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「女性には人生のあらゆる段階、局面で、自分のことを輝ける、価値ある存在だと感じてほしい。何があろうとも」──愛を響かせるアリアナ・グランデの優しい素顔

  • 2026.1.26

アリアナ・グランデ」の文字がZoomの待機室に表れたとき、カメラはオフで参加すると聞いていた私は緑色の枠に囲まれた黒い画面が表示されるものと思い込んでいた。ところが、画面に現れたのは本人の顔。ノーメイクで目をぱっちりと見開き、背後の窓にはニューヨークの街並みが映っている。見慣れた華やかなセレブというより、これからインタビューに臨む普通の女性。その予想外の姿に驚きを覚えつつも、地に足の着いた感覚に思わずほっとした。

グランデは32歳になったが、私たちの多くは彼女が成長し、進化する姿を自らの歩みに重ねつつリアルタイムで見守ってきた。はじめはドラマ『ビクトリアス』で真っ赤な髪のティーンエイジャーを演じ、次に高い位置でまとめたポニーテールがトレードマークのポップスターとして、私たちの人生を歌い上げた。そして最近では、まさにプリンセスと呼ぶにふさわしくピンクのドレスに身を包み、ブロンドヘアを輝かせながら優しく愛らしい佇まいをスクリーンで見せている。

カメラをオンにすると、私の驚いた顔に気づいたグランデが気遣うように声をかけた。「カメラをオフにしたほうがよかったら、それでもいいですよ。顔を見ながら話せたらいいかな、と思っただけだから」

グランデの周りには常にやわらかな気遣いのオーラが漂い、そっと抱きしめられているような気分になる。皮肉屋は、グリンダ役を引きずっているだけだと否定するかもしれない。だが、人生の大きな転機を乗り越え、共感に根ざし、自分を形作るものの中心に芸術をしっかりと据えた女性として、そこにはもっと深い人間味が感じられる。会話が始まってまだ10分も経たないうちに、グランデは私に語りかけながら眉を寄せ、ピンクのパーカの袖で目もとを拭った。「こんな瞬間が訪れるとは夢にも思いませんでした」。ふたつの目に、また涙が浮かぶ。「こんな瞬間を体験するなんて、予想もしていなかったんです」

私たちは過去15年間をノンストップで駆け抜けた、彼女の人生を振り返っていた。この年月が、彼女を21世紀を代表するスターのひとりへと押し上げた。グランデが「こんな瞬間」と呼ぶのは、ジョン・M・チュウ監督の『ウィキッド』シリーズでグリンダ役を演じた過去3年間のことだ。長年犠牲を払い、たゆまぬ努力を重ね、世間の視線という重圧を背負い続けたからこそ掴んだ役だ。

今、グランデの目に浮かぶ涙は重圧のせいではなく、感謝の気持ちからだ。特に、この長い道のりをともに歩んできた母親をはじめとする一家の女性たちへの深い感謝が、涙となってあふれた。

彼女のノンナ、つまり祖母はこの夏に99歳で他界した。世間の声がやかましいと思ったら、いつでも「コンニャロウ!」と言ってやれ、とアドバイスしてくれたのをグランデは思い出す。「いつもノンナから強さをもらっています」。彼女を見送った瞬間を静かに振り返りながらそう語るグランデは、祖母が使っていたリップクリームをふたつ持っており、ひとつはバッグに入れて持ち歩き、もうひとつは枕元に置いているという。「いつでもちょっとだけ、そばに感じられるから」

そして母親のジョアン・グランデは、スターダムの混沌の中で揺るぎない支えとなった。「クリエイティブな面で全力を尽くして最高の作品を作り上げても、有名人としての自分のほうが注目されてしまう時期が長かった」と彼女は言う。そして今度は涙がこぼれ落ちるのを止めずに続けた。「そんなとき、母はいつも私のそばにいて、ぐちゃぐちゃになった頭の中を片付け、アーティストとして、そしてひとりの人間としての価値を思い出させてくれました。世間の声に振り回されそうになるたびに」

