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「老後はマンションが安心」だと思っていたのに…重すぎる「維持費」に頭を抱える50代の“誤算”【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.13
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

「老後はマンションのほうが安心ですよ」

住まい探しの際に、一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。

  • 段差が少ない
  • 建物の管理は任せられる
  • オートロックで防犯面も安心

パンフレットを読んだりや営業の説明を聞いたりすると、マンションはたしかに老後向きの住まいに見えます。しかしその「安心」は、10年後、20年後も同じように続いているでしょうか。

今日は、「老後向き」という言葉を信じてマンションへ住み替えたものの、50代後半になってから暮らしが大きく変わってしまった方の実体験をもとに、住まい選びの落とし穴についてお話しします。

「老後は楽に暮らしたい」40代後半での住み替え決断

この話は、私が不動産会社で売買を担当していた頃に出会ったAさん(当時48歳)のケースです。Aさんご夫妻は、それまで郊外の戸建て住宅に暮らしていました。

年齢を重ねるにつれ、次のような点が気になり始めたそうです。

  • 階段の上り下りが少しずつつらくなってきた
  • 庭の手入れが負担に感じるようになった

「このまま年を取ってからでは遅いかもしれない」

そう考え、老後を見据えて住み替えを決断されました。

新居として選んだのは、駅から近い中規模マンションでした。当時のAさんにとって、魅力に感じたポイントは次の点です。

  • 室内の段差が少なく、つまずく心配が少ない
  • エレベーターがあり、階段を使わずに移動できる
  • オートロック付きで、防犯面でも安心感がある
  • 病院やスーパーが徒歩圏内にそろっている

どれも「老後は楽に暮らせそう」と感じさせる条件。内覧の際、Aさんは私にこう話していました。

「戸建てより、こういうマンションのほうが老後は絶対に楽ですよね」

当時の条件を見る限り、その考えをすぐに否定できる材料はありませんでした。

50代後半、持病をきっかけに“違和感”が現れ始める

状況が変わり始めたのは、Aさんが56歳を過ぎた頃です。軽い心臓の持病が見つかり、長距離を歩くのが徐々につらくなっていきました。そこで、初めて「マンションの生活動線」が負担としてのしかかります。

  • 玄関からエレベーターまでが意外と遠い
  • 朝夕の混雑時間はエレベーター待ちが3〜5分
  • ゴミ出しも共用部を通って指定場所まで移動

さらに追い打ちをかけたのが、地震でした。停電でエレベーターが一時停止。高層階ではなかったものの、「もし今後、長時間止まったら…」という不安が一気に現実味を帯びます。

年金生活を想定すると、維持費が重すぎた

Aさんをさらに悩ませたのが、毎月かかるお金の問題でした。いわゆる「数字の誤算」です。購入当初の管理費・修繕積立金は、次のとおりでした。

  • 管理費:月18,000円
  • 修繕積立金:月12,000円

合計で月3万円。現役で働いている間は大きな負担には感じなかったそうです。

ところが、建物が古くなるにつれて状況は変わります。修繕積立金が段階的に引き上げられ、50代後半には管理費と修繕積立金の合計が月45,000円まで増えていました。

そこへ、さらに次の支出が重なります。

  • 通院や薬代などの医療費
  • 将来に備えた介護費用の積み立て

住み替えたときには見えていなかった毎月の固定費が、老後を現実的に考えた瞬間、大きな不安に変わっていったのです。

「逃げ場がない」近隣トラブルと管理組合の役員就任

さらにAさんを精神的に追い詰めたのが、上下階から聞こえてくる生活音でした。夜になると足音や物音が気になり、眠れない日も増えていったそうです。

追い打ちをかけたのが、管理組合の役員輪番でした。

「体調が万全ではないのに、資料作りや総会対応は正直きついんです」

そう訴えても、役員は原則として順番制。体調を理由に外れることは簡単には認められません。

この頃、Aさんは「老後向きと言われたはずのマンション住まいが、気づけば居心地の悪い場所になっていた」と話していました。

老後向きかどうかを決めるのは「暮らしやすい設備」だけではない

「このまま住み続けるのは厳しい」

そう感じたAさんは、住み替えを考え始めました。ところが売却額では住宅ローンを返しきれず、現実的な選択肢が残りませんでした。

このケースからわかるのは、「バリアフリーだから老後も安心」という考え方が必ずしも当てはまるわけではないという点です。

マンションは、立地や管理、セキュリティの面で暮らしをとても快適にしてくれる住まいです。日々の負担を減らし、安心感を得られる点は、戸建てにはない大きな魅力でもあります。

ただ、「老後向き」という言葉だけを信じて選んでしまうと、Aさんのように後から選択肢が一気に狭まることもあります。

老後を見据えた住まい選びでは、見た目の設備や利便性だけでなく、将来の生活負担を数字と生活動線に当てはめて考えることが欠かせません。それを後回しにすると、取り返しのつかない誤算につながる可能性があります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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