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「高い保険料を支払い続けることに」社会労務士が警告。定年後の『健康保険』…見落としがちな「意外な落とし穴」とは?

  • 2026.2.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

長年の勤労を終え、いよいよ自由なセカンドライフが始まる期待に胸を膨らませる「定年退職」。その一方で、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に、現役時代には会社が手続きをしてくれていた健康保険について、「退職後はどうなるんだろう?」「保険料が急に高くなると聞くけど、なぜ?」といった疑問は尽きないものです。

実際、定年退職後に国民健康保険に加入して、初めて届いた保険料通知を見て、想像以上の負担に驚く方は少なくありません。しかし、その背景にはいくつかの制度上の特性があり、事前に知っておけば対策を立てることが可能です。

この記事では、あゆ実社労士事務所 加藤あゆみさんに見解を伺い、定年退職後の健康保険料が高くなる理由から、ありがちな失敗パターン、そして後悔しないための賢い選択術までを徹底解説します。

なぜ定年後の国保はこんなに高い?現役時代とのギャップの理由

---定年後の健康保険料が想定以上に高額になってしまう主な要因として、どのような制度上の仕組みや所得計算の特性が関係しているのでしょうか?

あゆ実社労士事務所さん:

「定年退職後に国民健康保険に加入して、初めて届いた保険料通知を見て驚く方は少なくありません。

現役時代の給料から天引きされていた健康保険料と比べて、想像以上の負担に感じられることがあります。この背景には、いくつかの制度上の特性が関係しています。

まず大きな要因は、保険料計算の基準となる『所得』が前年のものである点です。退職した年の翌年は、まだフルタイムで働いていた前年の収入をもとに保険料が算出されます。つまり、今は年金だけの生活になっているのに、現役時代の高い所得を基準とした保険料を求められる状態になります。収入と支出のタイミングがずれることで、家計への圧迫感は強まります。

また、国民健康保険は世帯単位で計算される仕組みです。配偶者の所得や、同居する家族の収入も合算されて保険料が決まるため、自分ひとりの問題では済まなくなります。現役時代の健康保険は個人ごとに保険料が決まっていたため、この仕組みの違いに戸惑う方もいます。

さらに、在職中は会社が保険料の半分を負担してくれていましたが、退職後の国民健康保険には事業主負担という概念がなく、全額が自己負担となります。負担構造そのものが変わることで、手取りの実感が大きく変わります。

こうした制度の違いを事前に理解しておくことが、退職後の生活設計において重要だと感じています。」

思い込みが命取り?定年後の健康保険選びに潜む落とし穴

---定年退職後に「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」のいずれかを選ぶ際、前年の所得や世帯構成によって保険料が大きく変わると思いますが、選択を誤って手取りが減るケースはどのような場合でしょうか?

あゆ実社労士事務所さん:

「定年退職後の健康保険の選択では、『任意継続のほうが安いだろう』という思い込みや、『扶養に入れば無料だから得だ』という単純な判断が、かえって負担を増やしてしまうことがあります。

実際に起きやすい失敗パターンを見てみると、制度の見落としがいかに影響するかがわかります。

たとえば、ある方は退職前の給与が高かったため、任意継続を選べば現役時代と同じ保険料で済むと考えていました。しかし任意継続には上限額があり、想定よりも保険料が高くなることを知らずに手続きを進めてしまいました。一方で国民健康保険の保険料を自治体に問い合わせておらず、実はそちらのほうが安かったという事実に後から気づくことになりました。任意継続は一度加入すると原則として2年間は脱退できないため、その間ずっと高い保険料を支払い続けることになります。

また、配偶者の扶養に入ろうとして手続きをしたものの、退職金や再就職の収入見込みが扶養認定基準を超えてしまい、結局扶養に入れなかったというケースもあります。扶養の要件は『今後の収入見込み』で判断されるため、過去の所得だけを見て『大丈夫だろう』と判断すると、後で修正が必要になります。」

後悔しないために!定年退職前に絶対やるべき健康保険の賢い選択術

---定年退職を控えた方が、退職前に必ず確認・準備すべき「健康保険の選択肢を比較検討するための具体的な手順」を教えていただけますでしょうか。

あゆ実社労士事務所さん:

「定年退職を控えた方が健康保険で後悔しないためには、退職日が決まった時点で早めに情報を集め、選択肢を比較しておくことが大切です。慌てて決めると、自分にとって最適な選択を逃してしまうことがあります。

まず退職の3か月ほど前には、会社の人事や総務に任意継続制度の内容を確認しておくとよいでしょう。任意継続の保険料がいくらになるのか、加入できる期間や手続きの期限を具体的に聞いておきます。なお、任意継続の保険料には標準報酬月額の上限に連動した上限額が設定されているため、現役時代に高い給与だった方でも、その上限を超えることはありません。次に、住んでいる自治体の国民健康保険窓口に連絡し、前年の所得をもとにした保険料の試算を依頼します。自治体によってはウェブサイトで簡易シミュレーションができる場合もあります。

配偶者の扶養に入る可能性がある場合は、配偶者の勤務先に扶養認定の要件を確認します。退職金の扱いや、再就職の予定がある場合の収入見込みについても、正確に伝えておく必要があります。扶養認定は健康保険組合によって基準が異なることがあるため、早めの確認が重要です。現役時代は被保険者本人が保険料を負担し、扶養家族には追加の保険料がかからない仕組みでしたが、国民健康保険は世帯単位で計算されるため、この違いも踏まえて選択肢を検討することが大切です。

こうした情報を集めたうえで、保険料だけでなく、医療機関での窓口負担や、今後のライフプランも含めて総合的に判断することが望ましいと思います。企業としても、退職者向けの説明会や個別相談の機会を設けることで、安心して次のステージに進む支援ができるのではないでしょうか。」

定年後の健康保険は「事前準備」で未来が変わる!

「定年退職後の健康保険料が予想以上に高くて驚いた」「最適な選択をしたつもりだったのに、後から後悔した」――こうした声が聞かれる背景には、制度上の特性や、見落としがちな落とし穴があることが、あゆ実社労士事務所さんの解説で明らかになりました。

特に、前年の所得で計算されること、世帯単位で保険料が決まること、そして事業主負担がなくなることなど、現役時代との制度の違いを事前に理解しておくことが何よりも重要です。

後悔しないためには、退職日が決まったらすぐに、会社の人事・総務への問い合わせ、自治体への国保料試算依頼、そして配偶者の勤務先への扶養認定要件確認といった具体的なアクションを起こすことが、あなたのセカンドライフを安心してスタートさせるための第一歩となります。これらの情報をもとに総合的に判断することで、あなたにとって最適な健康保険の選択が可能になるでしょう。


監修者:あゆ実社労士事務所
人材育成・キャリア支援を軸に約10年の実務経験を持つ、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント。
IT企業の人事として、新卒・若手育成、研修設計、評価・キャリア支援の仕組みづくりに携わる一方、個人では企業や個人に向けたキャリア相談・人事支援を行っている。
これまでに累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1制度設計や面談シートの設計、育成施策の言語化を支援。
近年は生成AIを活用した業務設計・人事業務の効率化にも注力し、「現場で使えること」を前提にしたAI活用の伴走支援を行っている。


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