シャツ ¥370,000 スカート ¥410,000(ともに参考価格) ネックバンド ¥130,000(予定価格)/すべてDIOR(クリスチャン ディオール) ピアス 参考商品/SWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン) グローブ/PAULA ROWAN(www.paularowan.com)
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今、グランデには新たな感謝の気持ちが芽生えている。これまでの栄光にときに影を落としてきた噂話やゴシップから解放された感覚とともに。「『ウィキッド』に出演してからアルバム『エターナル・サンシャイン』を出すまでの間に、自分のキャリアで初めて、作品やアーティストとしての価値が心から認められた気がするんです。本当に」 今、グランデはこの瞬間に身を委ね、自分の仕事を認め、評価した世間を受け止めている。このインタビューは名作を若い世代向けにアレンジした大ヒット作『ウィキッド 永遠の約束』のグリンダ役でゴールデングローブ賞候補に選ばれた直後に行われた。

同賞へのノミネートは2度目だが、この場所にひとりで辿り着いたわけではないとグランデは自覚している。彼女の思いは何度もノンナとジョアン、自分を決して見失わないように踏みとどめてくれたふたりの女性の元へ戻っていく。「自分がオスカー候補の俳優になるとは、思ってもいませんでした」と彼女は穏やかな笑みを浮かべながら語る。「この業界は大好きだけど、自分がそんなふうに評価されるとは考えていなかった。私は日々、一分一秒を芸術に捧げています。この想いが受け止められて、しかも母と分かち合うことができて、胸がいっぱいです」

空に浮かぶシャボン玉に乗るグリンダになるよりもはるか前、そしてグランデがポップス界のスーパースターとなり、数々の賞を総なめにするよりも前のこと。クルーズ船の上でマイクを握る、恐れを知らない4歳の少女がいた。グランデは以前にも、この話を明かしている。セリーヌ・ディオンの「My Heart Will Go On」をクルーズ船上で歌ったところ、偶然居合わせた音楽界のレジェンド、グロリア・エステファンがその才能を見抜き「これからも歌い続けなさい」と声をかけたのだ。今振り返れば、この祝福を授かるかのような逸話も、スポットライトを浴びることを運命づけられたキャリアの序章のように思える。

この「歌い続ける」という純粋な本能こそが、グランデをブロードウェイの夢へと導いた。10代のころにミュージカル『13』でシャーロット役を演じ、その後『ビクトリアス』に出演してブレイクを果たした彼女の才能は、すぐに開花し、脇役の域を超えた。スクリーンの外では、YouTubeでのカバー動画を通じてミュージシャンとしてのキャリアを築きはじめ、その先に待つ未来を予感させた。その後15年にわたる右肩上がりの活躍は言うまでもない。時代を象徴するポップミュージックで世界を席巻し、唯一無二の歌声で数え切れないツアーを成功させ、そして喪失と悲しみを人々の面前で乗り越えながら偉業を築いた。グリンダ役を射止めたのは単なる魔法ではない。夢を追い続け、決して諦めなかった彼女の長年の情熱と研鑽の賜物だ。

グランデが『ウィキッド』で演じたグリンダが、後世に語り継がれることは間違いない。『オズの魔法使い』を再解釈し、シンシア・エリヴォ演じるエルファバの語られなかった生い立ちを描いた本作において、ピンクの衣装に身を包み、善き魔女になり切ったグランデの演技は作品を支える柱となり、アカデミー助演女優賞にノミネートされた。

1作目の『ウィキッド ふたりの魔女』がエルファバの成長を描いたのに対し、2作目の『ウィキッド 永遠の約束』はグリンダの人柄を形作ったものと、オズの指導者として下した決断を観客に提示した。チュウ監督によるこの作品は、オズの国の人々、マダム・モリブル(ミシェル・ヨー)、そして魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)からの承認を支えとする女王の歩みを丁寧に追っている。同時に、与えられた状況の中で最善を尽くそうとする、非常に人間的で繊細な指導者の姿も浮かび上がらせた。

