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「お前は何様だ」「どこに連れて行く気だ!」タクシー走行中に80代男性が激怒…新人女性運転手が警察を呼ばなかったワケ

  • 2026.2.14
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

職業柄、様々な人との出会いがあります。

「新人女性運転手」として希望に満ち溢れていた当時の私にも、強烈なお客様との出会いがありました。

今回はそんな私が経験した“驚きの病院送りエピソード”を紹介します。

病院へ急ぐ車内で、豹変する高齢男性

「〇〇総合病院まではやく行ってくれ」

杖をつきながら高圧的な態度で乗車したそのお客様は、80代と思わしき男性。

お年寄りの病院送迎はよくある仕事です。具合が悪いため、機嫌もよくありません。

気分を損ねないように話題を選びながら、やり過ごしていました。これもよくあることです。

しばらく車を走らせ「そろそろ着きますんで」と声をかけたときに事態が急変しました。

「お前は何様だ」
「こんな道から、俺をどこに連れて行く気だ」

などと大声で怒鳴りだし、前席を蹴りながら杖で私の頭を叩いてきたのです。

ルートが気に入らなかったのでしょうか。走行中の車内での、突然の暴力でした。

思わず、恐怖に身が縮こまりました。

しかし仕事は仕事。そして目的地はすぐそこ。

車を止めて揉め続けられるよりも、一刻も早く降車してもらうことを優先しました。
密室で感情が高ぶった状態が続くことは、双方にとっての危険だと思えたからです。

訳も分からず謝罪を繰り返しながら車を走らせ続けました。

残りたった1キロメートル程の距離が、とてつもなく長く感じました。

到着直後、その場で倒れこむ男性

ひとしきり暴れて気が済んだのか、やがていびきをかき始めました。

到着を知らせるも、反応がありません。直接ドアを開けて声をかけます。

するといびきをかいたまま、ゴロン!と地面に転がり倒れこんでしまったのです。

これにはさすがに驚きました。

目の前で人間が倒れるのは、想像以上に恐怖を感じます。

 

近くにいた病院スタッフに声をかけ、男性はあっという間に運ばれていきました。

未清算でしたが、今はどうにもできないと諦め早々にその場を去りました。

予想外の上司からの指導

会社に戻ると、叩かれてできた青アザの心配よりも先に、未清算であることに大目玉を食らいました。

「そうならないように高齢客の連絡先はすぐに聞くもんだ」
「身を守るために会話を続ける意味もあるんだ」

こんなトラブルが日常的に発生しうる、そういう世界だと知ったきっかけでした。

後日に届いた謝罪と感謝

後日、その男性は家族と共に支払いに訪れました。

「あの時は助かった、おかげで大事には至らなかったよ」
「叩いてしまって本当に悪かった、あんたには感謝している」

そんな言葉と賠償を受け取り、報われました。このように自ら訪れて、謝罪までしてくれる人はほんの一握りだそうです

通報を選ばなかった、運転手としての思い

怒鳴られ杖で頭を叩かれた時点で、警察に通報するという手段もありました。

しかし、病院に行きたい事情がある人を通報するなんてその時の私にはできませんでした。

誰しも体調が悪いときは、いつも通りにふるまえないものです。
タクシーはそんな人のためのサービスでもあるのですから。

だからといって横暴していい理由にはなりません。

もしあなたが体調不良でタクシーを利用することがあれば、自分の状態を少しでも伝えてくれると助かります。
お客さんも、慣れた運転手も、密室で二人きりになることは当然緊張します。

だからこそ何でも話しかけてみてください。

意外と寄り添ってくれるものですよ。

「人」を運ぶ仕事を、あえて選んでいるから我々はタクシー運転手なんです。


ライター:成田愛

当時では最年少の21歳で二種免許を取得し、タクシー運転手13年目。 今も現場を走り回りながら記者として活動しています。 当事者ならではの体験談を得意とし、読みやすさと伝わりやすさを意識して発信することを心がけています