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「車をかわいく思ってもらいたい」コーティングのプロが大切にする『下地』を整えて輝く生き方

  • 2026.3.10

私たちの生活に身近な場所のひとつ「ガソリンスタンド」。
その名の通りガソリンを入れる場所…と思いがちですが、そこでのお仕事は実はそれだけじゃありません。

「カーコーティング」もそのひとつ。

車のボディの汚れを落とした上で、特殊なコーティング剤で膜を作り、愛車を新車のような美しさによみがえらせるサービスです。
新車をピカピカに保つためにも使われ、車好きの間ではよく知られています。

実はこのサービスを行う側「キーパー」は、徹底して汚れを見逃さない細やかさや、美しく磨き上げる丁寧さが求められ、その技術の高さを誇る猛者が集まるコンテストも開かれるほど。

今回は、激戦を突破しキーパーの「全道大会」への出場を果たした女性に、このお仕事に就いたきっかけや、やりがい、大切にしていることについてお話を伺いました。

Sitakke

連載|私のきっかけ

社内でただ1人の「EXキーパー」

札幌の氷点下の冬、サービスステーションのピットに、作業に没頭する静かな熱気が満ちていました。
一台の車と向き合うのは、井上桜里(いのうえみさと)さん(31歳)です。

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井上さんは、北日本エネルギーのサービスステーション全13店舗の中で、現場スタッフとして唯一、最高峰の「EXキーパー」資格を持つカーコーティングのスペシャリストです。

今でこそ称えられるキャリアですが、その始まりは決して順風満帆なものではありませんでした。

スーツも、化粧も、堅苦しいのはいや

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最初に聞いたのは、今の仕事に決めた「きっかけ」。

「本当に申し訳ないんですけど、私の過去、あんまり面白くないかも……」

照れくさそうに笑いながら、井上さんは自身のことを語ってくれました。

井上さんは、4人きょうだいの長女として生まれ育ちます。
いじめによる高校中退をきっかけに、一時はひきこもり状態になりかけたこともありました。
バイトをしながら生活する中で、母から「高校は卒業した方がいい」と後押しされたといいます。

「本当に親が引っ張り出してくれた。それで行ってみたら、いい先生に出会えて…」

自分の生活スタイルに合った通信制の高校へ通い直し、卒業が近づき、いざ就職…
そこで、高校の就職担当の先生に伝えた希望はこんな内容でした。

「スーツを着なくてよくて、化粧もしなくていい職業がいいです! 」

堅苦しいのが苦手。リラックスして自分らしく働ける場所がいい。それが、井上さんがこれまでさまざまな経験をしてきた中で出した答えでした。

「楽でいられるっていうことを大事にしたいと思って」

そこで先生が紹介してくれたのが、サービスステーション…いわゆるガソリンスタンドを展開している、北日本エネルギーでした。

Sitakke
入社当時の井上さん

ガソリンスタンドというと、漠然と「体力仕事で大変そう」というイメージも。
でも、井上さんは全く違った印象を抱いていました。

「幼い頃、親の車で給油に行くたび、テキパキと窓を拭いてくれるスタッフさんの姿をみて『カッコイイ』と感じていました。それで、自分にもできるかも、やってみたいなと思ったんです」

運命を変えた「器用だね」のひとこと

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入社後、初めて配属されたのは会社で一番小さな店舗でした。
給油や車の清掃のほか、タイヤ販売や車検の案内など、多様な仕事を経験します。
任された仕事に一生懸命取り組んだものの、悩みもありました。

「お客様と仲良くなることは得意でしたが、そこから販売につなげることは苦手で。自分には販売の才能がないかもと思っていました」

転機が訪れたのは、6年目、2店舗目へ異動した直後でした。

「異動先の所長が、カーコーティングの達人だったんです」

その所長が、井上さんの洗車や拭き上げの細やかさや丁寧さを見て、声をかけたのです。

「井上さん、器用だしカーコーティング向いてそうだよ。やってみない?」

その一言がきっかけとなり、カーコーティングの資格取得に挑戦してみることに。
2級からスタートし、3年ほどかけて1級を取得。最終的には、最難関の「EXキーパー」も取得しました。

技術を磨くほどに「面白い」と感じるようになったという井上さん。
今や、EXの依頼が入れば他店へも駆けつけるほどの存在となりました。

背中を押され、全道大会にも出場

Sitakke

メキメキと実力を上げた井上さんは、職場の後押しもあり、2025年にはコーティングの技術やスピードを競うコンテストへ出場することに。
社内でただひとり予選を突破し、全道大会に出場する快挙を成し遂げました。

とはいえ周りの出場者にはカーコーティングの専門店に勤める技術者も大勢いて、初参加の井上さんはその技術やスピードに圧倒されます。

「本当にすごいなと。自分はまだまだだなと思いました」

けれど大会に向けてカーコーティングの講習を受けるなど、努力を重ねてきたことは確実に力に。「自分の苦手を把握して、無駄のない動きを意識できるようになった」といいます。