孤高のクイーン 映画『ウィキッド』のグリンダ役で、俳優としての地位を確固たるものにしたグランデ。歌姫としての実力は言わずもがな、唯一無二の存在感と圧倒的な映画の役柄とのマッチングで、彼女のあふれんばかりのアーティスティックな一面が改めて世に知らしめられた。華奢で繊細なキュートなバニーを思わせるヘッドピースには、その証しともいえる輝くスワロフスキーのティアラを添えて。構築的なバレンシアガのドレスが、子役からデビューした少女が世界的なディーバへと成長する姿を映し出すかのように、彼女の芯の強さを描く。ドレス ¥473,000/BALENCIAGA(バレンシアガ クライアントサービス) ヘッドピース/RACHEL TREVORMORGAN(racheltrevormorgan.com) ティアラ 参考商品/SWAROVSKI JEWELRY ピアス 参考商品/SWAROVSKI CREATED DIAMONDS COLLECTION(ともにスワロフスキー・ジャパン)
映画『ウィキッド』のグリンダ役で、俳優としての地位を確固たるものにしたグランデ。歌姫としての実力は言わずもがな、唯一無二の存在感と圧倒的な映画の役柄とのマッチングで、彼女のあふれんばかりのアーティスティックな一面が改めて世に知らしめられた。華奢で繊細なキュートなバニーを思わせるヘッドピースには、その証しともいえる輝くスワロフスキーのティアラを添えて。構築的なバレンシアガのドレスが、子役からデビューした少女が世界的なディーバへと成長する姿を映し出すかのように、彼女の芯の強さを描く。ドレス ¥473,000/BALENCIAGA(バレンシアガ クライアントサービス) ヘッドピース/RACHEL TREVORMORGAN(racheltrevormorgan.com) ティアラ 参考商品/SWAROVSKI JEWELRY ピアス 参考商品/SWAROVSKI CREATED DIAMONDS COLLECTION(ともにスワロフスキー・ジャパン)

一方、エルファバはオズを滅ぼそうとする者だとレッテルを貼られる。グランデ演じる善き魔女グリンダはそれが誤りだと知りながらも、承認欲求に駆られ、魔法使いとマダム・モリブルが流す嘘を助長してしまう。しかしその過程で、フィエロ王子(ジョナサン・ベイリー)との形ばかりの婚約は破綻し、その現実と向き合うことになる。また、最終的には、もはや逃げ場はないと悟り、一度は袂を分かったエルファバのもとへ向かうのだ。「グリンダは多くのことを嘆いています。エルファバとの友情だけじゃありません。フィエロとの関係も嘆き悲しんでいるんです。彼こそが運命の人だと思いながらも、どこかで空疎だと感じていたから」と彼女は語る。「そして彼が去ったとき、グリンダは理解しました。自分も王子も人生の大半を、人から好かれるため、人気を得るため、オズの人々や魔法使いが求めるものを与えるために費やし、真実を捨てて生きてきたせいだと。(ふたりの関係は)あまりにも大きな自己放棄の上に築かれていたのです」

『ウィキッド 永遠の約束』のグリンダは、前作では観客が知り得なかった姿を見せる。物語の終盤には、矛盾を抱えた女王が自分を受け入れられるようになり、グランデのドラマティックな演技が光る。『ウィキッド』の1作目が彼女の演技力を証明する作品だとすれば、この2作目でスターとしての紛れもない地位を確立したと言えるだろう。「 人は自分がエルファバよりグリンダに近い存在だと認めるのが怖いのだと思う」とグランデは自身の役柄について語る。「彼女はどうやったら勇気を出せるのか、すぐに理解することができません。でもその成長の軌跡がすばらしいのは『今がそのときだ、遅すぎることは決してない』という見本を彼女が示しているからだと思うんです」

グランデはグリンダを演じるにあたり、役作りにステラ・アドラーのメソッドを取り入れた。つまり、演技をしながら「可能な限りそのキャラクターになり切る」ために、想像力を働かせて背景となる状況を作り出すという手法だ。この技法を使うことで、自身の体験を重ねずともグリンダを理解することができた。映画出演を承諾したときからこの役柄に対して抱いた「責任をきちんと果たす」ために必要なプロセスだったと彼女は語る。「私は長い時間をかけて行間を読み取り、グリンダが自分に自信を持てなくなった原因となったかもしれないちょっとした出来事を想像してメモに書き留めました」とグランデは語る。「エルファバとの友情であれ、フィエロとの関係であれ、彼女が隠してきた些細な出来事があったからこそ、グリンダは仕事ができるけど虚飾にとらわれた人間になったと考えたんです」

