクも上昇する傾向が見られました。

より詳細な結果は次項で見ていきます。

15歳時点で学業のプレッシャーを受けていた学生は、22歳まで抑うつリスクが高まる

統計解析の結果、学業プレッシャーが1点高くなるごとに、26点満点の抑うつ症状スコアは平均0.43ポイント上昇していました。

この関連は16歳時点で最も強く、その後も22歳まで続いていました。

さらに、自傷行為については、学業プレッシャーが1点上昇するごとに、自傷のオッズが約8%高くなっていました。

この関連は、16歳から24歳のあいだで統計的には年齢による大きな違いは見られず、どの時期でも一貫して確認されました。

効果量は決して大きいとは言えません。

しかし、学業プレッシャーは、多くの若者にとって身に覚えのある身近なストレス要因です。

頻度の高い要因が小さく作用する場合は、人口全体で見ると無視できない影響を持ちうると研究者は指摘します。

では、なぜこのような関連が生じるのでしょうか。

研究チームは、学業のプレッシャーが慢性的なストレス反応を引き起こし、自己評価の低下や完璧主義傾向を強める可能性を挙げています。

また、勉強中心の生活が睡眠不足や身体活動の減少、社会的つながりの希薄化につながることも考えられます。

学校環境そのものが競争的になることで、心理的に安心しにくい雰囲気が強まる可能性もあります。

一方で、この研究には限界もあります。

観察研究であるため、この研究だけで「学業プレッシャーが必ずうつの原因になる」と断定することはできません。

また、参加者が15歳だったのは2006〜07年であり、近年の教育政策の変化や新型コロナウイルス流行の影響は反映されていません。

それでも本研究は、大規模かつ長期追跡で、既存の抑うつ症状や成績などを調整した上で関連を示した点で重要です。

今後は、より新しいデータを用いた再検証や、学校全体の環境を変える介入研究が求められるでしょう。

成績向上のための努力は重要です。

しかし、過度なプレッシャーが続く状態が、長い目で見た心の健康と結びつく可能性が示されており、バランスが大切であることを知っておかねばなりません。

参考文献

Academic pressure linked to increased risk of depression risk in teens
https://www.eurekalert.org/news-releases/1116184

元論文

The association between academic pressure and adolescent depressive symptoms and self-harm: a longitudinal, prospective study in England
https://doi.org/10.1016/S2352-4642(25)00342-6

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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