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「トラブルの火種に」お金のプロが警告。『相続で揉める家』には共通点があった…親が元気なうちに確認すべき「3つのポイント」

  • 2026.2.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「相続」と聞くと、多くの財産を巡る複雑な争いだと想像し、自分たちには関係ないと思っていませんか?しかし、実は財産額の多寡にかかわらず、どんな家庭にも起こりうるのが相続トラブルの現実です。

特に「うちは大した財産がないから大丈夫」と油断している家庭ほど、準備不足が原因で思わぬ落とし穴にはまってしまうケースが少なくありません。親が元気なうちに何を話し、何をしておくべきか、分からないと不安に感じている方もいるでしょう。

本記事では、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の柴田充輝さんの見解に基づき、一般家庭に潜む相続トラブルの要因と、家族の安心を守るために今すぐできる具体的な対策について詳しく解説します。

「まさかうちが?」相続トラブルが起きやすい3つの落とし穴

---相続トラブルが起こりやすい家庭に共通する要因として、財産の把握不足や家族間コミュニケーション以外に、どのような見落としがちな要素が関係しているのでしょうか?

柴田充輝さん:

「相続トラブルの要因として、まず挙げたいのが離婚歴のある方の相続です。

たとえば父親に前婚の子どもがいる場合、現在の家族がその存在を知らない、あるいは知っていても交流がないケースは珍しくありません。

しかし法律上、前婚の子にも現在の子と同等の相続権があります。いざ相続が発生してから初めて連絡を取ることになり、感情的な対立に発展しやすいのです。戸籍を遡って確認しない限り、相続人の全容が把握できないという点は意外と見落とされがちです。

次に深刻なのが、親の介護を担っていた相続人がいるケースです。『長年献身的に介護してきた』という貢献が報われないことが多く、本人の期待と相続割合のギャップがトラブルの火種になりやすい印象です。

民法には『寄与分』という制度があり、特別な貢献をした相続人は取り分を増やせる建前になっています。実務上は立証のハードルが高く、期待通りの金額が認められることは多くありません。介護していた側の不満は根深く、兄弟姉妹の関係が修復不能になることもあります。

さらに意外と多いのが、不動産の共有状態が生むトラブルです。『とりあえず兄弟で共有にしておこう』という安易な判断が、売却や活用の場面で意見が割れ、長期間の塩漬け状態を招きます。これらの問題は、財産額の多寡に関係なく、むしろ『うちは大した財産がないから大丈夫』と考えている家庭ほど準備不足で直面しやすいという点を、ぜひ認識していただきたいと思います。」

親に「お金の話」どう切り出す? 家族のわだかまりを生まない3つのコツ

---親が認知症になる前に財産の全体像や預貯金の場所を確認しておくべきとよく聞きますが、具体的にどのタイミングで、どのような方法で切り出すのが望ましいでしょうか?

柴田充輝さん:

「『親にお金の話を切り出しにくい』というのは、多くのご家族に共通する悩みです。私がおすすめしているのは、特定のライフイベントを自然なきっかけにする方法です。

たとえば親が65歳や70歳を迎えた節目、あるいは親の友人や親戚に相続が発生したとき、さらには自分自身が保険や住宅ローンの見直しをするタイミングなどは、お金の話題を出しても不自然ではありません。

『知り合いの家で相続が大変だったらしいから、うちも少し整理しておかない?』といった切り出し方なら、相手も構えずに受け入れやすくなります。

具体的に確認すべき項目としては、預貯金の金融機関名と支店、不動産の所在、生命保険の契約内容、証券口座の有無、そしてローンや保証債務などの負債が挙げられます。

いきなり『全部教えて』と迫るのではなく、まずは『通帳や権利証がどこに保管してあるか』という物理的な場所の確認から始めるのがコツです。これなら防災や緊急時の備えという形でも切り出しやすく、親の抵抗感も軽減されます。親の不安を煽らず、プライバシーにも配慮して、残高を詮索するより『どこに何があるか』『どこへ連絡するか』を優先しましょう。

また、最近は『エンディングノート』の認知度も上がっており、書店で手に取って親にプレゼントするのも一つの手です。法的拘束力はありませんが、財産の一覧や本人の希望を書き留めておいてもらうだけでも、相続発生時の負担を軽減できます。」

認知症になる前に!家族の安心を守る「3つの準備」と「家族信託」という選択肢

---相続トラブルを未然に防ぐために、親が元気なうちに家族で最初に取り組むべき「具体的な行動」を教えていただけますでしょうか。

柴田充輝さん:

「親が元気なうちに家族でまず取り組んでいただきたいのは、『相続人の確定』『財産の棚卸し』『親の意思の共有』の三つです。

先ほどお話しした離婚歴の問題もありますが、親の戸籍謄本を出生まで遡って取得し、法定相続人が誰になるのかを正確に把握してください。これは相続発生後にも必ず必要になる手続きですので、事前にやっておいて損はありません。ちなみに、相続が発生する前段階における相続人を『推定相続人』と呼びます。

財産の棚卸しは、プラスの財産だけでなく、借入金や連帯保証の有無も含めた一覧表を作成しましょう。特に不動産については、登記簿の名義が祖父母のままになっているといった問題が見つかることも、実務上はよくあるものです。

親自身の意思を家族で共有することも欠かせません。『自宅は誰に残したいか』『事業を承継させたい相手はいるか』といった希望を、できれば遺言書という法的に有効な形で残してもらうのが理想です。

遺言書があるだけで、相続トラブルの大半は予防できると言っても過言ではありません。有効な遺言書があれば、相続人全員の反対がない限り、その内容通りに遺産を分けられるためです。公正証書遺言であれば、形式不備で無効になるリスクがほとんどなく、費用も数万円程度で作成可能です。

なお、親が認知症と診断され、判断能力が低下してしまうと相続対策ができません。遺言書の作成はもちろん、不動産の売却や生前贈与、保険の契約変更といった相続対策が法律上一切できなくなります(『デッドロック』といいます)。

この認知症リスクへの備えとして近年注目されているのが『家族信託』という仕組みです。親が元気なうちに、信頼できる子どもなどに財産の管理・処分の権限をあらかじめ託しておく制度で、万が一親が認知症になった後も、受託者である子どもが不動産の売却や資産の組み替えを行うことができます。

遺言書では対応できない『生前の財産管理』と『死後の資産承継』を一つの契約でカバーできる点が大きなメリットです。まずはこれらを『家族の安心のための準備』として、前向きな気持ちで取り組んでいただければと思います。」

家族の安心のための相続準備

相続は、決して特別な家庭だけの問題ではありません。むしろ「うちは大丈夫」と思いがちな、ごく普通の家庭にこそ、思わぬ落とし穴が潜んでいることが専門家の見解で明らかになりました。

大切な家族の絆を守り、円満な相続を実現するためには、親が元気なうちから「相続人の確定」「財産の棚卸し」「親の意思の共有」という3つの準備を進めることが不可欠です。そして、親とのコミュニケーションは、ライフイベントをきっかけに、まずは財産の「保管場所」を確認することから始めてみましょう。

万が一の認知症リスクに備える「家族信託」など、有効な対策も選択肢として視野に入れることで、家族全員が安心して暮らせる未来を築くことができます。これらの準備は、決して難しいことではありません。「家族の安心のための準備」として、今日から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。


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