おとぎ話のエピローグ まるで映画の中からそっと抜け出してきてしまったようなワンシーンは、ジバンシィのロマンティックなドレスが主役に。摘んだばかりの瑞々しい花々をあしらったかのようなジャニファー ベアのヘッドピースに、煌めくスワロフスキーのブレスレットをマッチ。おとぎ話の続きを連想させるドラマティックなカットは、彼女の俳優としての未来へのヴィジョンを見据えているかのよう。ドレス 参考商品/GIVENCHY BY SARAH BURTON(ジバンシィ ジャパン) ヘッドピース/JENNIFERBEHR(www.jenniferbehr.com) ブレスレット(左) ¥59,400 (右) ¥79,200(ともに参考価格)/ともにSWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)
まるで映画の中からそっと抜け出してきてしまったようなワンシーンは、ジバンシィのロマンティックなドレスが主役に。摘んだばかりの瑞々しい花々をあしらったかのようなジャニファー ベアのヘッドピースに、煌めくスワロフスキーのブレスレットをマッチ。おとぎ話の続きを連想させるドラマティックなカットは、彼女の俳優としての未来へのヴィジョンを見据えているかのよう。ドレス 参考商品/GIVENCHY BY SARAH BURTON(ジバンシィ ジャパン) ヘッドピース/JENNIFERBEHR(www.jenniferbehr.com) ブレスレット(左) ¥59,400 (右) ¥79,200(ともに参考価格)/ともにSWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)

こうしたキャラクター作りは、2019年に『VOGUE』誌で、最高のヒット作となったアルバム『thank u, next』について語ったときにこぼれた言葉を思い出させる。この作品は失恋から立ち直った力強い女性の視点で恋愛を歌っているが、「自分が演じるおかしなキャラクター、つまり誇張された自分自身の姿が好き」だと彼女は語った。「それが私を守ってくれるんです」

おそらくグリンダの物語を彼女自身のものから切り離すことも、一種の盾となったのだろう。完全無欠なポップスターという虚像を背負わされる重圧と、人前にさらけ出されたプライベートにおける恋愛や喪失といった現実を、グリンダの世界からは切り離して抱えるための手段として。「役を演じているときと、心の鎧をすっかり脱いでいるときがあります」と彼女は言う。「ときには自分で人格を作り上げたり、誰かが書いた役柄を演じたりする。そしてただ心を打ち明け、真実をさらけ出すことも。でも世間の人たちはその違いを見分けられない。そこが面白いんです」

両作品を通じてひしひしと伝わってくるのは、グランデが役柄に捧げる情熱、そして共演者であるシンシア・エリヴォとの絆だ。スクリーンで感じるグリンダとエルファバの相性の良さはもちろん、インタビューやレッドカーペットでもふたりの結びつきは圧巻だ。涙ながらに慰め合う姿も、「適度な距離を保つ」姿勢も、そしてレッドカーペットでファンがグランデに突撃した際、エリヴォが即座に駆け寄った瞬間も。ふたりのつながりは磁石のように強力であり、見せかけではない本物の絆を感じさせる。「私たちはお互いを思いやりながら、一生懸命努力しました。私の人生の中で、一番やりがいのある仕事だったと言っても過言ではありません」とグランデは語る。「今また同じことをやれと言われたら、喜んでやるでしょう」

グランデとエリヴォが映画の主人公に起用されたとき、ふたりは正式に会う前に一緒にオーディションを受けたこともなければ、相性を見るテストもなかった。それでも監督は直感を信じてふたりを組み合わせた。エリヴォはグランデと「姉妹愛的な絆を築く」心づもりができていたという。そして4年後、ふたりは本物の絆を結んだ。「それが私たちの決めたことだったし、そうあるべきだと分かっていました。そして実際にすばらしい関係を築けたと思う」とグランデは語る。「私たちは役の作り方も人柄もまったく違います。それでも撮影をする中で時間をかけて互いを理解し、支え合った……これはもう、そういう運命だったんだと思います」