課題に感じていたスピードも、「以前は1日1台が限界でしたが、今ではクオリティを保ちながら、半日で終わらせらることができるようになりました」

挑戦したことが次の成長につながったのです。

「下地処理」が「仕上がりの美しさ」を決める

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仕事で大切にしていることと、大切にするようになったきっかけも聞いてみました。
井上さんは真っすぐに、即答。

「一番大切なのは、コーティング前の下地処理なんです」

井上さんが語るカーコーティングのポイントは、とてもストイックです。

「下地処理では、洗浄をした後、鉄粉や水垢をどれだけキレイに落とせるかが大切です。もし汚れが残ったまま膜を作ってしまったら、その一面はやり直しです」

汚れた車の施工は特に大変といわれますが、井上さんは前向きです。

「実は汚れている車ほどやりがいがあるんです。仕上がったとき『ここまでキレイになったぞ!』という達成感がすごく大きくて」

その顔は本当に楽しそう!

愛車をいっそう、かわいく思ってもらえるように

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「もちろん、どんな車種でも、どのカーコーティングのコースでも『キレイになれー!』と愛情を込めて磨いています」

車を新車のように蘇らせることで、お客様がいっそう愛車をかわいく思ってくれるように。

そんな願いを込めているのだそうです。

井上さんの丁寧なコーティングには、リピーターもたくさんいます。

「ピカピカになった車を見てお客様が喜んでくださると、やっぱりうれしいですね。うれしすぎて、1年ぶりにリピートしてくださる方でも、お顔を覚えていたりします」

率先して動くほうが気持ちいい

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一緒に働く人たちとはよく世間話をしては笑ったりしているそうで「自分の『家』のような職場」なのだそう。

だからこそ、より気持ちよく働くために心がけていることがあります。

「自分でできることってたくさんあるわけじゃないんですよね」

タイヤ交換のようなパワーが必要な作業は、男性スタッフに助けてもらう場面も。

そんなときは自身が得意な洗車やコーティング、タイヤ交換のなかでも伝票作成などの細かいサポートを、率先してやるようにしているといいます。

「率先して動く人ばかりだから、私も自然と『やりたい』と思えるんです。助けてもらったらお返しする『Win-Win』の状態じゃないと落ち着かなくて(笑)」

寒い冬も暑い夏も…家族の応援が原動力

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サービスステーションでの仕事は屋外が基本。
夏は暑くて、冬は寒い過酷な環境でもあります。

そうした中、12年間ひたむきに勤めてきた井上さん。
日々の原動力が気になり聞いてみると、「家族の存在が一番」だと迷わず答えてくれました。

「うちはひとり親家庭で、私は4人きょうだいの長女なんです。私の仕事を、家族や親族が心から応援してくれていて、それが支えになっています」

母、祖父母、叔父…。

「免許を持っている親族は、わざわざ私のいる店舗に給油しに来てくるんですよ」

バイク乗りの叔父が来たときは、エンジン音ですぐわかるのだとか。

さらに、今はパートナーと2人暮らしをしているそうで、

「年に1~2回、一緒に旅行に出かけることも大きな楽しみです」

周りの人たちが、今の私になる「きっかけ」をくれた

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こうして「きっかけ」をつかんできた井上さんがここまで「得意」を伸ばして活躍してこられたのは、周囲の人の助けも大きかったといいます。

引きこもりかけていた部屋から「引っ張り上げてくれた」母、希望を聞いて就職先を提案してくれた高校の先生、そして仕事ぶりをみて「キーパー」としての適性を見つけてくれた上司。

「周りにきっかけを運んでもらってきたんです。大事な人に言ってもらったことはやってみようって」

大事な人を信頼することで、自分の力を信じてみる。

「本当に周りの人に恵まれて今の私がいると思っていて。感謝の気持ちはずっと変わりません」

Sitakke

人に導いてもらってきたという井上さんですが、最近感じている難しさが「後輩を育てること」なのだとか。

コーティングを始めたての後輩にアドバイスを求められる場面も増えてきました。

「自分の考えを押し付けるのではなく、『自分はこうやっているよ』というコツを伝えるようにしています。遠すぎず近すぎない距離感を大切にしながら…」

「後輩の育成は難しい」とこぼしつつも、丁寧さと細やかさはここにも表れていました。

「コーティングといえば、井上さん! 」と言われたい

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最後にこれからの目標も教えてくれました。

「社内の誰もが『コーティングといえば井上さんだね』と言ってくれるようになることです」

井上さんが教えてくれた「下地が一番大切」というコーティングの極意。
少し意味合いは違うかもしれませんが、それは、周囲の人たちの言葉を大切に受け取りながら今の自分を作り上げてきた井上さんの姿に重なるようにも感じました。

私たちの日々も、まずは身近なことを大切に「下地」を整えることから始めてみれば、新しい輝きを見つけられるのかもしれません。

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文:木村
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は取材時(2026年2月)の情報に基づきます。

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