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世帯年収620万で6,000万のマンションを購入→3年後、40代夫妻が辿った末路【不動産のプロは見た】

  • 2026.3.1
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅ローンを組んだ方の多くは、銀行の審査が通ったと聞いた瞬間、ほっと胸をなで下ろすのではないでしょうか。

住宅ローンは、人生で最も大きな借り入れになることがほとんどです。審査を通過すると「これから頑張って働いてきちんと返していこう」と自然と気持ちも引き締まるものです。

しかし、実務の現場で数多くのご家庭を見てきた立場から申し上げると、審査に通ったことと、家計が安定して回り続けることはまったく別の話です。

今日は、銀行が算出する貸付可能額と、家族が無理なく暮らせる本来の適正額との間に大きな開きがあったことに数年後になって気づいた、40代共働き世帯のエピソードをご紹介します。

「審査が通ったから安心」そう信じたAさんご夫婦

これは、私が3年前に担当した40代前半のAさんご夫婦の話です。共働きで世帯年収は620万円。子どもは双子で、当時はまだ小学生でした。

購入したのは6,000万円の新築マンション。頭金300万円を入れ、5,700万円を借り入れました。

  • 変動金利:0.6%
  • 35年ローン
  • 月々返済額:約15万円

決して軽い負担ではありません。それでも、夢のマイホームを手に入れられることに胸を高鳴らせ、これから頑張ろうと前向きな気持ちでいっぱいだったといいます。

銀行の審査担当者は、淡々とこう説明しました。

「返済比率は約29%。審査には問題ありません」

返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合のことです。一般的には35%以下であれば審査基準の範囲内とされます。

ただ、その数字を聞いたとき、私は心のどこかで引っかかるものを感じていました。

参考:住宅ローンシミュレーション(住宅保証機構株式会社)

「住宅ローン以外」が家計を締めつけた

見落とされがちなのが、ローン以外にかかる住居費です。

  • ローン返済:約15万円
  • 管理費・修繕積立金:3万2,000円
  • 固定資産税:約1万3,000円

合計すると、月約19万5,000円。住まいにかかる費用だけで、毎月20万円近い負担になります。手取りベースで考えると、決して軽い金額ではありません。

購入から3年後、子ども2人が同時に中学へ進学しました。塾代、部活費、教材費などが一気に増え、教育費は年間100万円を超えます。

Aさんは「生活費を見直せば何とかなる」と考えました。外食を減らし、家族旅行をやめ、ついには車も手放しました。それでも収支は改善しません。

足りない分はボーナスで埋める。そんな生活が続き、貯蓄のペースはみるみる落ちていきました。やがて毎月の家計は慢性的な赤字へと転落します。

プロだけが知る極意「返済比率は25%以下で設計する」

よく考えれば、返済比率は銀行のための基準です。あくまで「貸しても延滞しにくい水準」を示しているに過ぎません。

そこには教育費の増加や金利上昇、病気や転職といった生活の変化までは織り込まれていないのです。

私は実務で、必ずこう伝えています。

  • 返済比率は25%以下
  • 金利+1%で試算

たとえば世帯年収620万円なら、以下の計算です。

  • 安全圏の年間返済額:約155万円以内
  • 月返済目安:約12万9,000円以内

この水準であれば、多少の想定外が起きても、家計が一気に崩れるリスクは抑えられます。

そして必ず確認するのは、次の3点です。

  • 管理費・修繕積立金を含めた総住居費
  • 教育費がピークを迎えたときの家計シミュレーション
  • ボーナスに頼らず毎月の収入だけで回るかどうか

住宅ローン審査は合格ラインに過ぎません。しかし、家計の安全ラインはそれよりもはるかに低い場所にあります。ここを取り違えた瞬間、生活は追い込まれていきます。

家族を守るためのローン設計

住宅ローンが通った瞬間、多くの方は安心します。

けれど、本当に安心できるのは、支払いのあとにも余裕が残る設計ができたときです。銀行が示すのは貸せる金額です。

しかし、家族を守れる金額までは教えてくれません。

家を買うということは、35年間の生活を引き受けるということです。教育費の増加、金利の上昇、親の介護、転職や収入減少。人生には必ず変化が訪れます。

審査に通ったから安全だと考えるのは危険です。

住宅ローンは通すことが目的ではありません。守れる額で組むことが目的です。

その一線を超えたとき、家は夢から重荷へと姿を変えます。住宅ローンを組むときは銀行の基準だけでなく、家計の安全ラインも理解したうえで判断しましょう。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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