等身大のディーバ 歌手として俳優として常に努力を惜しまず第一線を駆け抜けてきたグランデ。紆余曲折を経て、やわらかで肩肘を張らない落ち着いた雰囲気を纏いながらも、揺るがない凛とした強さを併せ持ち、女神のようにそっと優しく包み込むオーラを放つ。スティーブン・ジョーンズのハットとジバンシィのコーラルカラーのブラトップが彼女の内面の“華”を引き出し、首もとのスワロフスキーのネックレスの輝きが一層、可憐に“花”を咲かせる。ブラトップ 参考商品/GIVENCHY BY SARAH BURTON(ジバンシィ ジャパン) ハット/STEPHEN JONES(stephenjonesmillinery.com) ネックレス ¥58,300(参考価格)/SWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)
歌手として俳優として常に努力を惜しまず第一線を駆け抜けてきたグランデ。紆余曲折を経て、やわらかで肩肘を張らない落ち着いた雰囲気を纏いながらも、揺るがない凛とした強さを併せ持ち、女神のようにそっと優しく包み込むオーラを放つ。スティーブン・ジョーンズのハットとジバンシィのコーラルカラーのブラトップが彼女の内面の“華”を引き出し、首もとのスワロフスキーのネックレスの輝きが一層、可憐に“花”を咲かせる。ブラトップ 参考商品/GIVENCHY BY SARAH BURTON(ジバンシィ ジャパン) ハット/STEPHEN JONES(stephenjonesmillinery.com) ネックレス ¥58,300(参考価格)/SWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)

グリンダの旅路の裏には、ひそかに、それでいて明確に政治的比喩が織り込まれている。魔法使いとマダム・モリブルはオズの動物たちから話す力を奪い、後に城の地下室に閉じ込めた。これは移民が世界の一部、特に米国で受ける扱いを冷酷に映し出している。米国では数十万人の強制送還によって家族が離ればなれとなり、非人道的な状況を生み出している。本作は細部に至るまで意図が込められており、魔法の動物たちに対する扱いは現実世界と共鳴している。「(監督は)オズの世界と、今、私たちが置かれている現実を見事に結びつけました」とグランデは語る。「いつの時代も、オズは政治的な意味合いを持っていました。……時代を超えた物語でありながら、今まさにタイムリーな作品でもあるのです」

別のシーンでは、(グランデの恋人であるイーサン・スレーターが演じる)ボックがエメラルドシティへ赴き、グリンダに愛を告げようとするが、マンチキンランドを治めるネッサローズ(マリッサ・ボーディ)が夜間外出禁止令を発令し、ボックが旅立つ自由を奪う。「ネッサは独裁者みたいに変わってしまう……ボックを捕らえておくために。今の世界と似ていて、ちょっと怖いくらい」とグランデは語る。

この映画には、エリヴォとグランデのアドリブがはまった特に印象深いシーンがある。グリンダとエルファバが最後の別れを交わした後、ドアを挟んで向かい合う姿が映し出される。エルファバが永遠の別れを決意した瞬間だ。チュウ監督は、このシーンを残すために方々と調整しなければならなかったと語っている。理由のひとつは、オズの世界では「愛してる」と言ってはいけないというルールに反してしまったからだ。しかしこの特別な瞬間、複雑な状況に直面し、葛藤するふたりの関係は、真に迫る心の痛みを呼び起こす。ふたりの女性が、大義のために互いの手を放すことの意味を受け入れる瞬間だからだ。

「ふたりは互いの前で泣き崩れるのを我慢しています。どちらも互いの選択を後悔させたくないと相手を気遣っている。グリンダ役の私は『For Good』の最初の歌詞を歌いながら微笑んでいます。崩れ落ちる姿を見られたくないから」とグランデは語る。「そして扉が閉まり、ひとりきりになった瞬間、彼女たちはすべてを吐き出し、扉越しにお互いの愛と悲しみを感じるんです」

痛ましい犠牲に心打たれる場面であり、グリンダというキャラクターにとっては転換点にもなるところだ。このシーンがグリンダにとって極めて重要であるように、グランデ自身もひとつの終わりと向き合うときが来ている。2011年、いつかこの役を演じたいと彼女は当時のツイッター(現X)で公言した(「いつかグリンダをやりたい! #夢の役」)。そんな思い入れのあるグリンダとともにある日々、記者会見や授賞式、レッドカーペットに彩られた「グランデが演じるグリンダ」の時代が、終わりを迎えつつある。スクリーンで見せた姉妹愛を人々とともに称えた一時代が終幕に向かい、グランデ自身も気持ちの整理をつけるときが来ている。

「あっという間に終わってしまうことは分かっていました。今、こうしてインタビューを受けていますが、私はこの旅路の一瞬一瞬を、かみしめています。私たちが成し遂げたことを心から誇りに思います。この作品は、これからも生き続ける。だから、大丈夫」

