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【小林聡美さん・60歳】還暦を機に見つけた「無理しない生き方」とは?

  • 2026.2.2

【小林聡美さん・60歳】還暦を機に見つけた「無理しない生き方」とは?

飾らない、自然な雰囲気が魅力の小林聡美さん。昨年、還暦を迎えて、好奇心はますます旺盛、新たな挑戦が続いています。この春は舞台『岸辺のアルバム』に出演。名作に挑む今の思いを聞きました。

Profile
小林聡美さん 俳優

こばやし・さとみ●1965年東京都生まれ。
82年映画『転校生』で映画デビュー。
『かもめ食堂』『めがね』など話題作に続々出演。
『紙の月』で第57回ブルーリボン賞助演女優賞。
エッセイに『茶柱の立つところ』『わたしの、本のある日々』など著書多数。

これからは面白がって仕事をしてもいいのかな、と

どんな役柄も、自然に、以前からそこにいた人かのように演じて、観る側も、まるで隣にいる人を覗くように、いつの間にか引き込まれていく。小林聡美さんのお芝居には、いつもそんな魅力がある。だから元気なときにはもちろん、少し気持ちが沈んで誰とも会いたくないような日にも、観ると、心にしみて励まされたり、慰められたりする。

若い頃の作品も素敵だったが、ここ数年の活躍には、さらに何かふっきれたような、飾らない雰囲気があって、そこに惹かれる同世代の女性も少なくないのではないだろうか。

「30代、40代は、ある意味働き盛りで、それなりに、今よりも、きっともっと必要のないプレッシャーを感じたり、前のめっていたりしたかもしれないですね。でも、50代を経て60代になって、もうこれからは、そんなに深刻にならずに、面白がって仕事をしてもいいのかなと。今はそんなふうに思っています」

やったことがなかった歌に挑戦してみたかった

昨年は、小泉今日子さんとダブル主演を務めたドラマ「団地のふたり」が好評を博し、そして4月には、横浜赤レンガ倉庫で、やはり小泉さんの演出で「チャッピー小林とツタンカーメンズ」というアーティスト名で、昭和歌謡を披露するディープなライブを行った。ゲストがまた阿部サダヲさんという「濃さ」で、小林さんの歌唱力と、いきいきと歌い踊るパフォーマンスがたいへん話題になった。何だか、今、とっても楽しそうである。

「これまで経験がなかったので、どんなことになるんだろうという好奇心もあって挑戦してみました。贅沢なことですけど。お芝居以外のことで人に見ていただくというのが、自分にとってすごく新鮮でしたし、歌をやる人たちってこういう景色を見ているんだ!と思ったり(笑)。準備しているときは不安もたくさんありましたけど、振り返ってみたら、とっても楽しかったです」

年を重ねることで、一層自由に、自分の気持ちに素直に楽しめている姿がとてもチャーミングだ。

時代が変わっても共感できる家族の景色

その小林さんが、次に挑戦するのは舞台『岸辺のアルバム』だ。ある世代には懐かしい、山田太一さん作の昭和の名作ドラマである。それが初めて舞台化される。4年前に、向田邦子さん作の『阿修羅のごとく』が舞台化され、小林さんも二女・巻子を演じたが、今回も、脚色が倉持裕さん、演出が木野花さんと、そのときと同じスタッフで製作される。小林さんは、八千草薫さんの演じた、不倫をする主婦・田島則子を演じる。

「『阿修羅のごとく』でやりきった感があって、もうしばらく舞台はできないかなぁと思っていたところへお話をいただいて。一瞬迷ったのですが、『岸辺のアルバム』かぁと。名作だし、きっとまた大きな挑戦になるし、大体、八千草さんは40代の設定で、私60歳で『いいんですか?』っていう心配もあったのですが(笑)、プロデューサーの方が『いいんですよ!』と励ましてくださったので、挑戦してみることにしました」

一見、平凡で幸せに見える家庭だが、家族それぞれに問題を抱えている。折しも多摩川の大洪水があり、幸せの象徴であるマイホームとともに、一家の幸せも崩壊し……という、当時としてはとても衝撃的な物語だった。

「これという事件はなさそうに見えて、生きている限りどんな人の中にも秘密や葛藤がある。面白いドラマや演劇って、その共感する部分をお客さまにどれだけ感じてもらえるかだと思うのですが、山田太一さんの作品にはそれが至るところにちりばめられていますよね。50年前の作品で、則子は私の母親と同世代ですけど、その世代に育てられたのが私たちですから、ああいう家庭の景色は見たことがあるし、その子ども世代も、祖母の姿に脈々と感じるものがあるはず。日本のそういう家族の景色というのは、時代が変わっても『国民の血』ではないですけど、共感していただけるものがあるのではないかと思っています」

無理しない時間が増えると本来の自分を取り戻せる

昨年、還暦を迎えた。好奇心に導かれて、なお、いきいきとアクティブな活躍が続くが、日常で意識していることは、まず健康だという。

「無理して働きすぎたり、遊びすぎたりしないこと。あと食べることをおろそかにしないで、意識してきちんとバランスも考えて量もしっかり食べることを心がけています」

40代から始めた俳句も、数年前からレッスンに通っているピアノも続いている。仕事の合間を縫って旅行にも行けば、昨年からハマっている韓国ドラマも楽しむ。しかし、そこには気負いもないし、無理もしない。いろいろな所へ出かけるのも楽しいが、家にいるのも楽しい。「一日があっという間に終わります」と言う。

「年を重ねれば重ねるほど、オリジナルの自分に戻っていく気がしています。今まで気にしていたことが気にならなくなってきたとか、無理しないでいる時間が前より増えているとか。でも、それが自然なことなんでしょうね。年を取るって、いろんなことを『まぁ、いいか』って思えることなのかなと思います。欲張らずにのんびりと、自分が楽しいと思うことをちょっとずつでも続けながら、健康に過ごす。そんな60代だといいなと思います」

【Information】岸辺のアルバム

1977年にドラマとして放送された山田太一原作・脚本の「岸辺のアルバム」が、50年の時を経て初の舞台化。多摩川沿いの一軒家に暮らす一見平凡で幸せそうな中流家庭。74年の多摩川水害をモチーフに、その崩壊と再生を描いた名作が、新たな切り口でよみがえる。

作/山田太一
脚色/倉持 裕
演出/木野 花
出演/小林聡美、杉本哲太、細田佳央太、芋生 悠、前原 滉、伊勢志摩、夏生大湖、田辺誠一
東京公演/4月3日(金)〜26日(日)東京芸術劇場シアターイースト
大阪公演/5月 松下IMPホール
公式HP:http://otonakeikaku.net/stage/6934/

撮影/山田崇博
スタイリング/藤谷のりこ
ヘア&メイク/磯嶋メグミ

※この記事は「ゆうゆう」2026年3月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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