1. トップ
  2. 「とりあえず共有名義」が命取り。実家を“塩漬け”にする不動産初心者が陥る「平等の罠」

「とりあえず共有名義」が命取り。実家を“塩漬け”にする不動産初心者が陥る「平等の罠」

  • 2026.2.13
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産業界歴15年、宅地建物取引士の不動産ライター西山です。

親が亡くなり、実家の相続について兄弟姉妹で話し合う際「とりあえず法定相続分通りに分けよう」という結論に至るケースは少なくありません。遺産分割協議で揉めるのを避けるため、全員が平等に持ち分を持つ「共有名義」での登記は、一見すると平和的な解決策に思えます。

しかし、この「とりあえず共有」こそが将来的に実家を誰も手出しできない「塩漬け物件」に変えてしまいかねない、リスクの高い選択肢なのです。今回は、共有名義にした後に待ち受けるリスクと、知らなかったでは済まされない税金の連帯責任について解説します。

「ハンコが1つ足りない」だけで資産は凍結される

不動産を共有名義にする最大のリスクは、売却や大幅なリフォームなどを行う際に「共有者全員の同意」が必要になるという民法のルールにあります。

たとえば兄弟4人で実家を共有した場合、そのうちの1人が「まだ売りたくない」と反対すれば、残りの3人が賛成していても売却はできません。たった1人の反対で、不動産は身動きの取れない状態に陥ります。

さらに恐ろしいのが、共有者の誰かが認知症になってしまった場合です。意思能力がないと判断されれば、契約行為自体が行えなくなります。成年後見人をつけるなどの法的手続きをとらない限り、実質的にその不動産は売ることも貸すこともできない「凍結状態」となってしまうのです。

放置すると「顔も知らない他人」が共有者に。見落とせない「連帯納税」のリスク

共有状態を放置すると、相続の連鎖で権利関係がネズミ算式に複雑化し、顔も知らない親戚同士が共有者になる「数次相続」が発生します。こうなると合意形成は極めて困難となり、実家が塩漬けになる恐れがあります。

また、金銭的なリスクとして見逃せないのが「連帯納税義務」です。法律上、共有者全員が「その不動産にかかる固定資産税」について全額の支払い義務を負います。 もし代表者がこの税金を滞納すれば、役所は他の共有者に全額を請求可能です。

代表者個人の税金(住民税など)は対象外ですが、固定資産税に関しては「自分の持分だけ払う」理屈は通用せず、ある日突然、預金が差し押さえられるリスクさえあるのです。

「とりあえず共有」は問題の先送り。将来揉めないための“終わらせ方”

相続における「共有名義」は、問題の解決ではなく「先送り」に過ぎません。仲の良い兄弟であっても、配偶者の意向や経済状況の変化によって関係性が変わることは往々にしてあります。

将来のリスクを回避するためには、安易な共有は避け不動産を売却して現金を分ける「換価分割」や、誰か一人が不動産を相続して他の相続人に代償金を支払う「代償分割」を検討すべきです。

一度共有登記をしてしまうと、解消するには多大な労力と費用がかかります。「あの時ちゃんと決めておけばよかった」と後悔しないよう、相続が発生した初期段階で「誰が引き継ぐか、あるいは売却するか」という出口まで見据えた話し合いを持つことが重要です。



筆者:西山雄介(宅地建物取引士・マンション管理士・日商簿記2級などの資格所有)
不動産業界歴15年。新卒で東証プライム上場のマンションデベロッパーに入社後、計2社で新築・中古販売および管理業務に従事。実務現場を経て管理職も歴任し、組織運営にも携わる。現在はその多角的な視点を活かし、実務解説から不動産投資、法律事務所案件まで、専門性の高いコンテンツ制作・ディレクションを行っている。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】