解き放つオーラを背に 大女優の風格を漂わせるスワロフスキーのティアラに、鮮やかなレッドリボンが目を惹くラルフ ローレンのシャツを合わせたグランデ。後世に語り継がれるであろう映画『ウィキッド』のグリンダ役を見事に演じ切った彼女。幼き頃、同ミュージカルをブロードウェイで鑑賞した夢見る少女は、自らの手でその役を掴み、夢を現実のものへと成した。シャツ スカーフ ともに参考商品/RALPH LAUREN COLLECTION(ラルフ ローレン) ティアラ 参考商品/SWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)
大女優の風格を漂わせるスワロフスキーのティアラに、鮮やかなレッドリボンが目を惹くラルフ ローレンのシャツを合わせたグランデ。後世に語り継がれるであろう映画『ウィキッド』のグリンダ役を見事に演じ切った彼女。幼き頃、同ミュージカルをブロードウェイで鑑賞した夢見る少女は、自らの手でその役を掴み、夢を現実のものへと成した。シャツ スカーフ ともに参考商品/RALPH LAUREN COLLECTION(ラルフ ローレン) ティアラ 参考商品/SWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)

「そろそろ少し休もうと思っていますか?」私は心からの想いでそう尋ねた。そう問いかけるのは自然なことだろう。17年のキャリアの中で、グランデはひたすら走り続けてきた。15歳のとき、ドラマ『ビクトリアス』で愛らしくてちょっと変わった赤毛のキャット・バレンタイン役でデビューし、瞬く間にブレイクした。その後の彼女の歩みは苦しくも、称賛に価するものだ。デビュー作『Yours Truly』に続くアルバム『My Everything』からは「Problem」や「Love Me Harder」といった2010年代を代表するヒット曲が生まれ、誰もが知るスターとなった。「デンジャラス・ウーマン・ツアー」を含め、100カ所以上を回る大規模なワールドツアーを何度もこなし、初めて本格的な休止期間に入ったのは2017年。マンチェスター公演でのテロ事件で22人が犠牲になったことが契機となった。さらに翌年には元交際相手のラッパー、マック・ミラーが薬物の過剰摂取で亡くなった。

こうしたあまりに痛切な喪失を抱え、一時的にスポットライトから遠ざかったものの、その後は見事な復活を遂げ、『Sweetener』と『thank u, next』で驚異的な成功を収め、新たな一時代を築いた。(『Sweetener』は彼女にとって初の、そして長く待ち望まれたグラミー賞受賞作だ。) コロナウイルスでさえ、彼女の勢いを止めることはできなかった。2020年10月にはアルバム『Positions』をリリース。さらにほぼ4年間を『ウィキッド』の撮影とプロモーション、『ドント・ルック・アップ』への出演、その他さまざまな俳優活動に費やした。つまり、アリアナ・グランデは一度たりとも第一線から離れたことがないのだ。

というわけで、そろそろ休んでもいいのではないだろうか? グランデは「たぶん休むことは自分のためになると思う」と認めつつ、「休むことに慣れていないんです。『ウィキッド』の撮影で音楽から距離を置いたことで、すごく成長できたのは間違いなくて……まあ、確かにここ数年は本当にノンストップでした。数年というか、15年ですね」 彼女が具体的にいつブレーキを踏むかは、まだ定かではない。「次の15年はバランスが目標」と自分に言い聞かせるように言う。「これまでの15年とは違ったものになると思います。もっとバランスが取れるはず」グランデはベン・スティラーと共演する『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズの最新作『Focker-In-Law(原題)』に主演し、今秋に撮影を終えた。また近々放送予定で豪華キャストが勢ぞろいした『アメリカン・ホラー・ストーリー』新シーズンへの参加も決まっているほか、近いうちに舞台の世界に復帰する可能性もほのめかしている。では、新しい音楽作品は? 「忙し過ぎてクローンがいないと無理!」

ペースを落とすことを想像するにしても、そこには明確な意図があり、自分が生み出す芸術が頭から離れることはない。「自分が生きて、さらにその人生経験が芸術の糧になるなんて、すごいことじゃない? って思うんです」と彼女は笑いながら言う。「結局、とにかくやってみたら? って結論に落ち着くんです」 『ウィキッド』の撮影が中断したときも、空いた時間を音楽制作に充てた。2023年、ハリウッドのストライキにより、チュウ監督の『ウィキッド』も含め映画業界が完全に機能停止した時期である。そのときにグランデが制作したのがアルバム『エターナル・サンシャイン』だった。「あのときはグリンダになることができなかったので、自分のエネルギーと感情をぶつけられる場所が欲しかった」とグランデは語る。「大きな隔たりがありました。グリンダを演じているときは、私もグリンダだったんです」

グランデは2025年3月、この傑作アルバムのデラックス版『Eternal Sunshine Deluxe: Brighter Days Ahead』を制作、リリースした。この作品は「we can’t be friends」のMVで扱った記憶消去手術という題材を再び取り上げている。このアルバムと合わせて発表されたストーリー仕立てのショートフィルムは、MVのストーリーを拡張する形で彼女の現在の心情を投影し、心の重圧や外界から押し付けられる期待からの解放をディストピア的な比喩として描いている。また、デラックスアルバムはダルトン・ゴメスとの2年間の結婚生活に終止符を打ってからの軌跡を辿るボーナストラックが追加され、心を揺さぶる深みがさらに増している。 「ポップな曲だけど、すごく感情的で自然に湧いてくるものにしたかったんです。当時自分が経験していた、大きく揺れ動く心を音楽で表現するのはとても楽しかった」とグランデは言う。

あの時期、彼女の人生はまさに激動で、世間の容赦ない視線にさらされていた。離婚後、アリアナ・グランデは夫婦関係の終わりだけでなく、『ウィキッド』の共演者であるスレーターとの恋愛騒動にも巻き込まれたのだ。「自分の仕事よりも、たとえば見た目の欠点とか、自分にまとわりつくゴシップ文化とか、そういう悪いものの方が目立つと感じたとき、自分の魂とか蟹座生まれの性格とかのせいで、それに立ち向かえるほど強くなれないと思ったとき、母はいつもそばにいて、そんなのはバカげてる、歌い続けなさいって言ってくれました」と彼女は言う。

『エターナル・サンシャイン』は、30代のグランデならではの成熟した感性を情緒豊かに表現した作品であり、ファンの共感を呼んだ。ボーナストラックを含め、楽曲の大半はグランデが単独で作詞作曲を手がけるか、長年ともに仕事をしてきた共同制作者たちとタッグを組んでいる。彼女はプロデューサーとして制作過程にも積極的に関わり、音を多層的に重ねた作品を構築。この手腕が評価され、グラミー賞にノミネートされることとなった。

「we can’t be friends」は静寂から始まる。まるでアリアナ・グランデが過剰な刺激と騒音から逃れるために外へ飛び出たかのようだ。「自分の一番繊細な部分を出した曲のひとつでした」と彼女は語る。「こもったベース音やコードが聞こえるのが好き。会場の外にいて、中に戻る気持ちの準備ができていないときの気分に似ているから」

アルバムのリードシングル「yes, and?」には、フルートの音が密かに入っている。このディテールに気づいたリスナーはほとんどいない。「誰も気づかないの」とグランデは打ち明ける。「でもあれは幸せを呼ぶ秘密のフルート。マックス・マーティンと一緒に『フルートの音をもっと大きくしなきゃ!』って言いながら作りました」

「ordinary things」の終わりには、祖母の声がフィーチャーされており、彼女から受けた教えを静かに、胸を打つ形で思い出させる。そして「bye」は自分の母親の視点で書かれた曲で、両親の結婚生活がうまくいかなくなった後、父から離れる決断をした母の自立心と強さを称えている。 本質的に、『エターナル・サンシャイン』を軸とする一時代は純粋に音楽を愛するグランデの姿勢を捉えている。

同作品は2024年に第一弾が発表されたが、ツアー開始は2026年夏の予定で、しかもそのツアーはポップスターとして知られるグランデがこれまで行ってきたものよりずっと短い期間になるだろう。 最近のエイミー・ポーラーとのインタビューで、グランデは今後「ものすごく長い期間」ツアーから離れる予定であることを明かし、大きな話題を呼んだ。今度の短期間に凝縮された「エターナル・サンシャイン・ツアー」は、世界を駆け巡ったこれまでのツアー生活をある意味「有終の美」で締めくくるものだと語ったのだ(私たちがZoomの通話を終えるとき、彼女はこう付け加えた。「ロサンゼルスでの公演で、一度でも、でもできれば全部の公演であなたにハグできることを願っています。もしかしたら、もう二度とないかもしれないから」)。

未来への啓示 ラッヘル・ライスの《花のある静物》の絵画と呼応する、グッチのフローラ プリントのドレスを堂々と着こなすグランデ。ルブタンのバレエトゥのプラットフォームシューズにキラリと光るスワロフスキーのイヤリングを添えて。しなやかなミューズへと成長した彼女は、これからも常に進化し続け、人々に夢や希望を与え続けてくれるだろう。ドレス 参考商品/GUCCI(グッチ クライアントサービス) シューズ 参考商品/CHRISTIAN LOUBOUTIN(クリスチャン ルブタン ジャパン) イヤリング 参考商品 リング ¥15,400 ブレスレット ¥59,400/すべてSWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)
ラッヘル・ライスの《花のある静物》の絵画と呼応する、グッチのフローラ プリントのドレスを堂々と着こなすグランデ。ルブタンのバレエトゥのプラットフォームシューズにキラリと光るスワロフスキーのイヤリングを添えて。しなやかなミューズへと成長した彼女は、これからも常に進化し続け、人々に夢や希望を与え続けてくれるだろう。ドレス 参考商品/GUCCI(グッチ クライアントサービス) シューズ 参考商品/CHRISTIAN LOUBOUTIN(クリスチャン ルブタン ジャパン) イヤリング 参考商品 リング ¥15,400 ブレスレット ¥59,400/すべてSWAROVSKI JEWELRY(スワロフスキー・ジャパン)

おそらくそれは、馬車馬のように働くポップスターという立場から距離を置くためでもあるのだろう。なぜなら彼女は、役者としての側面とのつながりがより強まっていると感じているからだ。「この15年の大半を、大規模なツアーに費やしてきました。今はもっとクリエイティブなエネルギーを、いろいろなことに注げると思う……いつでも、自分を偽らない立場で創作活動に取り組みたいと思っています。アーティストとして、できるだけ本物だと感じるものとのつながりを保つことが、本当に大切なんです」

今年、グランデは映画に熱中している。アカデミー賞の投票権を得た今、奮い立つような演技を探し求めているのだ。「すごく真剣です」と彼女は笑いながら言う。「キルスティン・ダンストのミームみたい。『ええ、全部観ています。アカデミー会員ですから』って感じ。まさにあのミームそのものです! それぞれの演技と、そこに挑む女性たちを心から尊敬しています」

最近は『ブゴニア』を観て、エマ・ストーンにすっかり魅了されたという。私に「もう観ました?」と尋ね「冗談じゃなく、あの作品は最高。私みたいなタイプにすごく刺さると思う」と熱弁をふるう。『ワン・バトル・アフター・アナザー』のテヤナ・テイラーにも夢中で「彼女に会って握手するのが待ちきれない」と興奮気味に語った。もちろん、望んでいるのはほかのゴールデングローブ賞候補者たちと直接会って喜びを分かち合うことだ。「一番の楽しみは、尊敬するほかのアーティストたちに会って、その人たちの作品が自分の人生にどんな影響を与えたかを伝えられること」だとグランデは言う。「みんなを抱きしめて、すばらしい演技を称えるのが待ちきれません」

将来、どんな道を歩もうとも、グランデが常に内省し、これまで自分に寄り添ってきた祖母や母を心に留めながら決断を下すことは間違いない。希望を胸に、しなやかな強さを武器にして前へと進んでいく。そして凛々しく、自分の思うままに進化していくのだ。「女性には人生のあらゆる段階、あらゆる局面で、自分のことを輝ける、価値ある存在だと感じてほしい。何があろうとも」とグランデは言う。「進化し、成長し、学び、楽しむこと。その道のりの一歩一歩で、自信を持つこと。それが当たり前であるべきなんです」

そしてまるでグリンダのようなやわらかな微笑みを浮かべながら、こう言い添えた。「私はこの場から皆さんのことを想い、その輝きに拍手を送ります」

Talent: Ariana Grande Styling: Law Roach Hair: Alyx Liu Makeup: Michael Anthony Set Design: Gerard Santos Producer: Cat Lewis at Mini Title Tailor: Tae Yoshida at Carol Ai Studio Interview & Text: Tomás Mier Styling Assistants: Yvonne Shelly and Brittany Bryant

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